BM ネクタール
以下はWikipediaより引用
要約
『BM ネクタール』(ビーエム ネクタール)は、藤澤勇希の日本の漫画。秋田書店刊行『週刊少年チャンピオン』にて、2000年3号から2000年13号(第一部)、2000年22号から2001年18号(第二部)、2001年33号から2002年33号(第三部)までそれぞれ連載された。全105話。単行本は秋田書店の少年チャンピオンコミックスより全12巻が発売されている。
あらすじ
増え続ける人口によるゴミ問題。そして食料まで足りなくなり始めた日本。2002年に科学者達は遺伝子工学の技術をつかって BIO・MEAT、通称B・Mを発明した。B・Mはガラスはじめセラミックスと金属を除く、プラスティックを含むあらゆる有機物を食べて繁殖する生物で、これにより、ゴミを無公害で処分すると同時に食糧を供給するという、究極のリサイクル・システムを作り上げる。
第一部
B・Mによるリサイクル・システムが一般にも広く浸透し始めていたある日、関東で発生した地震が小学生・麻綾 完の引っ越してきた東京M市を襲った。一見すると大した被害は無い小規模な地震だったが、これによってM市にあったプラントからB・Mが逃げ出してしまう。
その日の午後、M市のあちこち、完たちの小学校にもB・Mが現れ、人々をも喰らい始めた。完、幡場、香ノ宮はシンゴの提言に乗って半ばクラスメイトたちから追い立てられるように教室を出るが、教室に残ったクラスメイトらはB・Mに襲われて全滅する。完たちはB・Mに蹂躙された街へ出ることになる。
車に乗って難を逃れていた完の母親と合流するとシンゴの指示に従って、都内方面へと車を走らせる。M市から都内につながる道路は封鎖されており、B・M研究開発総責任者であるシンゴの父親が封鎖の指揮を執っていた。父親がB・Mの機密保護のためなら、完らを殺害することも辞さないことを察したシンゴは、事態収束のために化学燃料でM市全体をB・Mを焼却しようとするM市へ完たちを戻す。シンゴの密かな指示によって、焼却から逃れるためにプラントに逃げ込む。完の母親の犠牲の上で、完、幡場、香ノ宮は生き残ることができ、救助された。
第二部
第一部から3年後。日本ではB・Mの正体は政府に隠蔽されながら、B・Mがもたらす成果により繁栄していた。
世間には「大火災」と隠蔽された第一部の惨劇で家族を失った麻綾達は、シンゴがこの事件の秘密を守ることで、政府に完達に手を出させないことと、生活の全てを政府に保障させることを約束させたことで、過去を忘れずとも表面上平穏に暮らし、中学生になった。
完は税金で養ってもらうのを拒否し、別れた父親を頼って大阪に帰ってしまっていたが、ある日小笠原諸島南東12.5km旧帝国海軍属人工島にてB・M対策の研究の主任になっていたシンゴの呼びかけにより、3年ぶりに一同は再会することとなった。
米国産B・M「U・S・B・M」の試食会に参加するため帰京したシンゴは試食会には参加せず、幡場、香ノ宮、さらに幡場の後輩の篠浦とすごしていたが、シンゴが幡場たちを試食会場に案内したのと時を同じくして、秘密裏に国内に持ち込まれていた生きたU・S・B・Mが試食会場の人間を襲いだす。
更には、日本のB・Mをアメリカに売ろうとする者の手によって、国産B・Mも試食会場のあるビル内に広まってしまう。
U・S・B・Mを運んできた米軍、試食会を訪れていた著名人にマスコミ、日本のB・M対策部隊と次々に犠牲となりながらも、完たちはなんとかその場を切り抜け、東条と合流し共に対策を練ることとなり、多くの犠牲を払いながらも作戦を成功させ、生き残ることができた。
第三部
第二部から3年後(第三部スタートの4年前)、B・Mを盗み出した者たちへの対応を誤ったシンゴは九州と陸から離れた小さな島を除いた国土をB・Mに蹂躙されることを許してしまう。
第二部より7年後、日本は人口の90%、国家資産のほとんどを失い、人間は本土の極一部のフェンスで囲った地域と〝南〟と呼ばれるようになった九州にしか生存しておらず、本土の人間はB・Mに怯えながら日々を暮らし、〝南〟の人間は世界の国々からゴミを引き受けて処理し、代わりに加工したB・Mを食糧として輸出することによってもたらされた実りにより豊かに暮らしていた。
本土の紀伊エリア大阪地区自警団の団長となっていた麻綾のもとに横須賀エリアにいた篠浦が幡場、香ノ宮の救助を要請するために現れたことで物語は動き始める。掟に背くことになりながらも、麻綾は仲間たちの救助に成功し、紀伊エリアまで戻る。しかし、掟を破ったことで麻綾は自警団に逮捕される。
そのころ〝南〟では、B・M通商局長官になったシンゴとフランス食料相補佐官との間でB・M通商条約締結の会談が行われていた。シンゴがクローシュを生鮮輸出用ベースに案内しているとき、突如レジスタンスに襲撃される。レジスタンスは制圧されたものの、〝南〟に生体B・Mが存在することを知られてしまい、後に生鮮輸出用ベースはレジスタンスに制圧された後に無能かつ無責任なリーダーと、狂信的な隊長の手により、B・Mが〝南〟に解き放たれ〝南〟は壊滅してしまう。
完たちは、シンゴら〝南〟の避難民を救助するため高千穂に船で出発。完たちはシンゴと再会し避難民の救助を行ったが、完、シンゴ、幡場、香ノ宮、篠浦は〝南〟に取り残され、独自に脱出を試みる。一方、避難民たちは大阪地区にたどり着いたが、こちらでもフェンスの老朽化や悪天候によって、壊滅は時間の問題かと思われた。そこへ消息不明となっていた完たちが、米軍の極東艦隊と共に、B・M駆除装置「零‐7号」を持ち帰り、これによって日本中のB・M駆除が始まった。日本全土の駆除には何年かかるか分からないが、復興作業に励む完たちだった。そこにラジオからアメリカ合衆国がU・S・B・Mの開発再開を決定したというニュースが飛び込んできて物語は終わる。
登場人物
主要人物
麻綾 完(まあや かん)
幡場 優(ばんば ?)名前の読みは不明。
東条 神悟(とうじょう しんご) / シンゴ
第一部では完のクラスの委員長。父親はB・Mの開発者である。母親は5歳の時にB・Mの実験中に起きた事故のため亡くなっている。この事故はまったくの偶発事故であったが、当時の周囲は父親がB・M開発のために見殺しにしたと言われており、このためシンゴも父親とはわだかまりが生まれていた。
第二部ではB・M研究施設で対B・M装置の研究等を行っている。U・S・B・Mと国産B・Mを共倒れさせるべく自分が提言した方法のために留音の両親をはじめ、大勢の人間を死なせてしまったことを悟ると、ショックから廃人同様になるが、留音から「仇を取ってくれないと許さない」と言われたことで奮起し復活した。
第三部では“南”に移り住み、B・M通商局長官になっている。
香ノ宮 真里乃(かのみや まりの)
篠浦 剛士(しのうら つよし) / ミド
留音(るね)→御嶽ヶ原 留音(みたけがはら るね)
桐生 新八(きりゅう しんぱち)
第一部
ツネ夫(つねお)
第二部
バーナード・ドレクス
大佐(カーネル)
池内(いけうち)
後藤(ごとう)
桐島(きりしま)
設定・用語
B・M
口に四本足がついたような形をしており、体の裏面にある歯で対象を噛み砕き捕食する。また捕食用の触手も持っている。
足の裏には爪や垂直面を移動するための管足があり、大体時速10キロ程度で移動することが可能。
背中に5 - 8対の胚芽があり、ここから分裂・増殖する。分裂直後は通常よりサイズは小さめだが捕食により体長15 - 45センチメートル、体重800グラムから4キログラムにまで変動し、約25分間隔で分離・増殖するようになる。
B・Mはほとんど感覚器を持っておらず、大きな動きや音など空気の振動を表皮で感知し襲い掛かり、餌を探す場合も、行き当たりばったりに喰らいつき、それが食べられれば喰らい、消化できなければ吐き出すといった原始的な動きをとる。
獲物に喰らいついた時、超音波によって仲間を呼び呼ぶ習性がある。この信号音を聞きつけることにより、感覚の鈍いB・Mは集団で一斉に襲いかかり獲物を即座に喰い尽す。また、B・M同士(国産B・M同士)が共食いすることはない。
直射日光に弱く、その下では20 - 30m、時間にして10秒くらいで干からびてしまうが、水を吸収すると復活する。海水に入ると浸透圧の関係で干からび、酸素の供給を絶たれて死滅する。
B・Mは最後の細胞1個になっても生き続けることが可能で、銃弾などでは殺しきることはできない。そのため、食用に出荷するB.Mはマイクロ波などで細胞一つ残らず死滅させることで初めて出荷される。細胞1個でも残っており、なおかつ水と周囲にエサがあればそこから再生することも可能。熱以外には極低温でも死滅する。
加工された食肉には、カルシウム、ミネラル、ビタミンなどがたっぷり含まれている。しかも安価で購入することができる優れた食品。ゴミ問題と食糧問題を一気に解決したB.Mはギリシア神話におけるネクタールにも例えられるが、一度人類の管理を外れれば無限に増殖し全てを喰い尽す危険な存在でもあるため、実用が始まった当初からその管理には細心の注意が張られてきたが、一部を除いて「人災」により破綻し外に漏れ出している。
第二部以降ではU・S・B・Mが登場した為、U・S・B・Mと区別するため国産B・Mと呼ばれる。
U・S・B・M
国産B・Mと違い分裂はせず、エサを喰うと無限に巨大化していく。加工された食肉は、風味、栄養価ともに国産B・Mにひけをとらず、さらに増殖効率が国産B・Mより高く同量の食肉を産出するための期間は1/3以下である。一方で、代償として酸素を凄まじい勢いで消耗してしまう。
新しい個体を生むのではなく、異常なスピードで細胞分裂を繰り返すことから、「進化」のスピードが異常に早く、ただ本能で動くだけの肉塊から、喰らうことへの「欲求」を覚えた「猛獣」となり、換気口を通れる直径0.1mmのテグス状態に変化しエサを求めて外部を探索し、エサと水が揃うと増殖した。単位筋繊維量当たりの筋力は貧弱だが巨大化し筋肉量が増えれば、鉄のシャッターも抉じ開ける怪獣なみのパワーになる。
テグス状の触手からばら蒔かれた生体細胞は空気中を漂い、喉の粘膜に付着して増殖する(この影響で、喉が焼きつくような感覚に襲われる)。その状態で水を飲むと爆発的に成長が進み、体を食い破る。その後は独立した小型の個体として活動する。パーティ会場の皿に残った料理の中である程度成長している個体も存在していた(この状態でも人を食い殺す程度は可能)。
このような変異を起こし始めたことを危惧したカーネルにより、換気口を閉じられたことで一度は凄まじい断末魔を上げて絶命。しかし、改めて換気口が開かれたことで生存していた細胞がその死体を喰らい尽くし、より怪物じみた力と食欲を有した第2世代として新生した。
超音波によって集められた国産B・Mと喰らい合い増殖し合うという不毛な戦いを繰り広げるが、(ルネの両親たちを食っていたために)遅れて現れた国産B・Mの一団が加わったことでパワーバランスが崩壊。跡形も残さず国産B・Mの養分となってしまった。
国産B・M同様、高熱と低温に弱いが、遺伝子配列が違うため国産B・M対策グッズを使用することはできない。
B・M農場
第三部では、本土がB・Mで壊滅したことを教訓に、南にB・M農場は唯一つも設置されていない。そのかわり、本土を巨大なB・M農場としている。本土全域に1000近いB・M処理センターと餌場が設けられ、餌場に航空機がゴミを廃棄する。ゴミを喰らい、増殖したB・Mは、B・M処理センターの発する超音波でおびき寄せられる。センターは巨大な装甲車で電子レンジのようなものになっており、マイクロ波によってB・Mを処理する。その後、B・Mは港までパイプラインで送られ、南に向けて船で運ばれる。処理から輸送までの工程は全自動であり、南に生体B・Mが侵入しないシステムとなっている。作中では第428番の餌場として、甲子園球場が登場した。
東京都M市M町
南
高千穂
本土
書誌情報
- 藤澤勇希 『BM ネクタール』 秋田書店〈少年チャンピオン・コミックス〉、全12巻
- 2000年5月 ISBN 4-253-05873-6
- 2000年8月 ISBN 4-253-05874-4
- 2000年10月 ISBN 4-253-05875-2
- 2001年1月 ISBN 4-253-05876-0
- 2001年3月 ISBN 4-253-05877-9
- 2001年5月 ISBN 4-253-20007-9
- 2001年10月 ISBN 4-253-20008-7
- 2001年12月 ISBN 4-253-20009-5
- 2002年3月 ISBN 4-253-20010-9
- 2002年5月 ISBN 4-253-20011-7
- 2002年7月 ISBN 4-253-20012-5
- 2002年9月 ISBN 4-253-20024-9