Op.ローズダスト
以下はWikipediaより引用
要約
『Op.ローズダスト』(オペレーション・ローズダスト、Operation ROSE DUST)は、福井晴敏による日本の小説。
時系列的には『亡国のイージス』の続編にあたる。
概要
2003年5月から2004年12月まで、文藝春秋の『週刊文春』で毎号6ページずつ掲載された、福井晴敏初の連載小説。雑誌掲載時には北村公司による挿絵が各話2枚ずつ掲載されていた。ただし誌上での連載で発表されたのは物語の途中までであり、クライマックスを前にして連載が終了した。連載終了から1年以上経った2006年3月に、大幅に加筆・訂正を施し、さらには原稿用紙およそ800枚分のクライマックスを書き下ろした上で、上下巻に分けて単行本が刊行された。文庫本は2009年2月に上中下巻に分冊して文春文庫より刊行された。
第19回山本周五郎賞候補作。2006年の「週刊文春ミステリーベスト10 国内部門」では第9位。
あらすじ
ネット財閥の異名を持つ巨大企業グループ「アクト・グループ」の役員を狙った連続爆弾テロが発生した。実行犯は「ローズダスト」を名乗る5人のテロリストグループ。警察庁・警視庁・防衛庁による合同捜査において、警視庁公安部の並河次郎は防衛庁情報本部の丹原朋希と共に爆弾テロの捜査に参加することになるが、その過程で丹原とローズダストの間に横たわる深い因縁を知ることになる。
登場人物
並河次郎(なみかわ じろう)
警察官。階級は警部補。警視庁公安部公安第四課所属。50歳。
テロ事件の捜査において、防衛庁から出向してきた丹原朋希と不本意ながらもコンビを組むことになる。
面割(相貌識別)の達人であり、その道のプロによる変装すらも見破ることが出来る。
過去のとある事件のせいで仕事に対する情熱を失っており、周囲からは「ハム(公安)の脂身」と蔑まれている。ただ職場での立場や朋希の想像とは異なり、家庭では円満な家族関係を築いているマイホームパパ。
まだ若く無表情で似合わないスーツを着込んだ朋希を見て、ひそかに「七五三」と呼んでいた。
江東区にある朋希をして曰く「親の代から住んできた」と思わせる二階建ての木造家屋に妻、一人娘の恵理と住んでいる。
かつて公安の秘匿部隊「チヨダ」に在籍していた。下記の『マル六の作業玉』とはその頃からの付き合いであり、マル六の作業玉が情報を提供する相手が常に並河なため、「チヨダ」を抜けた後も警視庁本部に勤務し続けている。
丹原朋希(たんばら ともき)
テロ事件の捜査のために防衛庁情報本部から警視庁に出向してきたという自衛官。階級は三曹。24歳。
実際は、その情報本部を隠れ蓑として運営されている非公開情報機関の防衛庁情報局(DAIS)に所属している。
かつて父親が家出をし、母親からは虐待を受けていた。母が施設に入ってからは叔父の家に姉と共に預けられたが、姉は叔父からの度重なるレイプを苦に自殺した。復讐として叔父を殺害した後に、計画力・行動力を見込んだDAISのリクルーターにスカウトされた。
テロリストグループ『ローズダスト』のメンバーとは、かつて「オペレーションLP」で参加した仲間であり、かつリーダーである入江一功は、深い因縁がある。それを利用できるという判断から捜査に参加することになった。
数年前の任務「オペレーションLP」による事故で想いを寄せていた堀部三佳を亡くし、仲間達と袂を分かって以降は、誰に対しても心を硬く閉ざしていた。しかし、共に捜査する並河との公私にわたる日々を送り、また並河の一人娘である並河恵理との交流で徐々に心を開いていく。
仕事のない時は自堕落な生活をしており、東中野にある散らかりきった自室は並河に「格納庫」と評されるような有様である。また(職業柄)世間とは無縁に近い生活を送ってきたので、携帯電話のメールアドレスが変更できることを知らないなど、天然ボケした部分がある。
入江一功(いりえ かずなり)
連続爆弾テロの犯人グループ「ローズダスト」のリーダー。元DAIS局員である。
変装のプロであり、頭の回転も非常に速く、バイク運転など様々な分野に秀でた才能を持っているが、字はあまり上手ではない様子。
朋希とは同期で訓練期間からの友人だったが、「オペレーションLP」にて発生した“事故”により、DAISから逃走。アクトグループの会長である若林直純の手配で国外逃亡をし、テロリストとして各国を転々とする。数年後、仲間らと共に日本に帰国し、ある目的のために大規模な連続爆破テロ「オペレーション.ローズダスト」を仕掛ける。
大型のネコ科の動物を思わせる目と左眉の上を走る傷痕が特徴的で、体格は中肉中背。
作者はあるインタビューで「入江一功は、最初から常識というものはあてにならないという常識を生きている人」と発言している。
真野留美(まの るみ)
連続爆弾テロの犯人グループ「ローズダスト」の紅一点の凄腕スナイパーであり、元DAIS局員。その腕前は本人曰く、「300メートル先の10cmの標的にフルオートで弾着を揃えられる」らしく、DAISの特殊作戦部門「特殊要撃部隊」のヘリコプターパイロットからは「人間業ではない」と評される程。
左利きのため、使用する銃は排莢口を左に設定したステアーAUGである。
元々母子家庭で育ち、母親が育児放棄したのを機に不良少女となり、いわゆるヤクザを殺してしまい、それが契機でDAISに入局した。
「オペレーションLP」で出会った入江一功を意識している(本人は恋ではないと言っている)。
同作戦において発生した事故を契機にDAISから逃走し、仲間らと国外でテロリストとして活動する。数年後に日本に帰国し、仲間らと共に大規模な連続爆弾テロ「オペレーション.ローズダスト」を実行する。
山辺によれば黒髪のショートヘアで一見、少年のようにも見えるが、色艶も漂う容姿。
山辺俊作(やまべ しゅんさく)
勝良義和(かつら よしかず)
倉下充(くらした まこと)
滝沢俊一(たきざわ しゅんいち)
有働京子(うどう きょうこ)
堀部三佳(ほりべ みか)
羽住克広(はずみ かつひろ)
水月総一郎(みなづき そういちろう)
烏丸誠二(からすま せいじ)
服部謙介(はっとり けんすけ)
若杉直純(わかばやし なおずみ)
並河恵理(なみかわ えり)
マル六の作業玉(まるろくのさぎょうだま)
用語
作中で使用される専門用語。本作品は『川の深さは』『亡国のイージス』その他の作品と共通した世界における物語として描かれているため、これらの作品と共通する用語も多い。
作中のキーワード
ローズダスト
オペレーションLP
北朝鮮政府の中でも指折りの実力者である高官の元に潜入工作員を送り込む為の画期的なヒューミント作戦だったが、アメリカ同時多発テロ事件を契機とした国際情勢の変化により中止が決定。しかし思わぬ展開で「事故」が発生し、堀部三佳は情報漏洩防止のために清算、生き残った現場要員のうち入江など多くは国外に逃亡する一方、丹原などはDAISに留まった。
アクト・グループ
90年代に店頭公開した後、インターネット分野への集中投資により「ネット財閥」と呼ばれるほどにまで発展し、ITバブルの崩壊により経営が悪化したものの、それでもなお1兆円近い含み益を有するとされている。子会社として金融サービスを担当する「アクト・ファイナンシャル」を始めとする完全子会社群や情報検索サービスを提供する「ダイナソー」の他、後述するTpexの開発に携わっていた中堅火薬メーカーの「大和化成」など積極的なM&Aによって傘下に収めた子会社もある。
集まり
政治家・官僚・弁護士・銀行家・企業家・医師など、多種多様な職業の人間がいる。その中には警察関係者および自衛隊関係者も存在する。
神泉教(しんせんきょう)
TPex(Thermit Plus Extra)
原型となったTプラスの3倍強の威力を発揮するが、起爆臨界まで約15分を要し、その間に空気に触れた場合効力を失って無力化されてしまう弱点を抱えている。また、一定の電磁波を輻射するために位置を探知することができ、劇中では探知用センサーである「TPexセンサー」が登場する。
警察
作中に登場する警察関連用語の説明。詳細はそれぞれの記事を参照。
警察庁
警視庁
チヨダ(サクラ)
「サクラ」はチヨダの前身。
特殊急襲部隊(Special Assault Team / SAT)
銃器対策部隊
特殊捜査班(Special Investigation Team / SIT)
自衛隊
作中に登場する自衛隊関連用語の説明。詳細はそれぞれの記事を参照。
防衛庁
自衛隊
防衛庁情報局(Defense Agency Information Service / DAIS)
本作品含む福井晴敏の作品に共通して登場している。
防衛庁情報本部(Defense Intelligence Headquarters / DIH)
本作品含む福井晴敏の作品においては、防衛庁情報局はこの防衛庁情報本部を表の顔として運営されているという設定である。
特殊要撃部隊(Special Operation Force / SOF)
本作品に登場する729SOFは、前作『亡国のイージス』の終盤で設置が決定していた部隊。隊長は『亡国のイージス』作中で壊滅した920SOFの生き残りである古森で、50名弱で構成される。
SOFでは部隊名として冠される数字を、高い功績をあげた局員のIDとする慣例があり、「729」はかつて920SOF特別班に所属していた如月行二曹のID。前作『亡国のイージス』などの主人公であり、『亡国のイージス』における功績によって、「729」の数字が冠されたと思われる。
詳しくは防衛庁情報局の記事の「SOF」の欄を参照。
FSM(First Strike Misson)
詳細は防衛庁情報局の記事の「FSM」の欄を参照。
特別警察補助官(Special Assisting Police Officer / SAP)
普通警察補助官(Assisting Police Officer / AP)
普段は、会社員、自営業など別の職業を生業とする一般人として過ごしており、招集があれば本職の合間をぬって任務に就く。
CO(Case Officer)
特殊作戦群(Special Forces Group / SFGp)
実際の特殊作戦群が本作品の物語で出動しなかったのは、本作品の年代では設置後間もなく、実戦運用するレベルに達していなかったため、という趣旨の解説がある。
補足
- 本作品が執筆されるに当たって、作者の公式サイトで「作中お名前登場企画」という企画が行われ、応募者の中の幾人かの名前が作中に登場している。
- 本作品の単行本が刊行された際、上下巻を購入した読者に抽選で、「Op.ローズダスト・ペンダント」をプレゼントするという企画が行われた。これは作中に登場するペンダントを実際に製品化したもので、デザインはペンダントヘッドに白蝶貝の薔薇を組み合わせたもの。薔薇の台座部分にはキュービックジルコニアも使用されている。特設サイトのブログで明かされたところによると、デザインから製作まで有名な老舗アクセサリーショップが手がけており、「結構お値段の張る代物」であるとのこと。
- 本作品の単行本が刊行される際に開設された特設サイト内の期間限定更新ブログでは、「Op.ローズダスト・がっかり質問コーナー」と称して、作者が本作品に対する読者からの質問に答えるという企画が行われた。企画の主旨では特に、「なるべくくだらない質問」「くだらない・どうでもいい・がっかりするような質問」に答えるというものになっている。この中で、登場人物の好きな食べ物や好きな映画などが明かされ、本編の内容を若干補足する内容も語られた。
書籍情報
単行本
文庫本