魔界水滸伝
以下はWikipediaより引用
要約
『魔界水滸伝』(まかいすいこでん)は、栗本薫による伝奇SF小説。
H・P・ラヴクラフトの創造したクトゥルー神話のモチーフを取り入れ、地球を侵略しようとするクトゥルーの神々と、それを阻止しようとする神州・日本を中心とする地球古来の神々との闘い、そして神々の圧倒的な力の前に滅びて行こうとする人類の危難を描いた大河小説。題名に見える『水滸伝』にあやかり、百八の星を背負う神々、人々が集結し、クトゥルーの邪神の侵略に対抗していくさまが描かれている。
連載の経緯
角川春樹の助言を受けて書き始められた。『野性時代』1981年9月号・10月号に連載され、同年11月にカドカワノベルズ(角川書店)より刊行された第1巻を皮切りとして順調に巻数を重ね、1991年6月刊行の第20巻をもって完結した。前半11巻が第一部「魔界誕生編」、後半9巻が第二部「地球聖戦編」とされる。また、外伝として『白銀の神話』全4巻が刊行されている。これらはのちに角川文庫からも刊行された。正伝はハルキ文庫からも刊行されている。
1995年3月からは、「銀河聖戦編」として続編『新・魔界水滸伝』の刊行が始まり、4巻まで角川文庫から刊行されたが、栗本の逝去により未完となっている。
発表形態としては、『野性時代』に連載もしくは一挙掲載されたのちに、カドカワノベルズから刊行されていた。ただし、外伝『白銀の神話』最終巻のみは、カドカワノベルズから書下ろしとして刊行された。カドカワノベルズ版および角川文庫版の表紙、口絵、挿絵は 永井豪、ハルキ文庫版の挿画はもりおかしんいちが手がけている。
あらすじ
私大生・伊吹涼、女子大生・白鳥夏姫、華族の末裔・藤原華子は奇妙な悪夢に悩まされていた。 198X年の夏、彼らは銀座の画廊に集められ、画廊の主人・結城大和とその妹・伽耶子と出会う。そこで彼らは狂気の天才画家・葛城繁が残した怪奇な数枚の絵を目にする。それはクトゥルーの邪神による地球侵略の開始を告げる、予言の絵であった。 彼らは、古来より神州・日本に住まってきた神々・先住者の末裔であり、その侵略から地球を守るべく覚醒を促される。
だが、《火の民》伊吹一族の末裔であるはずの伊吹涼だけはなぜか覚醒しなかった。いぶかる周囲の先住者に、《山の民》の長老・許斐老人は涼が《火の民》の血を引いていないことを明かし、その証拠として、彼の名「涼」に見える、本来、火とは相いれないはずの部首「氵」を挙げる。先住者たちに囲まれ、怯える涼の前に、突如、おぞましいクトゥルーの邪神ツァトゥグァが出現する。
数日後、ルポライター・安西雄介は涼が口走る「葛城繁」という名に興味を持ち、ショックから立ち直れずにいる涼のもとを訪れる。葛城繁は、雄介が恋い焦がれる貴婦人・葛城秌子の叔父にあたり、その死は何か人間でないものに殺されたとしか思えない、奇怪にして残忍なものであったというのだ。
涼とともに銀座の画廊を訪れた雄介は、画廊がすでになく、そこが平凡な事務所になっていることを知った。だが、その事務所に足を踏み入れたとたん、雄介はそこが魚のような風貌の人間-インスマウス人の巣窟となっていることを目の当たりにした。それをきっかけとして、本格的に調査を開始した雄介は、涼に聞いた風体から藤原華子の正体をつきとめ、涼とともにその屋敷へと向かった。
二人は身分を偽って屋敷に潜入したところ、オカルトに狂った華子の父・隆道が呼び出したツァトゥグァが再び出現し、屋敷の住人をことごとく殺し始めるさまを目撃する。ツァトゥグァのあぎとから逃れ、かろうじて屋敷を脱出した雄介と涼の目の前で、藤原家の屋敷は火に包まれ、焼け落ちていった。
そして、人々の生活の中に、徐々に魔の気配がその濃さを増し、恐るべき侵略がじわりと始まっていく。(以上、第二巻冒頭部まで)
主要なキャラクター
地球軍
安西雄介
先住者
北斗多一郎
茨木瞳子
その他の人物
伊吹涼
作品一覧
正伝
順にカドカワノベルズ、角川文庫、ハルキ文庫。日付は発行日。
外伝
順にカドカワノベルズ、角川文庫。日付は発行日。
関連出版物
イメージアルバム
本作品を題材としたイメージアルバムが発売されている。ハードロックと弦楽器、邦楽を組み合わせた、やや前衛的な曲を主体として構成されている。著者の栗本薫も作曲、作詞、演奏に参加している。
魔界水滸伝
- 発売日:1987年11月21日
- 発売元:ポニーキャニオン
- 演奏:SAGA
- ジャケット:天野喜孝
- 収録曲
- プロローグ(作曲:栗本薫 編曲:淡海悟郎)
- SHIKI〜SOKU〜ZE〜KU(作・編曲:淡海悟郎 作詞:栗本薫 訳詞:木原茂生)
- 北斗七星-北斗多一郎のテーマ〜伊吹涼のテーマ(作曲:栗本薫、淡海悟郎 編曲:淡海悟郎)
- インスマウスマーチ(作曲:栗本薫、淡海悟郎 編曲:淡海悟郎)
- 不二(作曲:栗本薫 編曲:栗本薫、堅田喜三久)
- 小組曲“NATSUKI”
- 〜プレリュード(作曲:J.S.Bach、栗本薫 編曲:淡海悟郎)
- 〜その愛(作曲:石川昌彦 編曲:淡海悟郎 作詞:栗本薫)
- 〜その死(作曲:栗本薫 編曲:淡海悟郎)
- 〜飛翔(作・編曲:淡海悟郎)
- 〜レクイエム(作曲:栗本薫 編曲:淡海悟郎 作詞:栗本薫)
- DOOMSDAY(作曲:石川昌彦 編曲:淡海悟郎 作詞:栗本薫)
- エピローグ(作曲:栗本薫 編曲:淡海悟郎)
〜プレリュード(作曲:J.S.Bach、栗本薫 編曲:淡海悟郎)
〜その愛(作曲:石川昌彦 編曲:淡海悟郎 作詞:栗本薫)
〜その死(作曲:栗本薫 編曲:淡海悟郎)
〜飛翔(作・編曲:淡海悟郎)
〜レクイエム(作曲:栗本薫 編曲:淡海悟郎 作詞:栗本薫)
ゲームブック
- 『魔界水滸伝』(角川書店)(ISBN 4-04-852055-5 1987年3月5日発行)
- 本作品を題材としたアドベンチャー・ゲームブック。おおむね第一部「魔界誕生編」を基に作成されているが、ストーリーは大幅にアレンジされている。プレイヤーは、安西雄介として、仲間たちとともにクトゥルーの神々と戦うために、局面ごとにさまざまな行動を選択しつつ、ゲームを進めていく。
本作品を題材としたアドベンチャー・ゲームブック。おおむね第一部「魔界誕生編」を基に作成されているが、ストーリーは大幅にアレンジされている。プレイヤーは、安西雄介として、仲間たちとともにクトゥルーの神々と戦うために、局面ごとにさまざまな行動を選択しつつ、ゲームを進めていく。
グイン・サーガとの関係
ストーリーに直接の関連はないが、「イロン写本」「大導師アグリッパ」など、『グイン・サーガ』に登場するアイテムや人物の名が作中に登場する。また、物語終盤で登場するクトゥルー邪神アザトートは、手足のない一つ目の赤ん坊のような形態であると描写されており、その姿は『グイン・サーガ』にしばしば登場する謎の生命体のものと共通する。『グイン・サーガ外伝』には、太古の神々たるク・ス=ルーの神々の一神としてラン=テゴスの名が登場し、またクトゥルーを思わせるク・スルフと名乗る生命体が現れている。
反響
作家の森瀬繚は、本作の影響でクトゥルフ神話に親しむようになった読者が大勢いたと電ファミニコゲーマーとのインタビューの中で話しており、おそらくこれが日本における最初のクトゥルフ神話ブームだろうと推測している。また、森瀬は、魔界水滸伝ブームの影響の例として、本作連載期間中の1982年に発行された『世界の怪獣大百科』(勁文社)を挙げている。