AZUMI (漫画)
漫画
作者:小山ゆう,
出版社:小学館,
掲載誌:ビッグコミックスペリオール,
レーベル:ビッグコミックス,
発表期間:2009年,2014年,
巻数:全18巻,
話数:125話,
以下はWikipediaより引用
要約
『AZUMI』(アズミ)は、小山ゆうによる日本の漫画。同作者の漫画『あずみ』の続編にあたる。
概要
『ビッグコミックスペリオール』(小学館)にて、2009年1月9日から2014年2月28日まで連載された。
前作は「第1部・完」として終了しているが、本作品はその「第2部」なわけではなく、パラレルワールドの物語と作者の小山は述べている。
舞台は江戸時代初期であった前作に対して幕末へと変わり、従って主人公・あずみは前作の主人公とは、年齢や容姿や生い立ちなどの設定はよく似ているものの別人であると思われ、小山も2人のあずみは切り離して考えていると述べている。
豪商三井が抱える凄腕の女刺客・あずみとその双子の兄妹で御家人の向駿介の二人を通して幕末期の動乱を描いた内容となっている。
小山の作画(原作は武田鉄矢)による幕末を舞台にした旧作『お〜い!竜馬』とのクロスオーバー作品となっており、幕末の偉人たちが多数登場する。小山は、『お〜い!竜馬』で描いたことと矛盾しない方向で話をすすめていることを、MAG・ネット内で語っている。ただし、武田鉄矢は本作品には原作として関わっておらず、あくまで小山のオリジナル作品である。『お〜い!竜馬』と同じく階級社会の理不尽さが根底の一つに描かれている。
2015年に『AZUMI 幕末編』として舞台化。
あらすじ
時は幕末。桜田門外の変で大老・井伊直弼を人ごみに紛れて1人の刺客が討ち取った。凄腕の刺客「あずみ」である。次第に世の中が荒れてくる中、貧しいながらも穏やかに暮らしてる家族がいた。その家族の長男の名は向駿介。彼こそ、幼いころに向家に養子に出されたあずみの双子の兄である。駿介と出会い、刺客として人を殺めることばかりを考えて生きてきたあずみは、彼の家族と交わっていくことで生き甲斐というものを見出していく。
登場人物
主人公
あずみ
本作品の主人公。豪商三井が擁する凄腕の美少女刺客。桜田門外の変で大老井伊直弼を暗殺し、前水戸藩主徳川斉昭も彼女が暗殺した。彼女も前作『あずみ』のあずみ同様、幼きころより刺客としての純粋培養で鍛え上げられて育てられ、超人的な俊敏さと武術の腕を持つ作中で最強の存在である。
顔立ちは前作とほぼ同じで髪型も同じポニーテールだが、前髪を分けている点が異なる。スタイルのいい美女だが処女であり、前作同様色仕掛けで敵を倒すことはなく、男も太刀打ちできない卓絶した武術だけで敵を倒していく。
普段は着物の上に袴を履いて大小二本差した男性の武士のような格好をしているが(男装時は女のように綺麗な顔立ちだとして小姓とよく間違われ、声を聞いて女と気づく者が多い)、その下に黒いレザーベストと紫のノースリーブの上衣に青い短パンという腕と脚が丸出しの戦闘服を着こんでおり、任務中は着物と袴を脱いでその姿で行動する。戦闘服姿では小刀は差さず、大刀のみ腰に差している。前作で使用していた双頭刃の刀や手裏剣は使用しなくなり、通常の刀と戦闘服の足具に取り付けている針と寸鉄を主な武器にしている。大勢の敵を斬り伏せる時には刀を使用し、気絶させるときは寸鉄を使用し、標的は針で額を突いて脳の中心を貫くことで苦しませずに即死させることが多い。
幼いころからの鍛錬により武術以外も刺客に必要な能力は全てが卓越している。一度見ただけで建物の構造や地理を記憶・把握して地図に書くことができ、医術や薬草の知識も豊富で背中以外の負傷は独力で治療可能であり、あらゆる毒の知識を有し毒味する癖を付けているので毒が入っているとすぐに気づく。間諜する際の演技の訓練も受けている。周囲を注意深く見聞きすることを半ば無意識に行うことができ、作中では護衛の移動の時間を計って隠し通路があることに気づいたり、敵の間諜を容易に発見したりしている。桂小五郎も驚いて「完璧な刺客」と唸った。
井伊暗殺後に双子の駿介の存在を三井から知らされる。闇の世界でしか生きられず、夢を持つことが許されない自分の代わりに駿介が陽の当たる世界で上を目指して生きてくれることを生き甲斐にするようになる。駿介とどちらが先に生まれたかは不明だが、本人は自分が姉だと言い張っている。駿介はあずみを妹と紹介するので駿介の周囲には妹として通っている。夢を託す駿介を何より大事に思っているが、自分の分身と見なす彼への接し方は遠慮がなく頻繁に蹴ったり投げ飛ばしたり関節技や締め技をかけたりする。こうした駿介との関係のために前作よりややコミカルな印象を受ける性格になっている。
刺客であることを駿介に隠しており、駿介があずみの正体を尋ねようとすると力ずくで黙らせるのがお約束になっている。駿介には自分が強い理由について「養子先の兄が武術の達人で習っていたから」と説明しており、人間離れした強さは見せないよう努めている。またあずみが凄腕の刺客であることを知る坂本竜馬や桂小五郎などには駿介に言わないでほしいと頼み込んでいる。最終的には刺客たちを斬り伏せている姿を駿介に目撃されて発覚してしまうが、駿介は妹が刺客であることを嫌がらなかったので、2人の関係はその後もあまり変わらなかった。
前作同様親しくなった者や弱い者が目の前で苦しんでいるのを見ると放っておけない優しい性格であり、それを利用しようとした滝沢や服部家の兵士たちから「そういう女」と表現される。
前作同様周りが男の子ばかりの環境の中で育ったので一人称は「俺」である。
代わりになる者など存在しえない最強刺客なので三井は彼女の願いに対してはかなりの便宜を図る。駿介が全く縁のなかった勝麟太郎の弟子になれたのも彼女が駿介に出世の道を開いてほしいと願ったからであり、また使命と関係ないのに三井の探索方に駿介や向家の動向を見張ってもらっており、何かあれば会いに行ったり駆けつけられるようにしている。駿介もあずみがなぜ自分のいる場所が分かるのか不思議に思うことがあった。
故郷は前作でもあずみが訪れていた安曇野の異人たちの血を受け継ぐ者たちの隠れ里とのことだが、前作のあずみとの関係は不明。前作のあずみは片親が異人(ハーフ)という設定で碧眼・栗毛・白い肌という外見上の特殊性を作中でよく指摘されていたが、本作品のあずみは異人との血の繋がりがどの程度か不明で、外見上の特殊性を指摘される描写もない(双子の駿介も同様)。
前作本作品共通してあずみは自身が夢を持てないために夢を持つ男性に惹かれる。本作品では新しい時代への夢を語る坂本竜馬に恋心を抱くようになり、初体験を彼との間で持ちたがっていたが、結局実現しなかった。
竜馬暗殺後、駿介の前に姿を見せなくなり消息を絶つ。明治以降の動向については不明だが、駿介の屋敷を襲撃しようと企てた元旗本の室田たちが全員額に穴を開けられた死体になって転がっていたり、散歩をしていた駿介が何者かの気配を感じるなど、近くから駿介を見守っていることが窺える描写がある。
向 駿介(むかい しゅんすけ)
もう一人の主人公という位置づけで、本作品の語り部も担っている。あずみの双子の兄だが、幼いころに体が弱かったため、刺客として厳しく育てるのは無理だということで御家人の向家の跡取りとして養子に出されていた。養子ということ自体は本人も知っていたが、どこで生まれたかや双子の妹がいることは知らず、あずみに聞かされて初めて知った。
御家人なので滝沢家などの旗本から理不尽な目に合わされる日々を送っている。当初はそれに諦観して向家代々の馬預配下のお役目を恙無く全うできればいいと考えていたが、あずみは駿介に陽の当たる世界で出世してほしいと願っており、彼女の願いを聞き届けた三井の口添えで勝麟太郎の弟子になった。それをきっかけに向上心が出てきて英語を学んで通訳として活躍するようになった。
坂本竜馬に命を救われてからは竜馬に心酔し彼の影響を受けて志士として活動するようになる。しかし剣や武術の腕は平凡であずみとは比べるべくもないので、あずみは駿介の身を案じ、命をかけるような状況に身を置かず、この時代を何が何でも生き延びるよう繰り返し言っている。しかし終盤には志士としての決意を強くし、あずみに背負投、逆エビ固め、ヘッドロック、馬乗りにされて連続ビンタを浴びせかけられても簡単には引き下がらなくなった。
あずみが強いことは兄妹喧嘩しても勝てないことから序盤から知っていたが、人間離れした強さであることを知ったのは彼が京都見廻組に捕縛された際に救出に現れたあずみが信じがたい俊敏さで大勢の隊士たちを次々と打ち倒していく光景を見た時であり、刺客であることを知ったのは西郷吉之助や大久保一蔵と同席した際に襲撃してきた幕府刺客団を彼女が一人で斬り伏せていく姿を目撃し(あずみは駿介にばれないよう覆面をしていたが、戦いの途中に取れてしまった)、後日お駒から説明を受けた時である。駿介は妹が刺客であると知って嫌がるどころか尊敬すらしていたが、駿介に命がけの行動をしてほしくないあずみは駿介が自分に憧れたり触発されるのを嫌がっている様子だった。
あずみの双子の兄だけに顔立ちはかなり端正である。またかなりの長身で、新撰組など駿介の命を狙う勢力からも特徴として「背の高い男」という認識をよくされている。
明治4年や5年段階では、明治政府の高官にまで出世しており、西郷隆盛から絶大な信頼を得ている。使用人も複数いる立派な屋敷で両親と共に暮らしているが、妻や子供は登場していないことから未婚のままと思われる。竜馬暗殺以来、姿を見せなくなったあずみのことを案じ続けている。
向家
向 甚平(むかい じんぺい)
30俵2人扶持の御家人。駿介の養父。馬預配下で厩や馬具の管理修理点検にあたるお役目に付いている。内職しなければ食っていかれない貧乏御家人だが、心優しい人物で駿介から尊敬されている。あずみともすぐに親しくなった。娘の志乃をめぐる旗本の滝沢家との確執で滝沢家から執拗にいじめられる。物語の途中では幕府によってあずみを誘き出すための囮として淑ともども滝沢邸の前で晒し者にされた。釈放後もお役目と家禄を召し上げられ、内職も組屋敷ごとに行うため他の御家人たちから排除されてできなくなり収入源が無くなった。滝沢家にいじめるための下働きとして雇われ、それに耐え抜く日々を送った。そのような悲惨な扱いばかり受けてきたにもかかわらず、終盤では武士の生き方を貫きたいと駿介の制止を振り切り、徳川家への忠義のため死を覚悟して上野の彰義隊に参加しようとしたが、甚平を死なせたくなかったあずみに気絶させられ阻止された。そのため明治4年5年の段階でも存命しており、駿介の成功のおかげで立派な屋敷で暮らしているが、江戸を去っていった他の幕臣たちから裏切り者扱いされて付き合いを狭くして家に籠りがちになって気の毒だと駿介が心配していた。最終話では家族での散歩中に犬を拾い向家で育てることにした。
志乃(しの)
甚平と淑の娘。駿介の義理の姉。御家人の菅野宗一郎とともに寺で塾を開いている。駿介の姉を自負するあずみは当初彼女に複雑な思いであったようだが、すぐに打ち解けて親しくなった。菅野と結婚するつもりであったが、美人であることから旗本の滝沢家の長男虎彦に片思いを寄せられ、それをきっかけに滝沢家の次男欣也とその取り巻きの旗本たちによって菅野とともに拉致監禁された。菅野を痛めつけられたくなければ輪姦させるよう欣也らに強要され、最後は自害に追いやられた。その後菅野も惨殺された。向家は仇討ちのため欣也らを斬って沙汰を待たず自刃する決意を固めたが、それを恐れたあずみが向家を守るため欣也らを暗殺した。志乃の非業の最期はその後も駿介の心に重くのし掛かり、勝麟太郎や坂本竜馬などに感化されたのを経て国の有り様を変えねばならないと志士の道に進むきっかけとなる。
駿介の祖父
甚平の父。駿介の養祖父。35年に渡って向家代々の馬預かり配下のお役目を慎ましく勤めて隠居した。だいぶ高齢で呆けているが、時々呆けがなおって正気に戻る。陰茎のある部分を指差しながら「おっこり、もっこり、こりゃ、どーだや、ほい」という甚平や駿介にも受け継がれている向家の男性たちの一発芸は彼に始まるようである。あずみを志乃と間違えることが多いが、あずみを認識できている時もある。幕府によって向家があずみを誘き出す囮に使われた際には一人で組屋敷に取り残され、あずみが連れ出して保護した。自責の念に駆られて眠れなくなっていたあずみは彼に抱擁されながらようやく眠れた。後に呆けが進んで徘徊癖がひどくなり、慶応3年1月に淑が転た寝してた際に家の外に出てしまい、溝に転落して死亡。その時甚平は滝沢家で下働きとして働かされており、あずみが滝沢家と掛け合って甚平の休暇をもらった。
三井
あずみの師と一緒に育った仲間
角倉 鉄心(かどくら てっしん)
あずみを刺客として育てあげた師。あずみ、猪一、康平は「角倉先生」と呼んでいる。松平春嶽によれば武術、医学、地学あらゆる分野に精通した者だったという。あずみを含む5人の子供を刺客として育てたが、厳しすぎる訓練を課したため、刺客として完成されたのはあずみだけで他の4人は犠牲になってしまった。猪一と康平以外の2人善太と弁ノ助が具体的にどうなったか言及はないが、あずみ、猪一、康平の3人で2つの位牌を拝んでいるシーンがあるので訓練中に落命したと思われる。死の床であずみに対して、彼女が奇跡のような天分を開花させ4人の犠牲をもって余りある戦士に育ってくれたことを感謝しつつ、その力を使って使命以外の私事の感情で人を殺めないよう厳しく言いつけた。
前作の師匠の小幡月斎は周囲に強さを知られると自分の身に危険が迫るから無闇に力を見せるなと教えたが、本作品の鉄心は道義的にそれを教え、もし私事の感情で人を殺めた時は罪人に成り果てると教えていた。そのためか、前作のあずみは親しい者が理不尽に殺されると怒りや復讐心が制御できなくなって殺した集団を皆殺しにしてしまうことがしばしばあったのに対し、本作品のあずみは自制心が強めで使命と護身以外での力の行使には抑制的である。滝沢欣也らに志乃や菅野が殺された時も復讐したいと憤りつつも門倉の教えを反芻して自身の復讐心は抑え込み、駿介にも仇討ちを断念するよう再三説得にあたっている。結局向家が自刃覚悟の仇討ちを決意してしまったので向家を守るために欣也らを殺したが、あずみは教えに反して手を汚してしまったことを悩んでいた。
猪一(いいち)
あずみとともに幼いころから武術の訓練を受けて育ったが、厳しい修行の中で片目を失い、体がすくんで動けなくなってしまう発作が起きるようになったため、刺客として未完成のまま脱落した。ただ康平と違い、全く動けない身体ではないので発作が起きなければ手練である。康平以上にあずみの理解者であり、角倉の教えに反して滝沢欣也らを討つと決めた彼女に反対せず欣也らの行動を調べたり、欣也らの死体を処理するなどして協力した。三井は刺客として使えない猪一と康平のことも養い続けているが、あずみにばかり使命をやらせ、自分は何の役にも立てず、ただ飯食らいであることを気にかけており、あずみが命じられる予定だった清河八郎暗殺を志願して請け負ったが、沢木圭次郎が清河の護衛についていたことに動揺し、あずみの弟の親友を斬るわけにはいかないと圭次郎とつばぜり合いしている間に清河に斬られた。その後あずみが清河を斬って仇を取った。
駿介の幼馴染み
沢木圭次郎(さわき けいじろう)
駿介の幼馴染の御家人。駿介や源之丞とともに滝沢欣也ら旗本に殴られ蹴られてはいじめられる日々を送る。志乃や菅野が欣也らに殺害された際には激しく憤り、駿介とともに欣也ら4人の旗本の闇討ちを狙ったが、2対4で全員を殺せる方法が思い付かず、決行に至らなかった。その後向家が闇討ちではなく自刃とお家取り潰し覚悟で欣也一人だけでも斬るという仇討ちを決意したので駿介と甚平から関わらないよう説得を受け承知したが内心では向家が討ち漏らした旗本を代わりに斬る覚悟だった。その後あずみに殺された欣也ら4人の旗本の死体を発見して驚き、向家にそれを伝えて現場に近づかないよう説得した。その後千葉道場に通うようになり、清河八郎に心酔して京都に行き彼に従っていた。清河の死後は京都見廻組に入ったが、旗本の室田らにいじめられて追われ、身分を問わない浪士集団の新撰組に惹かれてその隊士となり、そこでの倒幕派斬りの活動にやりがいを感じていたが、やがて局長近藤勇と副長土方歳三から駿介の抹殺を命じられた。苦悩しながらも駿介を斬る決意を固めたが、駿介追跡中に駿介と間違えて想いを寄せていたはなを殺してしまい失意に落ちる。その後はなの墓前で駿介と遭遇して戦闘になり、駿介の刀を叩き落として勝利するも、幼いころからの駿介との思い出が脳裏をかすめトドメを刺せず見逃した。その一部始終を先に駿介と戦って気絶させられたと思われた後輩の寿三郎に見られ、その場では誰にも言わないと言っていたものの近藤に密告され、倒幕派を見逃したとして切腹させられた。明治になった後、駿介は夜空を見上げて死んでいった幼馴染みの圭次郎と源之丞のことを思い返していた。
勝麟太郎周辺
真帆(まほ)
勝麟太郎が向駿介と段啄平に英会話を学ばせるために、教師として選んだ美女。麟太郎の愛人の1人。横浜貿易商の娘だったが、異人たちとねんごろになり過ぎたという噂が広がったため、周囲からの誹謗中傷の嵐にさらされ、親元を勘当された。叔父のもとにいたところ、英語を話せる人を探していた麟太郎と出会う。教師をしているうちに駿介と恋に落ち、逢瀬を重ねる関係になった。しかし駿介が勝のお供で京へ行くことになった際に別れることになった。あずみは彼女と会って話をしたことはないが(勝や彼女や駿介が乗る屋形船が刺客団に襲撃された時あずみが覆面をして乗り込んで刺客たちを斬り伏せたことがあり、その時に目撃はしている)、駿介が色ボケして顔に締りがなくなったことや、駿介の帰りが遅くなって甚平や淑に心配をかけていたことから、彼女にあまりいい印象がなかったようで、2人が別れることになった際には嬉しそうだった。
服部家・桑名藩
服部半蔵正綏(はっとり はんぞう まさやす)
伝説の忍の服部半蔵の子孫で、桑名藩で代々家老職を世襲する服部家の前当主。息子の服部半蔵正義に家督と家老職を譲って、自身は孤児たちを山奥に集め、服部一族の武術を継承させるべく特訓し、兵士を育てている。その兵士たちを次々とあずみ抹殺の刺客として送り込む。冷酷非情な性格で、訓練中に足を折って兵士になれない体になった子供の命を絶つよう命じ、また、幼い子供に爆弾を持たせ自爆させてあずみを殺そうとするなど、目的のためには手段を選ばない。正綏自身の戦闘能力はそこまで高くは無いようで、あずみに一対一で戦わざるを得ない状況に持ち込まれて戦うも、刀を抜いた瞬間にあずみに右腕を斬り飛ばされ、間髪入れず膝を付かされて額を針で突かれてあっけなく死亡した。ただしあずみは作中最強のキャラであり、あずみ以外の者とは戦うシーンがないので全体としてどのぐらいの強さにあったのかは不明。なお前作にも先祖の服部半蔵正重が登場しているが、彼も強さはそれなりという程度であずみとは比べるべくもなかった。
服部半蔵正義(はっとり はんぞう まさよし)
桑名藩の藩政を実質的に掌握している桑名藩家老。正綏の息子で父から早くに家督と家老職を譲られた。自信家で、父同様冷酷非情な性格であり、勤王倒幕派であるという疑いをもった部下の藩士は容赦なく処刑・惨殺させ、また訓練中に足を折って服部家の兵士になれる見込みが無くなった子供を殺害した。父とともにあずみの命を狙っているが、彼も自身の戦闘力はさほど高くないようで部下の藩士たちにはあずみに畏れず斬りかかるよう命じる一方、自身はあずみに剣を突き付けられた時、怯えた様子になっていた。第二次長州征伐以降はもはやあずみを追い回している余裕はないとあずみ抹殺から手を引き、以降は父の正綏だけであずみを狙っていた。その後は登場がなく動向は不明だが、史実では明治まで生きている。
猪と長平(いの、ちょうへい)
幼いころから服部一族の兵士として鍛え上げられた孤児の青年たち。猪は刃物のトンファーのような武器、長平は普通の刀を得物にしている。桑名から上京する途中、凄まじい速さで十数名の手練れ浪士集団を一瞬にして全員斬り捨てた。のろまで弱すぎると驚いていたが、服部正綏は「彼らが弱いのではなくお前たちが強すぎるだけだ」と教えていた。その後、服部の命令で西郷隆盛の暗殺を狙い、西郷の護衛に付いていたあずみと戦う。あずみは刀を持ってなかったが、寸鉄と体術だけで2人を倒して足の骨を折って戦闘不能にした。「敵に捕まる前に自決せよ。自決を恐れて逃げようとしても生き延びる道はない」という服部一族の教えに従い、長平は死ぬのを嫌がった猪を刺した後に自決。これ以降あずみは服部家と桑名藩に命を狙われることになる。
ちこ
服部一族の兵士として育てられた孤児の少女。あずみ暗殺に向かった仲間の長平、猪、孝太、茂一がすべて返り討ちに遭ったため、復讐すべくあずみに近づく。幼いころから苦楽を共にしてきた長平たちとは肉体関係もあったようで、その時のことを思い出して自慰をしているような描写もある。当初は親に売り飛ばされた娘を装い、あずみに助けられる形で近づき寝食の世話になるも、食事の際にあずみと同じく毒を確認するような食べ方をしたことで正体がばれ、同じ布団に入った際に取り押さえられ失敗する。しかし、それでも復讐は諦めておらず、後に半蔵たちの包囲網を抜けて隠れているあずみのいる小屋に仲間2人と共に襲撃をかけるも、まとめて倒された。しかし、あずみは女でありながら自分と同じような境遇で育ったちこに対して情が移っていたようで、ちこを殺したことに対して強いショックを受けていた。
幕府
室田(むろた)たち旗本3人組
京都見廻組に所属する3人の旗本。リーダー格の名前は室田。性格は3人とも醜悪そのもので、酒と女遊びの毎日を過ごし、圭次郎や駿介ら御家人を奴隷のごとく扱っていじめ抜き、駿介が倒幕派として見廻組に捕縛された際には嬉々として拷問を行った。
明治4年時には3人とも落ちぶれ、橋の下の掘っ立て小屋で一緒に暮らすホームレスの乞食に成り果てている。御家人だった駿介が明治政府高官になって豪邸で暮らしていることを知ると嫉妬して向邸襲撃を企てたが、その夜には3人とも掘っ立て小屋の中で額に穴が空いた死体となって転がっていた。あずみの姿が直接的に描写されているわけではないが、明治以降も向家を見守り続けている彼女が向家の危機を察知し3人の額を針で突いて暗殺して向家を守ったことを想像させるシーンとなっている。
壮太周辺
壮太(そうた)
雇っていた剣客集団をあずみに全滅させられた出羽守が新たに雇ったあずみを狙う刺客で、二刀流の使い手。水戸藩領出身で茨城弁で話すのが特徴。武士ではなく百姓だが、盲目の妹きよを守るために幼いころから山奥で鍛練に明け暮れ、あずみ級の俊敏さを手に入れた。唯一の肉親であった妹を暴漢に襲われて失い、自暴自棄になって暴漢たちを皆殺しにした。このことで村にはいられなくなり、幼馴染の富次と共に村を出て京へ逃れていたところを出羽守に雇われた。多くの剣豪を見てきた出羽守もこれほど速い者は見たことがないと驚愕した。凄腕であることから慶喜の指示であずみ抹殺以外の使命にも使われることになり、出羽守が飼っていることは隠された。最初の任務で親薩摩派の公卿九衛正煕を警護に付いていた示現流の薩摩藩士たちもろとも抹殺した。その後あずみと遭遇して対峙。作中であずみと互角以上に渡り合った唯一の人物であり、最初の対戦ではほぼ同じ剣速でもって二刀で攻めてくる壮太に一刀のあずみが対応できず、あずみに逃走の判断をさせた。足はあずみの方がやや早かったため取り逃がしたが、あずみにとっては初めての敗北となった。その後見廻組の依頼で坂本竜馬を暗殺した。あずみは師の角倉から4人の犠牲を出しても余りある奇跡の戦士に彼女が育ってくれたと告げられていたが、本当に自分がそれほどの域に達しているのか知るためには逃げたままでいるわけにはいかないと壮太と決着を付けることを決意。彼とあずみの再戦が作中最後の戦いとなる。あずみはまず一刀を奪うことに集中する戦略で望み、壮太の二刀の猛攻をかわしながらタイミングを図り、ついに壮太の左腕を斬りつけて一本の刀を落とさせた。壮太は残された右手の一刀でなお戦おうとしたが、その後はすぐにあずみに右腕と胸も斬られて敗北した。しかし今まで戦った中で最強の相手であったと互いが相手の実力を褒め称えあった後、あずみに止めを刺されて死亡した。
滝沢家
滝沢(たきざわ)
500石の旗本。虎彦と欣也の父。身分制度を絶対視し、身分をないがしろにする成り上がり者の勝麟太郎を嫌悪する。志乃を巡る確執以来、向家を執拗にいじめる。幕府があずみを誘き出す囮として向家を捕えた際には向夫妻を預かって自邸前で晒し者にし、あずみが救出に現れたら向夫妻もろとも撃ち殺すよう鉄砲隊を待ち構えさせた。向の倅の妹が刺客と知って向夫妻がその妹に頼んで欣也を殺したに違いないと確信し、妻とともに人質の向夫妻をいたぶるとともに「欣也の憎き仇」とあずみに復讐心を燃やした。あずみは悩みながらも結局甚平らの救出は諦めたが、その後滝沢が第一次長州征伐への出陣を命じられたため甚平らを解放するしかなくなり、欣也の仇は出羽守様の剣客たちが取ってくれるはずだと期待していた。その後は登場も言及もなく末路は不明。
滝沢 欣也(たきざわ きんや)
滝沢の次男で1000石取りの旗本坪内家の婿養子に入ることが予定されていた。3人の旗本仲間とつるんでいることが多い。兄虎彦より胆力はあるが、性格は外道そのもので、事あるごとに駿介や甚平ら御家人に因縁を付けて暴行を加え、駿介の姉志乃を輪姦しようと志乃とその婚約者の菅野宗一郎を拉致監禁して志乃を自害に追いやり、菅野をなます斬りにした。駿介ら向家は欣也らを斬って仇を討った後沙汰を待たず自刃する覚悟を決めたが、あずみは向家を守るため自分が欣也らを暗殺することを決意。反省もなく遊び歩く欣也ら旗本4人の前に立ちふさがったあずみは、抜刀した4人に囲まれたが、素手で一瞬にして3人から脇差を奪い取って心臓一突きで殺害、それを見た欣也はあずみの強さに恐怖して命乞いしたが、受け入れられず叫び声をあげながら斬りかかるも素手で簡単に刀を払われて脇差を奪われ心臓一突で殺害された。相手の脇差を奪い取って正面から心臓一突という凄腕の暗殺方法だったため、向家に疑いがかかることはなかった。しかし、あずみの能力は使命以外の私事に使ってはならないことになっていたのであずみは手を汚してしまったと思い悩んでいた。
滝沢 虎彦(たきざわ とらひこ)
滝沢の長男。文武共にダメな小心者で、父の滝沢も欣也が長男であってくれたならと嘆いている。道場の外で稽古に耐え切れず泣いていたところ手拭いを拾ってくれた志乃に微笑みかけられて以来、彼女に片想いを寄せるようになった。志乃は身分の違いが畏れ多くて自分との縁組を断っているだけで本当は自分のことが好きなのだと思い込んでおり「志乃様は虎彦様が嫌いなんだ」という町人の下女の噂話を聞いた時には発狂し下女を無礼討ちにして殺害した。弟の欣也らが志乃を監禁して自害に追い込んだ現場にも居合わせたが、死体を発見した駿介らは虎彦がいたことには気づかなかったようで、駿介、圭次郎、甚平いずれも彼を仇討ちの対象にはしておらず、結果彼はあずみに殺されずにすんだ。その後は登場も言及もなく末路は不明。
土佐藩
長州藩
桂 小五郎(木戸孝允)(かつら こごろう)
長州藩士。あずみは初め間諜のために彼に近づいたが、後に親しくなり、見廻組に捕らえられた駿介の救出に協力したり、駿介に隠れ家を提供したりした。あずみもお礼に彼の頼みを聞き届けて征長軍参謀篠田源太郎の暗殺を請け負った。あずみが篠田を討ったとの報告を受けた時には「さすがだ、あずみ」と飛び上がって喜んだが、彼女が服部父子の罠にかかって負傷したことを知らされた。あずみの居場所が分からず救出を断念し、そのことを気に病み、彼女が帰還した後には長州はあずみのおかげで救われたと土下座の感謝と謝罪をして、あずみに恐縮されていた。かなりの剣の達人であり、駿介救出の際には多数の見廻組隊士を峰打ちで打ち倒している。また変装の名人だが、あずみには見抜かれている。「なぜ僕が分かった?」との問にあずみは「目が桂さんだから」と答えている。
池谷 新平(いけたに しんぺい)
長州藩邸で働く元武士。新式銃の扱いがうまく二十五間先の三寸の的を射止める自信があると述べる。あずみが長州藩邸に潜り込んでいた時に高杉晋作を通じて知り合い、親しくなった。祖父は仕えていた藩を追われて浪人し、父は武士身分を捨てて竹細工職人になっていたが、祖父は新平に士分を取り戻して欲しがっており、その期待に応えるべく長州藩邸で働き、同藩藩士への取り立てを受けるのを夢見ていた。あずみは彼の上を目指す生き方に駿介を被せていた。桂らは反対していたが、高杉の薦めもあって尊皇攘夷運動に名を上げるべく水戸脱藩浪人宍戸らの計画に参加。新平がいると知らず宍戸らを斬りにきたあずみは動揺し、新平も思わずあずみに反応してしまったことで2人が知り合いだと分かり、あずみを招き入れた間諜と誤解されて宍戸に斬られてしまった。あずみは急いで宍戸らを斬り伏せ、新平に駆け寄ったが、すでに手遅れで、あずみに抱かれながら絶命した。あずみは自分のせいで新平が死んでしまったと後悔していた。
薩摩藩
大久保 一蔵(大久保利通)(おおくぼ いちぞう)
標的
その他
書籍情報
舞台
- あずみシリーズ全体の舞台作品については「あずみ#舞台」を参照。
AZUMI 幕末編
- 公演日:2015年9月11日 - 24日
- 会場:新国立劇場中劇場
- 構成・演出:岡村俊一
- 脚本:チーム渡辺(渡辺和徳 他)
- 出演:川栄李奈(あずみ)、浅香航大(坂本龍馬)、渡部秀(駿介)、久保田秀敏(圭次郎)、早乙女友貴(壮太)、町田慎吾、佐藤祐基、岡本あずさ、細貝圭
- 企画・制作:アール・ユー・ピー