A君(17)の戦争
以下はWikipediaより引用
要約
『A君(17)の戦争』(エーくんじゅうななさいのせんそう)は、豪屋大介作のライトノベルである。富士見書房から刊行されている。
概要
現代の日本で生まれ育った何の取り柄もない少年が別の世界に召喚され、滅亡に瀕した国を救うために異種族の美少女たちを従えて活躍する。さらには世界そのものを創造する力を持った超越者が出現し、主人公は目の前の敵と戦うのと同時に、超越者との対決にも備えていかなければならなくなる。
こうしたあらすじは一見ステロタイプ的なライトファンタジー風の「ハーレムもの」のようだが、物語はそういったステロタイプ(作中の表現によれば「おファンタジア」)を適宜引用しては、それらを揶揄しつつ進行する。
戦闘は少数の勇者ではなく、多数の(つい最近まで普通の暮らしをしていた)兵士たちからなる軍隊によって行われる。「おファンタジア」な戦争では軽視されがちな兵站や戦争経済にまつわる問題も頻繁に描かれる。そして主人公の能力も個人的な武勇ではなく、作戦指揮や国家戦略といった部分でのみ発揮される。これらによって、あたかもファンタジー世界を舞台とした架空戦記であるかのようなストーリーが展開していく。なお、主人公の使命は「人族による侵略から魔族の国を守ること」である。
作中には建前上対象としているはずの読者(中高生)より10歳以上年長でなければ判らないような題材がしばしば紛れ込んでいる。
先述した「揶揄」の対象は「おファンタジア」のみならず、それらを愛好し、女性キャラクターに「萌え」の感情を抱いたり、同人誌を作ったり、設定の矛盾を見つけては悦に入ったりする「おたく」にも及ぶため、読者および作者にとってかなり自虐的な作品である。
登場勢力と主要登場人物
ブラントラント
主要な舞台となる世界。二つの太陽と四つの月がある。
魔王領
ブラントラントで唯一、魔族(魔物という表現は差別用語なので使われない)と人族が共存する国。千年ほど前から数十年おきに異世界の人族が現れ、魔王として治めてきた。代々の魔王によって導入された異世界の文物や制度、文化などは多少の時間差を置いてブラントラント全土に広まっている。公用語は歴代魔王によって伝えられた日本語。
小野寺剛士(おのでら ごうし)
本作の主人公。天抜高校2年4組。容姿も体力も人並み以下の17歳。少々卑屈でひねくれた部分もあるがごく普通の感性を持ち、それなりに正しく躾けられているので恩のある相手には可能な限り報いようとするし多少のことで他人を恨んだりはしないが、「高速怨念増殖炉」と形容される精神的に限界まで追いつめられた時のみ作動する特殊な思考回路を持ち、積み重なって限界を超えた怨みを晴らすためには手段を選ばない。次期魔王としてブラントラントに召喚され、現魔王の田中によって魔王領総帥に任命される。田中はまもなく戦闘中行方不明になるが、剛士は彼が戦死したとは認めず(事実生きていた)、魔王に即位せず総帥のまま魔王領の統治と戦争指導にあたる。
スフィア
田中和夫(たなか かずお)
アーシュラ・ガス・アルカード・ドラクール
リア・クァルトマイエル
ガス・クォルン
玉藻(たまも)
歴代の魔王
魔王となる者たちには以下のような共通点がある。
- 日本の天抜(現:天抜市)出身。
- その時々で魔王領が最も必要としている才能を持っている(元の世界では役に立たない才能だったり、本人もこちらに来るまで気づいていなかったりする)。
- 元の世界では神隠しに遭っても周囲にほとんど影響を与えない存在だった。
- その時の魔王には解決できない問題が発生すると次の魔王候補が出現し、円満に禅譲される。退位した元魔王たちはこちらの世界で得た伴侶と共に余生を送っている(魔族と仲の良い人間はほとんど年をとらないため、初代以下全員が健在)。
ランバルト王国
魔王領の東に隣接する人族至上主義の大国。とはいえ、かつては魔王領との国境地帯であるセントール平野に両国共同で入植地を拓こうとしたこともあった。ゴルソン大陸の中央に位置し、海に接していないため、貿易港を手に入れたいという経済的理由からも魔王領征服を図っている。
フェラール三世
シレイラ
ナサニア・トルガ・ゴローズ
コレバーン連合
ランバルトに隣接する国の一つ。国王の権威が弱く、大貴族たちと経済力のある臣民たちとの対立が続いている。証券市場が盛んで、魔王領・ランバルト双方の発行する戦時国債が人気商品となっている(貴族はランバルトの、臣民は魔王領の国債を買っている)。
フィラ・マレル
パライソ
魔王領、ランバルト両国の北に隣接する国。軍事的・経済的な力は小さいが、マスル教の総本山がある。礼拝はゴスペル・ロック風。
その他
朧野ほのか(おぼろの ほのか)
飯田(いいだ)
コミック版
『月刊ドラゴンエイジ』2007年11月号より『A君(17)の戦争 I, THE TYCOON?』のタイトルで連載開始。作画担当は松本規之。
単なる小説版のコミカライズではなく、原作の豪屋自身が書き下ろしたコミック版用のシナリオに基づいていて、多くのアレンジが入れられている。
書誌情報
後述する事情で1 - 8巻は新装刊されたが、ここで書いたISBNは旧版のもの。他に月刊ドラゴンマガジン2005年4月号と12月号に短編が掲載された。
- 『A君(17)の戦争』富士見書房〈富士見ファンタジア文庫〉
- 「まもるべきもの」2001年11月、ISBN 4-8291-1381-2
- 「かえらざるとき」2002年5月、ISBN 4-8291-1430-4
- 「たたかいのさだめ」2002年7月、ISBN 4-8291-1442-8
- 「かがやけるまぼろし」2002年11月、ISBN 4-8291-1478-9
- 「すすむべきみち」2003年5月、ISBN 4-8291-1516-5
- 「すべてはふるさとのために」2003年11月、ISBN 4-8291-1547-5
- 「はたすべきちかい」2004年4月、ISBN 4-8291-1607-2
- 「うしなうべきすべて」2005年4月、ISBN 4-8291-1699-4
- 「われらがすばらしきとき」2006年1月、ISBN 4-8291-1747-8
- 漫画化版『A君(17)の戦争 I, THE TYCOON?』富士見書房〈角川コミックス ドラゴンJr〉
- 2008年5月8日、ISBN 4-04-712550-4
- 2008年10月9日、ISBN 4-04-712572-5
備考
- 当初、表紙は伊東岳彦、挿絵は北野玲が手がけていたが、7巻で表紙も北野に交替した。さらに8巻から(北野が玲衣に改名したのと共に)画風が大きく変わり、既刊分もすべてイラストが差し替えられた新装版となった。
- ファンの中には豪屋大介の作風や文体が佐藤大輔と類似していると感じる者もおり、しばしば「両者は同一人物か否か」が話題となる。それを助長するかのように、4巻で剛士が放り込まれたもう一つの日本は『レッドサン ブラッククロス』の世界であった(公式には佐藤の許可を得て豪屋が借用したとされている)。豪屋大介(とされる)明らかに佐藤と別人の写真が公開される一方、佐藤側関係者のブログでの同一人物を匂わせる発言もあった。月刊ドラゴンエイジ2007年11月号のコミック版連載開始にあたり、同号に佐藤大輔からの応援メッセージが掲載された他、2017年3月に佐藤が死去したおりには作画の松本が「A君の戦争のコミカライズでお世話になり」とのツィートを行っている。