黄昏色の詠使い
ジャンル:ファンタジー,
小説
著者:細音啓,
出版社:富士見書房,
掲載誌:月刊ドラゴンマガジン,
レーベル:富士見ファンタジア文庫,
巻数:全10巻,
以下はWikipediaより引用
要約
『黄昏色の詠使い』(たそがれいろのうたつかい)シリーズは細音啓によるライトノベル。『イヴは夜明けに微笑んで』以下一連のシリーズ(#既刊一覧)が、富士見ファンタジア文庫(富士見書房)より出版されている。イラストは竹岡美穂。第一作『イヴは夜明けに微笑んで』は第18回ファンタジア長編小説大賞佳作受賞。『このライトノベルがすごい!』作品部門では2008年版で3位、2010年版で6位それぞれを獲得している。
あらすじ
エルファンド名詠学舎に通うイブマリーの家は、平均寿命が短かった。そしてイブマリーもまた、自分が短命だと悟っていた。死ぬ前に、生きていた証を何か一つ残したい。その思いを名詠式に賭けた少女は、既存の五色には存在しない、新たな名詠式を構築しようと決意する。しかし、そんな在りえないものを認める者は誰もおらず、学園側からも完全に否定され、孤立した学園生活を送るイブマリー。そんな日々の中、ふと口ずさんだ、まだ誰にも聴かせたことのない名詠式の「詠(うた)」をクラスメイトのカインツに聴かれてしまう。悔やむイブマリーだったが、意外にも彼は、他の誰もが受け入れなかった未完の名詠式を、興味深く素直に聞き入れてくれたのだ。実は、カインツも同じく、名詠式では不可能とされる、五色全ての名詠式の修得という無謀な夢を持ち、そのことを彼女だけに打ち明ける。無理にも等しい夢を持つ二人は互いに惹かれあい、そのとき一つの約束を交わす。
時は流れ、カインツが大人になり、世界に勇名を馳せる頃。 名詠式専修校のトレミア・アカデミーに通うクルーエルは名詠式に悩みを抱えていた。自分は何のために名詠式を学び、その力を将来の何に役立てるのかと。目標もなくその価値も見出せない、漠然とした気持ちで日々を送る彼女のクラスに一人の転入生がやって来る。その名はネイト。彼にはどうしても完成させたい名詠式があるという。
それは、かつてイブマリーが命を賭けて遺した異端の名詠、夜色名詠式だった。
登場人物
主要人物
ネイト・イェレミーアス(Neight Yehlemihas)
トレミア・アカデミーに転入してきた少年。13歳。飛び級という扱いで1-Bのクラスメイトになる。背は小さく、顔は中性的。名詠式の専攻色は既存の5色のいずれでもない夜色。名詠生物のアーマを連れている。6歳の頃にイブマリーに拾われ息子として育てられる。トレミア・アカデミーに転入した目的は義母の遺した夜色名詠を完成させること。クルーエルと出会うことで「なぜ名詠式を学ぶのか」ということについて自分なりの答えを求めはじめるようになる。性格はとても純真。エイダやサージェスなどに恋愛についてからかわれるだけで赤面してしまうほど。クルーエルやエイダたちの強さに隠れ、なにもできないと自らを低評価したり、一見すると気弱そうな印象を受けるが、いざという時には精神的な強さを発揮し、前線で戦う勇気も持っている。義母譲りの頑固さで、一度決めたことは曲げない。学園生活と名詠式の謎を巡る事件の中、クルーエルと一緒に詠い、共に成長していく。本編の主人公。
ネイトとはセラフェノ音語で「夜明け」と言う意味を持つ。全ての名詠の始まりを担う「夜明け色の詠使い」。
『このライトノベルがすごい!』男性キャラクター部門では2010年版で8位を獲得している。
クルーエル・ソフィネット(Kluele Sophi Net)
トレミア・アカデミーに通う少女。16歳。1-Bのクラス委員長。護身部に所属。面倒見が良く転入生のネイトのことをよく気にかけている優しい姉御肌。名詠式の専攻色は赤。何事にもそこそこの才覚を発揮し、なんとなくで名詠式を学んでいた彼女は真剣に打ち込めるものを見つけあぐねていた。名詠式に対するネイトやミオの直向さに心が揺れ、アーマの後押しもあって、自らも名詠式を楽しむことを決意した。赤の名詠に関しては類稀なる才能を発揮し、伝説の真精たる"黎明の神鳥(フェニックス)"を詠び出すことができる。
その正体は、ミクヴェクス(ただそこに佇立する者)によって作られた世界改変の際に全ての人の記憶を保存する器、「残酷な純粋知性(ソフィアオブクルーエルネット)」であったが、アマリリスやネイトたちによって救い出され、自由の身となった。
全ての赤色名詠を扱うことのできる「真なる緋色の詠使い」。
『このライトノベルがすごい!』女性キャラクター部門では2009年版で8位、2010年版で9位を獲得している。
カインツ・アーウィンケル(Xins Airwincle)
20代で五色全ての名詠式を修得した生ける伝説。虹色名詠士等の異名を持ち、枯れ草色のコートを羽織った男性。夜色名詠の唯一の理解者で、自分が虹色名詠士になれるのと、イブマリーが夜色名詠式を完成させるのとどちらが先かという勝負を持ちかけた。エルファンド校を卒業後、イブマリーとは疎遠になってしまったが、トレミア・アカデミーのコンクールでネイトの名詠を一見しただけで夜色名詠の存在を知る。名詠式に疑念を持っていた彼は、様々な判断材料から早々に讃来歌にも疑問を抱いており、詠うことは滅多になく、それゆえ真精を呼ぶこともないため、彼の名声を妬む者から「詠えない名詠士」と蔑まれることもある。枯れ草色のコートは、周りと同じローブを羽織ることを嫌ったカインツへ、イブマリーが送った誕生日プレゼント。彼はこのコートを大事に思っており今でも愛用している。学生時代の専攻色は黄。とっさに名詠するのは主に小型精命のウィル・オ・ウィスプである。
虹色を知る「枯れ草色の詠使い」
トレミア・アカデミー1-Bの生徒
トレミア・アカデミーの教師
ゼア・ロードフィル
緑色名詠を操る柔和で小柄な老人。
かつて競闘場において覇者として一時代を築いた偉大な名詠士であり、現在はトレミア・アカデミーの学園長を務めている。
現役を引退していながらも緑の真精である疾竜(ワイバーン)を自在に詠びだす実力者であり、学園全ての教師が目標としている。
さらに教育者としても競演会、徒競走大会などの学校行事を開き生徒の技術向上に力を入れており、気になる生徒がいれば自ら課題を出しその実力を試そうとするほど熱心である。
若い頃から祓名民のルーファとライバル関係にあり公式、非公式を合わせて八百回以上の試合を行いその戦績についてゼア、ルーファは互いに「四十三勝四十二敗で 自分が勝ち越している」と主張しており、一見すれば犬猿の仲に見えるが学園が浸透者に襲撃された際には互いに背中を預けあい立ち向かうなど心の底では生涯の友と認めるほどに信頼している(ティンカ曰く生涯を通した喧嘩仲間)。
イ短調
作中に登場する世界的に有名な11人の天才。各分野において優秀な者をクラウスにより見出されて編成された組織。一人一人が「異端」であることと、構成人数が11人であることにかけて「イ短調」と呼ばれるようになった。ここに載ってない人物(番号)は、老齢などの理由で主立って活動しないメンバーである。
ジール名詠校舎
その他
世界観
本作において中心的な設定となるのが名詠式である。これは任意の物体(生物を含む)をその場に召喚する技術であり、高度に体系化されている。召喚に際しては、対象の物体と同じ色の触媒(カタリスト)と、その物体の名前を讃える讃来歌(オラトリオ)を用いる。呼び出されたものは同色の光を放つ名詠門(チャネル)から現れる。名詠は誰でも学ぶことができるが、専門的に名詠をおこなう者は名詠士と呼ばれる。
名詠式は対象物の色相により5つの系統に分かれる。基幹となる色は、赤 (Keinez)、青 (Ruguz)、黄 (Surisuz)、緑 (Beorc)、白 (Arzus)。生徒は、この中の一つを専攻色として選び、学んでいく。それぞれの色ごとに理論が大きく異なるため、複数色の修得は困難で、一般的に一人が生涯に修得できるのは、三色が上限とされる。
名詠式は初歩的なものから困難なものまであり、それぞれランク付けされている。最上級を第一音階名詠(ハイ・ノーブル・アリア)といい、以下、第二音階名詠(ノーブル-)、第三音階名詠(プライム-)、第四音階名詠(コモン-)と続く。一般に、位の高い名詠式ほど、大きく複雑な形状の物体や、強力な名詠生物を呼び出す(=詠びだす)ことができる。
触媒としては「絵の具」「画用紙」「宝石」「炎」「糸」「絨毯」など色さえ合えば大抵の物が使用できる。しかし、特定の触媒を使用しなければならない特殊な名詠式も存在する。讃来歌は通常の言語ではなくセラフェノ音語を用いる。名詠式に熟練することで、第二音階までは讃来歌を使わなくても名詠できるようにもなる。
名詠式で呼び出された生物を名詠生物と呼び、主に戦闘や物資などの運搬に使役される。とくに第一音階名詠で呼び出されるものは真精と称される各色の支配者級の生物であり、強大な力を有する。
位の高い名詠式で呼び出された名詠生物ほど強力だが、稀に下位の名詠式で、上位の名詠式で詠び出せる名詠生物を凌ぐ力を持つ個体を詠び出せる場合もある。そのような特異な名詠生物を自在に呼べるセンスを持つ名詠士は、大特異点と称される。
名詠式によって召喚された物体を送り返す技術も確立されており、反唱(はんしょう)と呼ばれる。名詠生物が暴走した際に必要となる技術であり、これを職業的におこなう一族が祓名民(ジルシェ)である。なお、完全習得した際には祓戈の到極者の称号を得ることができる。反唱の際にも対象と同色の触媒が必要である。
既知の五色体系に加え、ストーリー最初に第六の体系となる「夜色名詠」が、また中盤から「灰色名詠」「空白名詠」「虹色名詠」といった未知の体系の存在が示される。
既刊一覧
巻数 | タイトル | 初版発行日 | ISBN |
---|---|---|---|
1 | 黄昏色の詠使い イヴは夜明けに微笑んで | 2007年1月25日 | 978-4-8291-1880-1 |
2 | 黄昏色の詠使いII 奏でる少女の道行きは | 2007年5月25日 | 978-4-8291-1918-1 |
3 | 黄昏色の詠使いIII アマデウスの詩、謳え敗者の王 | 2007年7月25日 | 978-4-8291-1941-9 |
4 | 黄昏色の詠使いIV 踊る世界、イヴの調律 | 2007年11月25日 | 978-4-8291-1976-1 |
5 | 黄昏色の詠使いV 全ての歌を夢見る子供たち | 2008年2月25日 | 978-4-8291-3260-9 |
6 | 黄昏色の詠使いVI そしてシャオの福音来たり | 2008年4月25日 | 978-4-8291-3276-0 |
7 | 黄昏色の詠使いVII 新約の扉 汝ミクヴァの洗礼よ | 2008年8月25日 | 978-4-8291-3317-0 |
8 | 黄昏色の詠使いVIII 百億の星にリリスは祈り | 2008年12月25日 | 978-4-8291-3357-6 |
9 | 黄昏色の詠使いIX ソフィア、詠と絆と涙を抱いて | 2009年3月25日 | 978-4-8291-3381-1 |
10 | 黄昏色の詠使いX 夜明け色の詠使い | 2009年8月25日 | 978-4-8291-3434-4 |
なお、電子書籍の合本には文庫未収録のイラストを収録している。
参考文献
- 『このライトノベルがすごい!』編集部『このライトノベルがすごい!2008』宝島社、2007年12月6日。ISBN 978-4-7966-6140-9。
- 『このライトノベルがすごい!』編集部『このライトノベルがすごい!2009』宝島社、2008年12月6日。ISBN 978-4-7966-6695-4。
- 『このライトノベルがすごい!』編集部『このライトノベルがすごい!2010』宝島社、2009年12月5日。ISBN 978-4-7966-7490-4。