Jドリーム
以下はWikipediaより引用
要約
Jドリーム(ジェイドリーム)は、塀内夏子による日本の漫画作品。『週刊少年マガジン』(講談社)にて1993年3・4合併号から1999年44号まで連載された。
プロサッカーの世界を描いた作品で、主人公・赤星鷹の活躍を中心に序盤はJリーグの世界が描かれ、以降は日本代表のワールドカップ予選での激闘が描かれる。
作品背景・キャラクター造形
作者の塀内は高校サッカーを描いた前作『オフサイド』の終了後、「ずっとアマチュアスポーツを描いてきたから、今度はプロスポーツが描きたい」という希望があり、プロ野球を題材とした作品を構想していた。一方、1990年代初頭の日本サッカー界はプロアマ混在の状況から完全プロ化へと移行しようとした時期でもあり、日本代表がAFCアジアカップで優勝するなど成績面でも変化が現れ始めた時期でもあった。塀内によればたまたまテレビを見ていたところ「こっちの方が面白そうだ」と感じ、一晩で構想を代えたという。
なお、本作品はプロの厳しい世界が描かれると共に、主人公の赤星鷹については確かな技術を持つ一方で、型破りな人物として描かれている。これについて塀内は「アマは誰にでもできるけど、プロは一定のレベルでないと許されない。ギリギリの汚いことまで認められる、かなり厳しい世界でしょ。そうなるとキャラクターの作り方も全然違ってくるから、面白いな、と思った。それこそマイク・タイソンやマラドーナは品行方正ではなくて、破滅しているから面白いんじゃないですか」と語っている。
あらすじ
シリーズとしては大きく3つに分かれており、単行本もそれぞれのシリーズ毎に分かれた形で発売されている。最初のシリーズは以降のシリーズとの区別のため「無印編」といわれる場合がある。
Jドリーム
Jリーグ開幕を翌年に控えた1992年夏。日本代表として長年日本サッカー界不遇の時代を支えてきた浦和レッドダイヤモンズの本橋譲二は、プロ化により自分の足に値段がつけられるという時代の変化に戸惑いを感じていた。そんなある日、赤星鷹という一人の少年に賭けサッカーを持ちかけられ、勝負を通じて新しい世代の到来を肌で感じる。本橋は年齢による衰えと古傷の痛みに悩まされながらも、家族やトレーナーの小林宏に支えられ奮闘を続けていたが、ヤマザキナビスコカップ最終節において、右膝の靭帯を断裂し選手生命を絶たれる。一方、浦和とのプロ契約を勝ち取った鷹は本橋との交代でピッチに立つと、卓越したテクニックと物怖じしない度胸で、代表選手がひしめく相手チームを翻弄し、周囲の人々に将来の日本代表入りを予感させる。
16歳の若さで日本代表に抜擢された鷹は、小心者のストライカー・北村大地や中堅選手の富永朗や嶋泰明らとともにW杯アジア予選に出場、1次予選で難敵のUAE代表を下し、最終予選進出を決める。各選手はJリーグでの活躍を経て、元ドイツプロの本郷剛らとともにアジア最終予選に挑む。日本は崔潤和、洪聖甫を擁する韓国代表との激戦を制して予選突破まであと一歩に迫るも、最終戦でイラク代表に引き分け、目前で本大会出場を逃す。
呆然とする代表の面々だが、予選得点王の活躍を見せた北村にはイタリア・セリエAのクラブからのオファーが届く。一方、鷹は日本への帰国の途につく中、忽然と姿を消し行方知れずとなる。トレーナーの小林は悲嘆に暮れるも、北村は日本が世界に挑み続ける限り鷹との再会の日は近いと予感する。
Jドリーム飛翔編
それから時は流れ、姿を消していた鷹がスペインで保護され、FIFAワールドユース選手権に出場する日本ユース代表にキャプテンとして迎えられる。それまでチームを牽引してきた迫丸ら厳しいアジア予選を戦い抜いたメンバーからの反発や、立浪とのサッカーへの取り組み方の違いなどから、一枚岩ではない状態で大会が始まる。いじめられっ子で今まで誰にも必要とされて来なかったFW中居真、女手一つで育ててくれた母が命に関わる手術を迎えるMF迫丸瞬、秀才であるがゆえ自分の考え方の殻から抜け出せないDF立浪誠、兄の事故死を乗り越えられず周囲と衝突しがちなGK浜本真、職人肌のボランチ柳木一成。メンバーはみなそれぞれに悩みを抱えながらも、試合を重ねる中で心を通わせ団結して行く。スウェーデンやアルゼンチンなどの強豪を退けて決勝戦へと進出すると、決勝ではアレッサンドロ・ロッシ率いる地元イタリアと対戦、PK戦の末に大会初優勝を果たすのだった。
優勝という結果を手にし充実感を味わう選手達だが、日本へ帰国しチームが解散すると、それぞれは新たな目標を胸に歩み出して行く。中居の下にはJリーグのクラブからのオファーが届くと、突然のことに戸惑う中居だったが、トレーナーの小林からの後押しもあり入団を決意、それは鷹からの独り立ちを意味していた。
本編は第9巻で完結しており、その後スペインで行方知れずとなった鷹を中居と浜本が訪ねる番外編と、実在の選手松永成立のドーハでの活躍を含むサッカー人生を描いた『松永成立物語』を収録したものを第10巻として刊行している。
Jドリーム完全燃焼編
さらに時は流れ、前回あと1歩のところで敗れたドーハ組に、20歳以下の世界大会を制した若手や、社会人の吉川望、大学生の伊達勲といった新戦力が加わり、フランスW杯の出場権を争うアジア予選が始まる。しかし仲間との一体感を守ろうとする鷹と勝負のために厳しさを求める伊達との確執、富永と浜本、嶋と吉川という新旧世代の熾烈なレギュラー争い、さらには怪我人やスランプで選手が次々に離脱するなど様々な試練が続出。日本代表は幾度も苦境に立たされながらも、ベテランの精神力や若手の成長でそれを乗り越えると、第3代表決定戦でイラン代表との決戦を制してW杯初出場を掴む。
念願を果たし歓喜に沸く選手達だが、鷹は試合後のロッカールームから姿を消してしまい、それから3か月経った後も行方は掴めないままとなっていた。本大会に向けた合宿を目前に、北村、富永、嶋は小林と長かった戦いの日々を思い返すが、そんな中、鷹は「ワールドカップにこれから行くんだよ」と称してひょっこりと舞い戻ってくる。最後に実在の日本代表の本大会での成績が手短に記され、子供たちにとってワールドカップが夢物語ではなく現実的な目標となったという状況が記されて物語を終える。
登場人物
主要登場人物
赤星鷹(あかぼし たか)
本作の主人公。ポジションはMF(攻撃的MF)またはFW(セカンドトップ、センターフォワード)。
背番号は0番。1976年7月22日生まれ。身長169㎝ / 体重54㎏。
所属クラブ : 浦和レッドダイヤモンズ - レアル・マドリード - アトレティコ・マドリード - パンプローナ - サラゴサ - サラマンカ(3部) - ラ・マンチャ(アマチュア) - 浦和レッドダイヤモンズ
幼少の頃に母親が鷹の元を去る前に「すぐ戻るからこれで遊んでなさい」と言われ渡されたのがサッカーボールであった。母からすればただ目についた土産屋でおもちゃのボールを買い与えただけであったが、鷹は母の言いつけを守り、母の帰りを待ちながらボールを蹴り続けたのがサッカーを始めたきっかけとなる。その後母が帰ってくることはなく鳶職の父親の手で育てられる。自分は母に捨てられたのだと思っていたが、後に母は病気で治療に専念するために一旦鷹と離れ離れの生活を選び、しかしその後死亡したことが判明する。父親の仕事の関係で全国を転々し成長するにつれ父親と共に鳶職として働くようになる。鳶職のバランス感覚と、友達がほとんど出来ず一人で延々とボールを扱っていたことが卓越したボールテクニックを培うことに繋がる。高校サッカーの強豪校に入学するが短期間で退学し、Jリーグの各クラブのプロテストを受験するがいずれも不合格となる。しかし浦和レッドダイヤモンズのテスト後に偶然出会った本橋との賭けサッカーが、レッズ関係者の目に留まり同クラブに入団する。
レッズ入団後はエースの本橋譲二からレギュラーポジションを奪取した後に、16歳の若さで日本代表に抜擢され、FW・MFとして活躍。しかし日本代表がW杯予選で敗れた後に姿を消す。
その後スペインで保護され、日本ユース代表のキャプテンとしてワールドユース選手権ではチームを優勝に導いた。その活躍が認められ、スペインのレアル・マドリードに移籍するが出場機会に恵まれずレンタル移籍に出され、移籍先を転々とした後に浦和レッズに復帰。フランスW杯のアジア予選では日本代表の不動のエースとして活躍した。キャプテンとしての手腕は確かなようで選手も自ら各クラブチームの練習場に趣いてスカウトするような一面もある。ボールコントロールやゲームメイクに長けている反面、フィジカルやスタミナなど体力面に不安があり、度々ウィークポイントとして露呈してしまう、完全燃焼編では激闘の連続に、徐々に疲弊していく様子が描かれている。
性格は感情的で自分勝手。思い通りに行かないと癇癪を起こし拗ねたり、他人の荷物や手紙を覗くなど素行は悪い。余り物を非常食として取っておくだけにとどまらず、嘘吐きで拾った物を盗んだりもする。これはその日暮らしだった父親の影響で培ったシビアさによるもので、サッカーの試合においてもずる賢こいプレイを多くの場面で発揮するなど狡猾な一面を見せる。
北村大地(きたむら だいち)
ポジションはFW。180cm。
所属クラブ : 神命電機 - 浦和レッドダイヤモンズ - パルマ
元々はJFLの神命電機(架空企業)の選手だったが、借金返済のために(実家の父親が営んでいた養豚場が火事で全焼したことが原因で生まれた多額の借金が残っていたため)プロ転向を決意しレッズに入団した。レッズ入団後は鷹とのコンビでゴールを量産し、日本代表でも強靭な外国勢にフィジカルで負けないパワーで活躍し、アメリカW杯のアジア最終予選では得点王に輝いた。その活躍が認められ、飛翔編以降はイタリア・セリエAのパルマに移籍して活躍。気弱な性格から鷹との力関係は年上ながら弱く、その性格が災いして詰めの甘さや精神的な脆さを見せていたが、UAE戦での鷹の退場で克服して以降、いざピッチに立てば覚悟を決め強い精神力も見せるようになる。特に年上の立場となる完全燃焼編では、時に動揺する若いメンバーを牽引する存在に成長している。作中の日本代表の得点の大部分が北村のゴールで描かれているほど、絶対的な得点源として活躍する。
富永朗(とみなが あきら)
嶋泰明(しま やすあき)
小林宏(こばやし ひろし)
浦和レッドダイヤモンズ
本橋譲二(もとはし じょうじ)
日本代表、日本ユース代表
無印編より登場
セルジオ・レネ
本郷剛(ほんごう たけし)
上条直也(かみじょう なおや)
黒咲一心(くろさき いっしん)
飛翔編より登場
迫丸瞬(さくまる しゅん)
ポジションはFW及びMF(攻撃的MF)。背番号は10番。10月21日生まれ。身長174㎝ / 体重56㎏。
所属クラブ : ヴェルディユース - ヴェルディ川崎
日本ユース代表のキャプテンとして苦しく厳しいAFCユース選手権で優勝を果たしたが、そこに突然鷹がキャプテン扱いでやってきたため一時はチームを二分するほどの険悪な雰囲気となる。しかし互いの実力を認め合った後は和解し、その後ワールドユース選手権・フランスW杯予選では鷹とのコンビで活躍する。鹿児島県出身で故郷の母と姉を常に気に掛ける一面もある。FWとして出場したワールドユースやW杯1次予選では得点もするが、MF出場時は鷹に次ぐ第2のゲームメイカーとしてアシスト役や鷹のフォローに徹する。スピードに乗ったドリブルも得意。
中居真(なかい まこと)
ポジションはFW。背番号は16番。3月16日生まれ。身長173㎝ / 体重53㎏。
所属クラブ : 城西一高 - 柏レイソル
鷹の子分的な存在の俊足FW。友達がおらず常に苛められていたため精神面が弱い一方で、空気が読めない欠点があり、調子に乗って周りに失礼な言動をしてしまう事もある。100mを10秒台で走るという俊足と、フィールド全面を走り回る運動量の豊富さが武器だが、一方でテクニックは拙くボールコントロールが苦手。とある無名高校のサッカー部員に過ぎなかったが、高校の隣りのグラウンドで合宿をしていたユース代表の鷹の目に偶然留まり急遽代表に招集された。自ら鷹のパシリを志望すると、鷹からパスに走る使命を与えられ、自分を必要としてくれた鷹に全幅の信頼を寄せるようになる。ワールドユースでの活躍が認められ大会後に柏レイソルからオファーを受ける。当初は鷹と一緒に居たい気持ちから鷹の口利きでレッズに入団する事を望んでいたが、「鷹から独り立ちする機会だ」と小林に説得されレイソルへの入団を決心する。FWとして物語の本筋となるワールドユース(飛翔編)で4試合、フランスW杯最終予選(完全燃焼編)には5試合出場しているが、ゴールを1度も決めていない。代表戦唯一のゴールはフランスW杯1次予選の最終戦で1得点したとセリフで示されるが、その得点シーンは描かれていない。
立浪誠(たつなみ まこと)
ポジションはDF。背番号は4番。11月7日生まれ。身長187㎝ / 体重92㎏。
所属クラブ : 名古屋グランパスエイト - アヤックス - 名古屋グランパスエイト
鷹の2歳年上。ワールドユース選手権直前までエールディヴィジのアヤックスへ1年間留学していた。性格はいたって真面目で、何かにつけていたずらを仕掛ける鷹や中居をよく叱り付けているが、サッカー選手としての彼らの能力を評価しているため本当のけんかになることは少ない。大柄な体格を生かして攻撃時にも空中戦で活躍し、ワールドユースで3得点、また調整試合でもヘディングでのゴールを決めるなど、飛翔編においては赤星に次ぐゴール数を決めている。飛翔編、完全燃焼編を通してDFリーダーとして存在感を示すが、フランスW杯予選では第2戦でレッドカードを貰うと、それをきっかけにチームは低迷していく。
浜本真(はまもと しん)
ポジションはGK。背番号は17番。12月10日生まれ。身長186㎝ / 体重91㎏。
所属クラブ : リーベル・プレート - 名古屋グランパスエイト
立浪と同学年。アルゼンチン生まれの日系3世で、アルゼンチンユース代表候補にも選ばれた過去がある。リーベル・プレートに在籍していたが、短気な性格のせいでチームメイトとそりが合わず退団。しかし日本ユース代表に参加してからは、鷹を始めとして自分を理解してくれるチームメイトに恵まれ、事故死した兄へのトラウマも克服し徐々に性格も安定した。後に立浪の誘いで名古屋グランパスエイトに入団する。完全燃焼編ではベテランの富永と激しいポジション争いをするが、最後は富永から意志を託される形でゴールマウスを守った。
柳木一成(やなぎ かずなり)
岸川悟史(きしかわ さとし)
坂井真二(さかい しんじ)
嶋宏明(しま ひろあき)
完全燃焼編でのW杯最終予選を目指す先行合宿においては、コーチ陣の会議で監督やコーチからは落選の意見と、それを引き留める意見が交わされるほど当落線上にいる状態であった。
完全燃焼編より登場
池田雅志(いけだ まさし)
吉川望(よしかわ のぞむ)
伊達勲(だて いさお)
緒方哲(おがた てつ)
岡崎広(おかざき ひろし)
韓国代表
崔潤和(チェ・ユンファ)
韓国代表のFW。短距離走選手並みの類まれな俊足と抜群の決定力を持つ「韓国の虎」。セリエBのレッチェからヴェルディ川崎に移籍し、鷹とJリーグやアジア最終予選で対戦する。年齢は赤星の2つ上で、ワールドユースの戦いを描いた飛翔編にも1コマのみ出演したが、ベスト8でイタリアに破れている。
ジュベスタン代表
アジア勢
イタリアユース代表
アレッサンドロ・ロッシ
サルバドーレ・ビアンキ
セリエA・カリアリ所属のFW。176cm(と選手名鑑に載せているが、ロッシ曰く本当は173cmくらい)。ラジオで試合を聞き、見た事のないプレーを想像してきたために常識に囚われないシュートテクニックの持ち主で、利き脚だけでなく時にはかかとや尻を使ってシュートを放つ。鷹とも共通するで「サッカーはだまし合い」の感性を有しており、イタリアユース代表では決勝の日本戦においてマーク役の立浪を翻弄する。日本人女性との交際歴があり、日本語を喋ることができる。友人は犯罪者(ヤク中・ポンビキ・泥棒)やスケコマシ(いずれも登場はしない)で、自身も時計を盗んで刑務所に入っていた。収監時代に警察チームと、自身のいる囚人チームの試合を見たカリアリのスカウトが、面白がって契約した(本人談)。ワールドユースでは鷹と得点王を争ったが、1点差で得点王を逃す。
アルゼンチンユース代表
ビーベ