0能者ミナト
題材:エクソシスム・悪霊ばらい,
小説
著者:葉山透,
出版社:アスキー・メディアワークス,KADOKAWA,
レーベル:メディアワークス文庫,
巻数:既刊11巻,
漫画
原作・原案など:葉山透,
作画:田倉トヲル,
出版社:エンターブレイン→KADOKAWA,
掲載誌:comic B's-LOG エアレイド,B's-LOG COMIC,
レーベル:B's-LOG COMICS,
巻数:全4巻,
以下はWikipediaより引用
要約
『0能者ミナト』(れいのうしゃミナト)は、葉山透による日本の小説。イラストはkyoが担当。メディアワークス文庫(アスキー・メディアワークス→KADOKAWA)より2011年2月から刊行されている。2015年9月にはドラマCD化された。2018年1月時点で累計発行部数は60万部を突破している。
あらすじ
登場人物
※声優はドラマCD版から。
主要人物
九条 湊(くじょう みなと)
声 - 興津和幸
さびれた裏通りに立つ怪しげな雑居ビルの7階にある一室に事務所を構える20代後半の青年。沙耶からは「先生」、ユウキからは「おっさん」と呼ばれる。よれよれのジーンズとだらしない黒いシャツというくだけすぎともいえる服装が特徴的。霊感、法力、神通力といった特殊な能力を一切持たず、己の知恵のみで怪異事件を解決するがやっかみと疑いから同業者からは「零能者」や「無能力者」などと呼ばれている。霊魂や浮妖の類は(実態のあるものを除いて)全く見えない。反面、詐欺師からはその存在を恐れられてもいる。
不可思議な現象を怪異のせいだと決めつけず、できる限り分解し理解するといった手法をとる。頭の回転が早く知識量も豊富で、大学ではあらゆる事象の完全シミュレートに関する研究を行っていた。特殊な能力を持たないために事件解決のために入念な準備を必要とする。そのため、唐突に怪異事件に巻き込まれるのが弱点だと思われているが、そういった状況でも知恵と持てる道具を最大限に活用して相手を倒す。ただし本人曰く、怪異の退治や便利屋的な仕事はあくまで副業で、本業は競馬などのギャンブルであるらしい。
斜に構えたクセのある性格。性悪説を好み、「善が勝つという教義を堂々と語れる厚顔無恥なところ」を気に入ったという理由でゾロアスター教に一生をささげたと嘯くなど宗教観も歪んでいる。大いに毒舌で不躾なため、頻繁に他人に悪印象を与え必要以上に敵を作っている。仕事を選ぶ基準は「面白いかどうか」で、基本的に怠惰だが、一度好奇心を刺激されればなりふり構わず追求するためその過程で負傷することも多い。ふざけた発言が多いものの冷静な性格で、怪異や殺人犯を前にしても自分のペースを崩さない。拝金主義者を自認し、方々に作っている借金を返済するため大麻の栽培や脅迫のような犯罪行為に手を染めることもある。普段から腹に一物抱えているため、考えをすべて読んでしまう倫寧を唯一といっていいほど苦手としている。
喫茶店では必ずクリームソーダを注文し、最後の晩餐もクリームソーダと決めているらしい。酒も好きだが、羽目を外しすぎるきらいがある。
現在では依頼書が山積みになっているにも関わらず1カ月以上仕事をしないことがほとんどだが、昔はもっと勤勉で総本山からの依頼だけでも成功率98%、失敗した依頼はわずか3件という驚異的な実績を誇っていた。依頼を受けた時は沙耶やユウキに何も言わず自分だけ万全の準備を整えている。
山神 沙耶(やまがみ さや)
声 - 早見沙織
16歳の高校生。神降ろしができる貴重な人材で、梓弓を使い霊力を蓄えた髪で編みこんだ浄化の矢を放つ。母親譲りの浄化の力を持つが、初潮や生理などで女性ホルモンバランスが変化した時には力を使えない。また、神降ろしができるという特性上、いわゆるトランス状態に入りやすい精神構造をしている。自身の限界に挑戦しようとする肉体派な面があり、修行場が山奥にあったためかなりの健脚の持ち主で泳ぎも上手。
叔母である理彩子を「理彩姉さま」と呼んで慕う。1歳のころ父親は病死、7年前に巫女だった母親の美紗子(みさこ)もお務めで命を落としているため、御蔭を離れてからは理彩子のもとに身を寄せている。
真面目で人が良く、簡単に人を信じるため、湊からはいつももっと斜に構えて物を見ろと言われているが、しばしば何気なく黒い発言して周囲を引かせることがある。マジックが好き。叔母に似ず年齢の割に胸が薄いことを気にしており、毎日牛乳を飲むなど涙ぐましい努力をしている。夢魔に囚われた際には自分の胸が不自然に成長していることに気づき夢から覚めている。
嫉の封印が解かれる現場に立ち会ったことで腕に封じの伊ル日文字を宿すこととなり、贄となる運命を背負うが湊の説得により、共に嫉を倒すために動く。嫉を倒した後は、御蔭神道を離れ湊の元で自分の知らない怪異に対抗する方法を学ぼうとしている。事務所の掃除やお茶くみなどの雑事をこなしているが、自分が役立たずなのではないかと悩み夢魔に取り憑かれてしまったことがある。依頼人の応対に加え最近では借金取りの応対もさせられているため、皮肉なことに金銭の交渉が上達してしまっている。女子高の友人から怪異がらみの依頼を受けることもある。
赤羽 ユウキ(あかばね ユウキ)
声 - 斎藤千和
10歳ながら総本山でも天才と一目置かれる法力の持ち主。怪異が最も苦手とするものを見抜く天性の勘を持つが、総本山では大人たちの嫉妬を受け、自分の力を正当に評価してもらえないと不満を抱いていた。五行を操る高度な術と複雑な符を使いこなし力勝負で怪異を倒す戦法を得意とするが、補助系の術も人並み以上にこなす。努力家な面もあり、着々と実力を伸ばしているが、成長の方向性が湊寄りなことを沙耶からは心配されている。根性論などが嫌いできつい修行などは真面目にしたことがないため、沙耶に比べれば体力がない。
祖父も母も高名な法力使いだったが1歳のころに亡くなっており、5年前に唯一の肉親だった祖母が急性腎不全で亡くなったため身寄りはいない。私生活では有名私立小学校に通学し、クラスの中では一番女子からの人気があるが、住んでいる場所などは不明。年齢の割に大人びており、やや生意気。沙耶に淡い恋心を抱く。しかし、年相応に幼い部分もあり、どんなに天才といわれても自分が本当に会いたい人々に会えないことを寂しく思っている。自身の実力を示さんがため、後述の通り初期には無茶をしすぎることもあったが、最近では仲間を信頼できるようになってきている。湊に調査を手伝わされるようになってからは子供だろうとこき使う姿を見て、自分は案外大切にされていたのではないかとも考えるようになっている。
嫉の一件で自分の力を示そうと、孝元に紹介された湊と共に嫉を倒そうとするが自分の活躍が評価されなかったことに不満を抱き、単身嫉に挑むが敗れる。しかし、この戦いでの成果が湊の勝利につながった。その際に武器として使用した降魔の利剣を損壊してしまい、総本山に居辛くなって湊の事務所に厄介になる。事務所ではもっぱら漫画を読んでいるか、ゲームをしている。
御蔭神道
水谷 理彩子(みずたに りさこ)
声 - 沢城みゆき
数々の怪異事件を解決した功績で28歳の若さで正階という高位につき、クチナシ様と呼ばれる。姉の娘である沙耶を溺愛している。姪とは対照的に、非常にグラマラスな体形。現在はマンションで沙耶と2人暮らしをしており、彼女が湊の事務所に通うことも社会勉強のためと許している。
湊が初めて怪異にかかわってから10年来の付き合いで、かつては湊や孝元と組んで仕事をしており、湊以上に無鉄砲だったが、現在は死んだ姉と雰囲気が重なる姪を守るため臆病になっていると自覚している。
桜子(さくらこ)
御神楽 左近(みかぐら さこん)
カオナシ
白銀 スズ(しろがね スズ)
総本山
荒田 孝元(あらた こうげん)
声 - 蓮池龍三
主に渉外を受け持つ法力僧。「よもぎ寺の昼行燈」とあだ名され法力はそれほどでもない。実家が「よもぎ寺」と呼ばれているのにも何らかの理由があるらしい。法力の才能に乏しかったため体術の修行を積んでおり、人間相手ならかなりの強さを誇る。また学力の高い高校を卒業し、大学にも通っていた。そのため一時期ユウキの母に勉強を教えていたこともあり、彼女が初恋の相手だった。
くだけた雰囲気と柔らかな物腰を持つ。お人好しで話をすぐに真に受ける性格なので、湊にはしばしば騙される。冗談のセンスが独特で分かりにくいため、周囲を困惑させることもある。借金を帳消しにする条件で湊にユウキの面倒を見るように頼む。それからも踏み倒されることが分かっていながら、一度に使い切って困らないように毎月に2回に分けて湊に金を貸している。
かつては湊や理彩子と組んで仕事をしていた。最近はその時に比べて体力が落ちてきている模様。
菱田 羅上(ひしだ らじょう)
西宮 聖良(にしみや せいら)
源覚(げんかく)
一徳(いっとく)
遼遠(りょうえん)
一 一(にのまえ かず)
赤ん坊のころ、人呑みの館と呼ばれる建物の中から発見され、総本山に引き取られて法力僧として育てられた少年。名前の由来は発見時に来ていた産着に「11」と番号が振ってあったことから。怪異ではないかと言われて幼少期からいじめを受けていた。法力はそれほどでもないが、努力家で総本山でも有数の武術の使い手。ユウキのことを見下さない数少ない人間の一人。スズとは幼なじみで「いっちゃん」の愛称で呼ばれている。
怪異と人間の交配の結果生まれた第2世代だが、メンデルの法則に基づく劣性形質を受け継いだ完全な人間。スズとの逃避行の最中彼女と結ばれる。それからわずか1日ほどで自分の子供が生まれたことには動揺を見せたがもののすぐに覚悟を決めた。
赤羽 義雄(あかばね ぎゆう)
警察関係者
小野寺 道夫(おのでら みちお)
警部。外見と実力から「志多(しだ)町署のコロンボ警部」のあだ名で呼ばれている。いい人だが抜け目がない。
10年前に発生した浅野友哉死亡事件をきっかけに第1発見者で当時高校生だった湊と知り合う。事件に対する湊の態度を見て彼の本質を見抜き、理解者となる。湊が敬意を払う数少ない人物でもある。
それから10年後の現在、浅野の死の真相に疑問を感じ独自の操作を開始、彼の死が件に誘導されたものであると知るが、件の予言に巻き込まれ死を宣告される。実際に交通事故から子供を救って死亡、弔問に来た湊が件の謎を追うことにつながる。
後に、件の予言では事件に巻き込まれて死亡することになっていたが、その予言は外れていたことが判明し、このことが件の完全と思われた予言を破るきっかけとなる。
朝霧 伊織(あさぎり いおり)
30歳のキャリア警察官。加々美署の所属で階級は警視。父方は財閥系の、母方は旧華族の血を引く本物のエリートで、ゆくゆくは警視総監をも狙える逸材とされている。御蔭神道との渉外役を担当している。
仕事上の面識のある理彩子とお見合いを勧められ、本心から好意を抱いていたため本気でプロポーズする。しかし実は九尾の狐の内通者であり、強力な怪異と取引し不要な人間を餌に他の怪異を狩ってもらおうと考えていた。九尾の狐に現代の人間の知識を与え、自分たちが作る社会にとって過ぎた才能を持つ湊を殺そうとするが、自尊心の高さから彼を怪異の力で上回ろうとしたことが失策となり、自分が理彩子に渡したダイヤモンドの指輪で九尾の狐を殺され、自身も沙耶によって武装解除されて逮捕された。
自衛隊関係者
その他
高田 重信(たかだ しげのぶ)
堅剛 猛雄(けんごう たけお)
米澤 秀明(よねざわ ひであき)
鬼頭 厳斎(きとう げんさい)
鬼頭 幽山(きとう ゆうざん)
姫川 恵介(ひめかわ けいすけ)
絞殺、銃殺、斬殺などのあらゆる殺し方を試しても絶対に死なない死刑囚。70歳近い高齢のはずだが、外見は20代前半のまま。余罪まで追及すれば殺した人数が2桁に上り、捕らえられてからも不死身の特性を利用して躊躇なく自分の体を破壊して監房を抜け出し看守をも殺害するといった行為を繰り返す凶悪犯だが、なぜか悟りを開いた聖人のような神々しく清浄な雰囲気をまとう。
不死身の秘密は御仏の加護による無病息災。そのためどんな怪我や病気もなかったことになり、体に害になるものは一切たまらず細胞もいつまでも若々しいため、寿命は人としての限界まで伸びている。一徳の願いの対象物であるため自身の人間性は全く関係ない(豊作の祈祷を受けた稲や野菜が敬虔な信者でないのと同じことらしい)。この不死身の唯一の弱点は、予想しない死からの救いが発生すると加護にタイムラグが生じること(例えば絞首刑になった時、ロープが切れて落下したことで骨折するとその治りが普段より遅い)。この特性を利用し毒物を飲んだ直後に蘇生を行ったことで過剰な健康反応を誘発、強心効果で心臓が破裂寸前に、肺は過呼吸状態になったことで遂に死亡した。死体は実年齢そのままの老いた姿となった。
里中 佳乃(さとなか よしの)
陣内 美咲(じんない みさき)
士道 骸(しどう むくろ)
浅野 友哉(あさの ともや)
高校時代の湊のバイト先の先輩。実家のある寒村に湊を誘ったが、首を切られた仔牛や額を割られた母牛の死体と共に首を切られた状態で発見される。享年21。
度が過ぎたお人好しで、それがたたって損をするタイプ。父親も他人に同情し、借金のために牧場を手放すことになり前年に死亡しているため、肉親は母親と妹、介護施設に入っている祖母。オカルトに興味があり、実家には関連した書籍が数多くある。湊とは正反対の性格ながら仲の良い友人の間柄だった。
当初は殺人事件として捜査がされていたが、御蔭神道の介入で自殺として片づけられる。それに疑問を感じた湊が捜査を続けるが、最終的に件の予言で狂牛病が発生することを知り、実家で飼育している牛が狂牛病であることを隠蔽するために牛を殺害するとともに自殺を図ったことが判明。この事件がきっかけで湊は理彩子と知り合い同時に怪異の存在を知ることになった。
木下 孝治(きのした こうじ)
厚井 小織(あつい こおり)
小さな出版社に勤めるカメラマン。先輩記者と共に七人ミサキを探していたところ、七人ミサキと行動を共にする通り魔の女に襲撃され、先輩は死亡、自らも怪異の次のターゲットとなってしまう。死を免れるため総本山に保護を依頼する。ずけずけとものをいうタイプで湊とは頻繁に口論になった。
名前の由来は生まれが「小折町」だったことによるもので、苗字と合わせて「熱い氷」と読めることにコンプレックスを抱く。自分に適当な名前を付けた親に対してわだかまりを持っており、親子の愛情に対して激しい憎悪を持っている。そのため、通り魔が七人ミサキに囚われたわが子を成仏させるために凶行を繰り返していたことを知ると、彼女を殺害して逃亡した。しかし、いまだ怪異に狙われていたため、しばらくして七人ミサキに取り殺されてしまった。
四方木 宗一郎(よもぎ そういちろう)
国崎 弦(くにさき ゆずる)
南雲 瑠璃(なぐも るり)
如月 雅(きさらぎ みやび)
染谷 葉瑠(そめたに はる)
怪異
嫉(しつ)
神座より堕ちた怪異。割れた鏡に映った人の顔をした容姿で、表情が変わるたびに顔に刻まれた皺から垢が零れ落ちる。700年以上前に近隣の村人を全滅させ、いかなる手段をもってしても滅ぼすことができなかったため100人の御霊を持って「人知らずの藪」の常世境に封じられてきた。人間の醜い心を肉体ごと喰らう。その正体は光そのもので、もともとは合わせ鏡に見立てた2本の巨木に封じ込めた太陽の光を崇めたものだったが、人間の欲望を映し続けたことで怪異に成り果てた。光速で移動でき、陽が最も高い時に最大の力を発揮できる半面、日中にしか活動できず、鏡によって跳ね返される。
明山大学オカルト研究会のために封印が解かれ復活し、自らを封じてきた注連縄の力が移った沙耶を狙う。御蔭の神官兵たちをおはじめ多くの人々を食らい、沙耶の匂いを追って人知らずの藪に向かったところを待ち伏せしていた湊と戦う。鏡で動きを封じる戦法をとるなんの力も持たないはずの湊に得体の知れない恐怖を抱くも、鏡のトリックを見抜いて消耗した彼を最大の力で打ち破ろうとしたが、光ファイバーと光増幅装置によって自分でも制御できないほどに力を増幅され、宇宙の果てへと追放された。
鏖(みなごろし)
江戸時代、1749年から数年間のべ1000人以上を殺した怪異で、山中に封じられていたが、道路建設の利権に目がくらんだ総本山の手で封印が解かれた。この怪異が現れたところでは、人々は喉をかきむしって悶え死に、胸や節々の痛みやしびれが現れ、古傷が開くといった症状を示し、弾丸並みの速さで飛来する石などで体を爆砕される。この怪異が発生するとき三弦町の金束神社に収められた鈴が鳴る。
その正体は蜃気楼を生み出す大ハマグリの怪異・蜃。幻次郎という足の悪い画家の願いから生まれた存在で、気圧を操る能力で大気の屈折率を操作、大気を吸って真空を作り空気による映像の劣化を最低限にして彼に遠い国の風景を見せていた。しかし、海底火山の噴火により海中から山の上へと吹き飛ばされ、そこで大気と水の屈折率の変化を理解できずに真空を作り出したことで、窒息死や減圧症による死だけでなく、真空の筒が宇宙空間へ突き抜けたために普通は大気の断熱圧縮で燃え尽きるはずの隕石や宇宙塵が猛烈な速度で地上へ落下することになった。
被害を拡大させながら生まれた海へと向かうが、乾燥と、大気にほとんど含まれないうえ非常に屈折率の高く、青潮の原因となる硫黄によって体が弱り、周囲の人間たちに世界中の名勝地の風景を見せた後に死亡した。
夢魔(むま)
人の夢に取り憑く怪異の総称。精を吸い尽くすまで取り憑いた人間から離れない厄介な存在。予防には麻羅観音が有効。
憑依する人間を変えるときは静電気のような現象を起こす。脳波において通常の催眠術では現れないPGO波の姿として現れ、視床下部を刺激する。作中では沙耶に取り憑くも、潔癖な彼女とは相性が悪く強いコンプレックスや不安の方向に夢の行先を捻じ曲げることとなり、精を吸い尽くす前に発作を起こさせてしまう。その後、沙耶の夢でその願いを反映し、彼女の胸を大きくした夢を見せたことで現実ではないとばれてしまう。その敗北から、沙耶を死んだはずの両親がいる不安のない心安らかな世界に連れ込む。しかし、催眠術を利用して夢に干渉した湊に正体を看破され、梓弓で射られ消滅寸前にまで弱る。その後、霊力も法力もない湊に取り憑こうとするもゴム手袋とコンデンサを利用して絶縁体であるゴム製のコンドームに封印される。
船幽霊(ふなゆうれい)
九尾の狐(きゅうびのきつね)/殺生石(せっしょうせき)
日本三大妖怪の1つに数えられる、狐の姿をした強力な怪異。様々な負の感情を食らう習性があり、権力者に近づいて人心を操り国を乱し争いを起こさせる。目にもとまらぬ速さで移動し、高度な防御の術をやすやすと打ち破ることができるほか、空間を歪めて一定領域内を無限にループさせる結界を作る能力を持つ。また、狐狸が持つ化ける力で自在に姿を変えるだけでなく、少々時間はかかるが対象の性質すら再現できる。ただし一度死んだことで性質変化の能力は対象に制限が生じて鉱物のみとなっている。さらに自分の鳴き声を利用し干渉定位を行って地形を360°全て把握し、飛来する矢をも回避できるが、その特性故に自分の鳴き声と同じ周波数の鏑矢を使用されたことで900年以上前に倒されており、死後に殺生石と化した後は玄翁和尚によって体を砕かれ各地へ飛び散りそれ以降も毒の気を吐いて人を害していた。
その内の1つは「夜泣き石」として栃木県との県境の山中から運び込まれ、亀田町の大幽霊妖怪展に展示されていた。大学の調査によると解析不可能な成分が1.7%含まれている。後に、栃木県の玉藻稲荷神社から飛来したものだと判明。沙耶とユウキが来館した日、突如毒の霧をはいて活動を始め、自分を殺した玄翁の末裔である美咲を狙い結界を張って館への出入りを封じ、石の狐として復活する。本体の4分の1ほどの大きさしかないにもかかわらず優れた回避能力と高い攻撃力で2人を苦戦させたが沙耶に弱点見抜かれ、鳴き声を録音したスマートフォンを取り付けた矢を躱すことができずに負傷し玄翁で体を砕かれ敗北した。
それからおよそ半年後、伊織を協力者に自分の一部を殺した沙耶とユウキに復讐を果たそうとする。カオナシを操ることで各地から殺生石の破片を御蔭神道の修練場へ集めさせ、伊織から授けられた現代の知識を利用して日本で産出する最も硬い鉱物である鋼玉(ルビー)で肉体を再構築して復活を果たす。全身の構造が変化したことでルビーレーザーを発射することが可能となり、その威力はSF世界のレーザー兵器のような非現実的な域に達している。さらに切り離した尾を拡散プリズムとして利用し、雨のように複数のレーザーを同時に放つこともできる。ただし全身が精密機械のようなものなので連射すると熱膨張でしばらくレーザーが撃てなくなり、加えて発射前は高音が響くためにソナーも使えなくなるという欠点がある。伊織の指示を受けてレーザーで神官や巫女、警察関係者を殺害し、結界内に閉じ込めた湊たちをいたぶるように攻め続けるが、自身が作り出していたループで井戸が高さ無限の状態となっていたことに気づけず、真空を作る術で2時間かけて時速25万km以上に加速した2カラットのダイヤモンドを弾丸として撃ち込まれて胴体を真っ二つに砕くほどの重傷を負い、最後は不動明王の羂索で捕らえられ完全に消滅した。
倫寧(りんね)
サトリと人間の女性の間に生まれた少女。外見は7,8歳だが実年齢は不明。直接人の心を読むことはできないが、触れた物から間接的に思念を読み取るいわゆるサイコメトリー能力を持つ。そのため、より強い残留思念を持つ物に触れると読み取りに失敗してしまう。当初この能力はサトリの血が薄まったことで生まれた亜種だと考えられていたが、サトリ同士が果てのない思考の読み合いをすることを避けるための進化である可能性が示唆されている。サトリ同士が交配せずに人間と子をなすことも同様に成熟したサトリ同士が出会わないための対策であると考えられている。凶暴な父親を嫌い、自分を父から隠すかわりに『彼岸の会』で偽りの降臨術に協力していた。
『彼岸の会』の消滅後は行き場をなくし湊の事務所で引き取られかけたが、彼が自分の能力を違法ギャンブルに利用しようと考えていることを読み取ったため、沙耶の勧めで静の元でイタコの修行を積むことになる。
一緒に遊んでもらったことがあるためかユウキに非常に懐いており、彼の秘密は絶対に口にしない。沙耶からも可愛がられているが、自分が慕うユウキの恋心が彼女に向いていることもあって少々冷たい態度をとっている。
サトリ
件
生まれてすぐに必中かつ不吉な予言を行ってすぐに死亡する人頭牛の怪異。
その本質は科学的なものから人間の思考や行動に至るまで地球上のありとあらゆる現象を複合的に計算することのできる超複雑性シミュレータ。その計算をなすために件は発達した人間の脳を有し、さらに脳のほとんど全ての領域を常に活性化させることで完全な予言を行っている。また、脳のオーバーワークによる生命維持に不可欠な領域の圧迫が原因で起こる臓器不全と、データが不完全であるために起こる計算の誤差のリセットが不可欠なことが相まって件は短命であるが、再び誕生する際には以前の件の知識を継承する形で転生が行われる。この脆弱性も、自分が封印されるなどした場合も次の件として別の場所で転生するための武器として利用している。さらに、自分の言葉一つで減少を任意に変化させることができるため、たとえ怪異の存在を察知できたとしてもそのこと自体が計算に含まれているため結果的に件の予言は絶対に防ぐことができない。しかし、あくまで予測できるのは地球上の現象のみで、宇宙規模の現象は太陽や月、太陽系の惑星の運行程度しかシミュレートできないため、隕石などの地球外からの要因によって予言が外れる可能性はあるが、逆に言えば偶発的な天文学的現象を観測することでもない限り絶対に予言には抗えないということでもある。
10年前、浅野家で誕生した際は、その予言で友哉を死に追いやった。それから10年後、小野寺の死がきっかけで自分を追ってきた湊に「4つの災いの後死亡する」と予言する。湊を追い詰めるが、4つ目の災いが起こる直前に彼に同行していた沙耶が偶然流星を観測したことで湊は死を免れる。予言から解放された湊の指示で脳梁を外科的に切断され、2つの人格が生じ、果てのない読み合いの末脳の処理が追いつかなくなって死亡する。その後転生するも、2分化された意識も継続されたことで「件の予言は外れる」というパラドックスを永遠に続けるだけの存在となった。
七人ミサキ
四国や中国地方に多く目撃される怪異。7体1組で出現し、7日ごとに人間を1人襲い、その人間を仲間に取り込む代わりにだれか1人が成仏するという習性を持つ。姿を見ただけで殺すという危険な特性を持つが、僧侶が複数いれば難なく消滅させられるためそれほど驚異的な存在とはされていない。ただし、数が非常に多く、全体で年間1000人を超える被害者を出すと推定され、行方不明や失踪の一部はこの怪異によるものとも言われており、一説には2000人以上の被害を出しているという。
1人当たり49日で成仏するという厳格なルールのもとに行動する。そのため、法力僧の祈祷などで群の個体数が減少すると上限が減少後の数に固定され出現頻度が変化する(例えば5人ミサキになれば9.8日=約10日ごとに1人を殺害するようになる)。詳細は不明だが、狙われる人間には一定の条件があるとみられている。また、湊によって、「かつては7以外の数のミサキもいた可能性があるが、生存競争によってもっともこのシステムに適した7人だけが生き残りそれ以外のミサキは絶滅した」という仮説が立てられた。
かつては七人ミサキを完全に消滅させることでその被害を減らす努力をしていたが、湊の発案であえて何体かのミサキを残しておくことで生存競争を誘発させその個体数を減少させるという方法がとられた結果、わずか3年で被害者数が約4分の1にまで減少した。
ターボ
谷地村に住む化け狸。まだ幼いころに父母を御蔭神道の手の者に殺され、自身も命を狙われていたところを宗一郎に助けられ、それ以降彼と共に暮らしていた。変化の能力を持つが不完全で、極度の集中による副作用でくしゃみを多発してしまう。人の言葉をある程度理解できるほど高度な知能を持つが、怪異としての力は弱くほとんど普通の狸と変わらない。自分のことを獰猛な獣だと思っているが、可愛らしい外見で少々間の抜けたところがあるため初見で怯えられることは皆無。
村民消失の謎を解きに来た湊たちの前に現れ、前述の経緯から霊力・法力を持つ子供2人を警戒する一方で、ただの人間である湊に懐く。種まきの形跡がないこと、全ての人間の筆跡が全く同じであること、20年間埋葬の形跡が一切ないことなどの違和感から、湊が導き出した集団神隠しの真相は「20年前の土石流で宗一郎を除く村人全員がすでに死亡しており、時計の付喪神の力を借りてターボが20年ごと(土石流の直後〜宗一郎の死の1日後)に時間遡行し、総勢309名の村人全員に化けていた」というものだった。湊たちが出会ったターボこそがこれからまさに初めて時間遡行しようとする最初の1体であり、そのことを湊の口から聞いたことでかつて命を救ってくれた宗一郎を20年間悲しませないために時間遡行する決意を固めて旅立つ。それから宗一郎を完全に化かしぬき、優に6,000年を超える時間の旅を終え、彼の家の軒下で静かに息を引き取った。
有耶無耶(うやむや)/有(ゆう)
人間と交配する怪異の血を引く人間である一一と白銀スズの間に生まれ、人間では劣性形質となる因子を発現した史上初の怪異同士のハイブリッド。大蛇と鬼の因子を持つ。父母が法力僧と巫女であるため、法力や霊力に対して高い耐性を持つ。
生まれた時は肉の塊にしか見えない状態だったが、時間経過によって目鼻が分かるような顔立ちに変化した。人間よりも移動速度は遅いが人一人を取り込んで余りある巨体になることができ、産まれたてとは思えないほど高い知能を持つ。母体がウイルスに感染していたことで、飛沫感染により人間を怪異に変化させるウイルスを保有していたため討伐対象とされたが、表向きは双子という形で生き残り「有」と名付けられた(名付け親は湊)。
怪異化ウイルスは弱毒性でしばらくすれば治るうえ感染力も低いが、湊の手で無限令のあぶり出しと敵戦力の低下、人を化け物と呼ぶ者たちを戒めるという3つの目的のために意図的に蔓延させられた。実は無限令によりダイダラボッチに対する戦力として作り出された怪異である。
ダイダラボッチ
国造りを行ったともされる巨人の姿をした神話上の怪異。
身長は2000mを超え、咆哮を目視してから音が届くまで数秒のタイムラグがあるほど。人間に比べれば動きは緩慢に映るが、規格外の巨体を持つため歩く速さは音速越えの約1100km/h、パンチの速さはマッハ4と軽く動くだけで衝撃波が発生する。火器や法力による強力な攻撃も痛痒すら感じさせず、手をついただけで複数名の法力僧が張った防御障壁をたやすく破るほど。好奇心があり、大きな物体に興味を示す。量子力学に基づく動きをするということが判明し、霊能力者が観測することで現実の存在となる。霊能力の過多によって実体化するかどうかが決まり、強力な霊能力者が観測者ならば1人でも実体化してしまうが、霊力が少ない者が観測者となるとダイダラボッチによっておこる被害の可能性だけが見られることとなる。その肉体は40桁近い数の原子から構成される単一の超高分子で構成される。
日本中の総本山および御蔭神道に属する霊能力者が集まる場所に出現し民間人を含め数百名単位での死傷者を出す。湊の策で観測者を減らすために総本山および御蔭神道の人々を一カ所に集めたうえで麻酔で眠らせたことで被害を制御され、観測者役の沙耶とユウキによって半年前に出現した淤能碁呂島の前におびき寄せられ、CERNから取り寄せた反物質を打ち込まれて肉体を構成する原子の一部が対消滅し、「神の奇跡」ともいうべき絶妙な分子のバランスが崩れたことで自壊した。
淤能碁呂島でもあるもう1体のダイダラボッチを探していたのではないかと推測されており、地形を変えるのも捜索の一環である可能性がある。
結鬼(ゆうき)
神虫(しんちゅう)
餓鬼(がき)
空怪(くうかい)
湊が提唱した「空気の怪異」。厳密には「生き物の感情に同調して怪異の形を作るもと」に相当するものとされ、原初の地球で様々な生命を生み出した有機物のプールにも例えられている。神仏の加護が強い、いわゆる「清浄な空間」以外のあらゆる場所に存在しているものの、そのせいで感覚が慣れてしまっているためよほど強力な霊能力者でなければ知覚すらできないとされる。自我があるのか不明で、基本的には人類にとって無害な存在。ただ、事故などで生じた脳腫瘍が原因で後天的に霊感に目覚めた人間の場合、空怪との同調で様々な怪異を周囲に生み出してしまう。このケースでは被害者が想いを維持するのが難しい上に拒絶の意識も持つことから出現した怪異もすぐに消えてしまい、加えて怪異の出現を知覚するのも困難なので事実確認が非常に難しい。一応信頼できる事例が2例確認されたため対処法も考案できる状態ではあるが、人類より昔から存在するかもしれないものを駆除したときの影響が測れないことから基本的に不干渉という扱いになり、同様の事例が発生した場合のみ対策を取るという方針になった。
既刊一覧
小説
- 葉山透(著) / kyo(イラスト) 『0能者ミナト』 アスキー・メディアワークス→KADOKAWA〈メディアワークス文庫〉、既刊11巻(2018年1月25日現在)
- 2011年2月25日発売、ISBN 978-4-04-870138-9
- 2011年6月25日発売、ISBN 978-4-04-870684-1
- 2011年12月26日発売、ISBN 978-4-04-886268-4
- 2012年7月25日発売、ISBN 978-4-04-886805-1
- 2012年12月25日発売、ISBN 978-4-04-891265-5
- 2013年7月25日発売、ISBN 978-4-04-891822-0
- 2014年1月25日発売、ISBN 978-4-04-866315-1
- 2014年8月23日発売、ISBN 978-4-04-866867-5
- 2015年9月24日発売、ISBN 978-4-04-865443-2
- 「ドラマCD付特装版」同日発売、ISBN 978-4-04-865444-9
- 2016年10月25日発売、ISBN 978-4-04-892493-1
- 2018年1月25日発売、ISBN 978-4-04-893668-2
- 「ドラマCD付特装版」同日発売、ISBN 978-4-04-865444-9
漫画
田倉トヲルによって漫画が連載されている。2011年9月から2012年12月までcomic B's-LOG エアレイドに掲載、2013年以降はB's-LOG COMICで連載された。
- 葉山透(原作) / kyo(キャラクター原案) / 田倉トヲル(作画) 『0能者ミナト』 エンターブレイン→KADOKAWA〈B's-LOG COMICS〉、全4巻
- 2012年7月25日発売、ISBN 978-4-04-728308-4
- 2013年7月25日発売、ISBN 978-4-04-729064-8
- 2014年8月25日発売、ISBN 978-4-04-729831-6
- 2015年9月24日発売、ISBN 978-4-04-730697-4