ADAMAS
題材:宝石,
以下はWikipediaより引用
要約
『ADAMAS』(アダマス)は、脚本:岡エリ、作画:皆川亮二による日本の漫画作品。「イブニング」(講談社)にて2007年8号より2014年18号まで不定期連載された。
タイトルのADAMASはダイヤモンドの語源で、「(何事にも)屈しない」「征服できない」という意味。
あらすじ
宝石の力を引き出して戦う『宝石使い(ジュエルマスター)』という特殊能力を持つ流崎麗華は、ダイヤモンドの力によって様々な宝石の力を借りて任務をこなし、裏の敵対組織からは「クリシュナ」と呼ばれ恐れられていた。行方不明の父を探しだし、謎の組織『シャニ』に奪われた「思い出の屋敷」を取り戻すため、表の仕事である近所の薬局店でのアルバイトと、『ヒーラー社』から依頼された裏の任務に精をだす。
やがて、シャニの施設から逃亡してきた「全てを見通す目」を持つエメラルドの宝石使い・エスメラルダと、インド人の血を引く「恐るべき怪力」を持つルビーの宝石使い・ヒロミが、麗華のアパートに転がり込んできて共同生活するようになる。
当初、ヒーラー社による「宝石市場の安定を損なう存在」と思われていたシャニであったが、シャニのトップであるジェネラル・ジンと交流するうちに、彼の人間性に麗華は惹かれていく。同時に、これまで正義だと思っていた依頼主のヒーラ社が、ダイヤモンド利権を牛耳るために買収を進め、新たなダイヤモンド鉱山を封印していることも知る。
シャニと敵対している『ウィルスン・グループ』を率いるニコライ・ルーシは、かつて孤児だったジェネラル・ジンとは幼馴染であり、一人だけ施設に引き取られた彼を裏切者と思い込んで復讐しようとしていた。
登場人物
主要人物
流崎麗華(りゅうざき れいか)
本作の主人公。シャニや宝石泥棒たちからは「クリシュナ」の名で恐れられている。21歳。
宝石使いという特殊能力の持ち主。鑑定用のルーペを使わずにダイヤモンドの鑑定機関のHRDと同じ鑑定結果を出し原産地まで当てるほどの鑑定眼を持ち、原産地の同じ宝石を持っていれば探したい人間の居場所もある程度サーチすることができる。
守護石はダイヤモンドで、ダイヤを所持する者の意思を支配したり、ダイヤモンドを触媒にあらゆる宝石の力を引き出すことができる(効果は専門の宝石使いには劣る)。身体能力も高く、特に腕力は大の男を次々と殴り倒すほど。戦闘の際には素手またはダイヤモンドを敷き詰めた特製のカイザーナックルを使う。
容姿は敵味方を問わず美人と評されるほどの美形でスタイルも悪くないが、美貌やグラマーの持ち主を僻んで、自分に自信を持てないこともある。宝石使いの能力から電波や変人呼ばわりされることが多く、本人はあまり能力について話したがらない。
宝石使いとしての任務をこなす一方、生活費を稼ぐためにマツシタキヨシという店でアルバイトをしている。シャニの陰謀により屋敷を奪われたことから、現在はかつての屋敷が見える古いアパートに住んでいる。二輪車の免許を取得しているようで、作中ではバイクを苦も無く取り回す描写も見られる。
当初はジンを父の敵と履き違え敵対していたが、ジンからの依頼や共闘を重ねる内に徐々にジンに惹かれていく。そしてタイで彼のプロポーズを受け入れ婚約者となるが、結婚指輪を渡す直前にジンはニコライらに敗れ拉致されてしまう。紆余曲折の果てにジンが生きていることを知ったレイカは、仕事を辞めて世界へと旅立つ事を決意する。
エスメラルダ・ランジェ
シャニ
ジェネラル・ジン(アレクサンドル・ジン・ロマノフ)
シャニの宝石使いでもナンバーワンと称される男性。
「王者の石」と自称するアレクサンドライトの宝石使いで、指には希少価値の非常に高い「キャッツアイ」の現れたアレクサンドライトの指輪をはめている。
アレクサンドライトの宝石使いの能力として、X線、紫外線などを含めたあらゆる電磁波の操作を可能としており、それによって電磁波が影響を及ぼすものはすべて、人の体調でさえも狂わせる事ができる。他の宝石使いとは一線を画す能力を見せ付ける。
物語当初はレイカ達の敵対者としての側面が強調されていたが、時には共闘し、時には依頼を持ちかけたりと、単なる敵役には収まらない一面も垣間見せる。物語中盤からは明確にレイカにアプローチするようになり、ついにはプロポーズが受け入れられレイカの婚約者となった。
本名はアレクサンドル・ジン・ロマノフと言い、ロマノフ王家の末裔であるかのような事が作中で示唆されている。ソビエト連邦のカラバ社の宝石使い育成施設でニコライらと出会い、ソ連崩壊によってカラバ社が解体された際はそのリーダーシップで仲間を率いて施設を脱出、近くの町でストリートチルドレンのリーダーとして過ごしていた所を20年前にシャニに引き取られた。だが、ヒーラ社の妨害によって仲間のニコライたちは見捨てられて置き去りにされ、仇敵同士となってしまう。
その因縁から20年ぶりにニコライと対峙。そして敗れて拉致され、行方不明となる。その凶報を聞いたレイカはジンへの想いに気づき、彼を捜すために仕事を辞める。
サエコ・ミレイ(チャンツィ)
ジェイキンズ
ウィルスン・グループ
ニコライ・ルーシ
三賢人
マリー・ランジェ
エスメラルダの母親。上品でおっとりした性格だが、エスメラルダが常識人に思えるほど世間知らずなところがある。また、いつでもどこでもすぐ眠ってしまう。一時は流崎好夫と共に行動していたが、「好夫ちゃんの元気がよすぎて」はぐれてしまい、レイカたちのアパートに転がり込む。テレパシーないしは予知能力を持ち、それを駆使した占いが得意。
三賢人と呼ばれる宝石使いの1人で、彼らの中では最年長。同じく三賢人である流崎好夫の勧めで孤児だったエスメラルダを育てた。
水晶の宝石使いで、水晶を通して「水とお友達になる」ことで、水が関わるものはすべて操作できる。その力は空気中に散布された化学兵器をただの霧に変え、犠牲者の体内を浄化して蘇生させるほどで、本人いわく「美容や老化防止にもいい」とのこと。
かつてはフランス王妃として夫や子宝にも恵まれ何不自由ない生活を送っていたが、老いと美貌を失う事だけを恐れ毎日水晶にお願いをしていた。その甲斐あって長年美貌を保っていたが、やがてフランス革命が勃発し夫や子と共に牢獄に幽閉されてしまう。しかし水晶使いの能力で病人を幾人か治したことで、マリーだけは替え玉とすり替えられて牢獄を脱出したが、夫と子供は取り残されそのまま処刑されてしまった。絶望した彼女は川に身を投げ後追い自殺を図るも、十数年間毎日水晶の力を使い続けていた結果、不老不死となってしまっていた。
その後シャニを立ち上げたラッキーやウォンらと出会い、シャニに身を寄せていた。シャニを離れた後は一時レイカのアパートの隣に住み込んでいたが、ラッキーが不老不死から解放される手段を見つけたことでエジプトへ向かう決意を決め、別れ際にエスメラルダにトラピッチェ・エメラルドを託した。
溝口正之(みぞぐち まさゆき)(ウォン・ミュンヘン)
流崎家の執事。眼鏡を掛けた老紳士。流崎家が没落しても麗華に仕えて麗華を「お嬢様」と呼んでいる。麗華のバイト先にはリムジンで出迎えることもあるが麗華は周りの目を気にしてあまりよく思っていない。
麗華の任務は溝口が交渉人となり黒いスーツに黒いサングラスにかけた男から斡旋してもらっている。
三賢人と呼ばれる宝石使いの1人で、ヒーラ社の創設者。だが本人の意思とは裏腹にヒーラ社が力づくでダイヤ市場の独占に走った為、同じく三賢人である流崎好夫と共にシャニを創設した。
オパールの宝石使いで、絵の具の顔料に入っている鉱石の力で絵のモデルとなった人物の思念を取り込む事が出来る。モデルが死ねば絵の中の人物の表情も凡庸なものになり、絵画としては実質的に「死」んでしまう。
元々は売れない凡才の画家であったが、質屋の娘と結婚し妻の家業を継いで平穏に暮らしていた。だがある日友人が質に売りに出してきたブラックオパール製の絵筆の魔力に取り付かれ、趣味程度に抑えていた絵画への情熱が爆発し、質屋よりも画家の方を本業とするほどにのめり込んだ。結果成功をおさめたが、絵筆の為すがままに絵画を描き続けた結果、50歳で時が止まってしまった。妻の死後は屋敷を含む財産を全て売り払いアフリカに移住、後にラッキー・ロークと出会うこととなる。
シャニを立ち上げた後は溝口正之として流崎好夫(ラッキー)のサポートを行いつつ、かつて自分が描いた絵の浄化に努めていた。
そして不老不死を狙うニコライに他の二人とともに拉致され、不老不死になる方法を教えるよう強要されるが、「自分たちは死なないのではなく『死ねない』のだ。宝石の力を使いすぎた副作用で、まさに『石のように固まって』しまい、変化も成長も進歩も、そして老化もできない。永遠にこのままなのだ」という衝撃の真実を告げる。
流崎好夫(りゅうざき よしお)(ラッキー・ローク)
流崎麗華の父。流崎家が没落した2年前から失踪中。麗華の能力に早いうちから気づきその能力を伸ばすためにあらゆる出資を惜しまなかった。シャニに軟禁されていたマリー達に接触し、逃走したマリーと共に行動していた。
三賢人の1人で、彼らの中では最も若い。1876年に一攫千金を求め、当時ダイヤモンド採掘が盛んだったアフリカのキンバリーに移住し、そこでウォン・ミュンヘンと出会った。
黄金(ゴールド)の宝石使いで、金脈を探し当てる能力に加え接した人間の心を和ませることが出来る。日本人の妻がいたが死別、忘れ形見である娘のレイカ(流崎麗華とは別人)を溺愛していた。
しかしあまりにも目立つ稼ぎ方をした為に貧困に喘ぐ採掘者達によって身代金目的でレイカを拉致されてしまい、結局レイカは採掘者達の仲間割れに巻き込まれ命を失ってしまった。
失意の中でキンバリーから貧困を無くし秩序を作る為にウォンと共にヒーラ社を立ち上げ、持ち前の能力と財力を使い雇用の安定と土地の一体化をすすめる傍ら、金脈の探索やインフラ整備にも力を注ぎ数年でヒーラ社は南アフリカ随一のダイヤ企業に成長した。しかし巨大な力をつけたヒーラ社は彼らにも制御しきれなくなり、ウォンがヒーラ社を去ってから間もなくボーア戦争を勃発させてしまう。英国軍のフィリップ・ウィルスン2世に救助されたものの自分の愚かさを悟り荒野で自殺を試みたが、既に宝石使いの能力多用の副作用で不老不死になってしまっており、駆けつけたウォンに諭され、共にヒーラ社の暴走を止める為に第2の人生を歩む事を決めた。
その後は流崎好夫と名乗りシャニの会長をしていたが、ジンに会社を任せた後はアダマンタイトを求めて世界中を放浪していた。レイカとは血の繋がりは無いが、娘への愛情は本物。ジンにレイカのサポートを託したのも、ジンとレイカなら上手く行くという彼の思惑があったからである。
その他
フィリップ・ウィルスン二世
プタハ
用語
宝石使い(ジュエルマスター)
元々人間が本来持っている能力であり、相性のいい宝石さえ分かれば誰しもが宝石使いになれるらしいが、素質の高くない者は相当な訓練と時間を要しなければ能力が発現しないらしい。
以下は宝石の効果の一例。
ダイヤモンド - 所持している者をマインドコントロールする。所持していなくても鉱床などの場所であれば周囲の人間をまとめて支配することが可能。
エメラルド - 視力を高め、千里眼を使うことが可能になる。
セレスタイト - 念や魂を浄化する。
アメシスト - 一升瓶を飲み干しても大丈夫なほどアルコールに強くなる。
サファイア - 人体の治癒力や回復力を促進させる。
流崎家(りゅうざきけ)
現在はシャニの陰謀によりリムジンと何点かの家宝を麗華に残し没落。屋敷はシャニの関連会社の所有物となっている。
ヒーラ社
ウォンのダイヤモンド市場を安定させるようにとの言い伝えに対して横暴なやり方で市場を独占した為、ウォンには対抗勢力としてシャニを創設され、かつて自分達が一度潰したウィルスングループにも牙を向かれるなど、現在は影響力に陰りが生じている。
麗華の主な依頼主だが、必ずしも正義の組織ではない。
シャニ
ウィルスングループ
フィリップは1940年代に世界最大級のダイヤモンド鉱床を発見、企業を立ち上げダイヤ市場の支配を目論んだが、既に市場を独占していたヒーラ社によって圧力を掛けられ、一度潰された過去がある。ヒーラ社に激しい恨みを持ったフィリップは自らの怨念をダイヤモンドに封じ、そのダイヤを見た人間を意のままに操る「ウィルスンの呪いのダイヤ」を数多く遺した。
怨敵かつ、業界の支配者であるヒーラ社が築いた宝石市場の破壊と再生、市場の支配を目論んでおり、臓器密売や違法薬物など裏社会にも影響力がある。
カラバ社
ソビエト連邦の崩壊の混乱に乗じてヒーラ社に解体されてしまい、作中の現在は存在していない。
三賢人
宝石使いの力を過剰に使いすぎた事で老いることも死ぬことも成長することも無くなり、まさに石のように不変の存在と成り果ててしまった。
廃れていた宝石使いの能力を復活させた事で宝石業界の争いを招いてしまった事や不老不死という呪いから解放される為に、伝説のアダマンタイトを探し出そうとしていた。
アダマンタイト
ダイヤモンドの語源となる以前は、この石が「アダマス」と呼ばれていた。
注釈
単行本
岡エリ(脚本)皆川亮二(作画)『ADAMAS』講談社、イブニングKC、全11巻