漫画 小説

TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す 〜ヘンダーソン氏の福音を〜


小説

著者:Schuld,

出版社:オーバーラップ,

掲載誌:小説家になろう,

レーベル:オーバーラップ文庫,

連載期間:2019年1月19日 -,

巻数:既刊9巻,

漫画

原作・原案など:Schuld,ランサネ,

作画:内田テモ,

出版社:KADOKAWA,

掲載サイト:電撃コミック レグルス,

レーベル:電撃コミックスNEXT,

発表期間:2022年8月12日 -,

巻数:既刊1巻,



以下はWikipediaより引用

要約

『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』(てぃーあーるぴーじープレイヤーがいせかいでさいきょうビルドをめざす ヘンダーソンしのふくいんを)は、Schuldによる日本のライトノベル。イラストはランサネが担当。

2022年8月12日よりWEBコミックマガジン『電撃コミック レグルス』(KADOKAWA)にて内田テモによるコミカライズが配信開始。

概要

いわゆる「異世界転生もの」で、主人公が現代日本人としての人格と知識を持ったまま異世界へ不可逆的に移動し、冒険を繰り広げる中で現代日本における人格や知識を生かして活躍する物語。元は小説投稿サイト「小説家になろう」にて『ヘンダーソン氏の福音を【データマンチが異世界に転生してTRPGをする話】』のタイトルで公開されたものだったが、書籍化にあたり現在のタイトルへと改題された。

副題の「ヘンダーソン氏」とは、テーブルトークRPG(以下「TRPG」)においてゲームマスターが想定した本来のストーリーとは大きく異なるゲーム進行になったものの、通常は破綻するゲーム進行を大団円へと導いたキャラクターの名。そこから「ゲームマスターの想定したストーリーからどれほど逸脱しているか」を表す指標を「ヘンダーソン・スケール」と呼ぶようになった。本作においては「ヘンダーソン・スケール x.x」と題された小編がたびたび挟まれ、本編の裏事情や本編とは異なる主人公のIFルートが描かれる。

本編は「主人公の年齢と舞台となる季節」で章立てされており、作中における大まかな時間経過を示している。なお主人公は初秋生まれと言う設定のため、季節が夏から秋へと変わるタイミングで主人公の年齢がカウントアップする。 WEB版と書籍版では、大筋は一致するものの、WEB版では一文や数行で終わっていたり全く触れられなかったりしたエピソードが書籍版にて書き下ろされたり、一部のエピソードの途中経過がWEB版と書籍版で大幅に改変されたりしている。本項では書籍版の設定を中心に解説する。

あらすじ

日本人男性「更待 朔」(ふけまち さく)は30代前半にして病没し、とある異世界にて農家の四男坊「エーリヒ」に転生したが、その際、彼を転生させた高位存在より「自身の能力を任意で伸ばすことが出来る権能」を与えられた。それはまるで、様々な冒険で稼いだ経験値を元に自身の能力を任意で伸ばせるがリセットはできない「TRPGのキャラクター構築システム」のようであった。そして幸か不幸か、生前の朔は、自身のキャラクターをルール上最強の存在にすることを目指す「データマンチ」と呼ばれる種類のTRPGプレイヤーだった。こうしてエーリヒは自分自身をこの世界で「ルール上最強のキャラクター」にすべく、朔としての経験と知識を生かして成長し、冒険を繰り広げることになる。

少年期 魔法使いの丁稚編(2巻~5巻)
幼馴染みの蜘蛛人マルギットと共に冒険者となるべく鍛錬に励んでいたエーリヒは12歳の春祭りの日、荘を訪れた魔導師アグリッピナ・デュ・スタール男爵令嬢に妹エリザ共々魔導の才を見出される。そして魔導師の弟子となったエリザの学費を稼ぐため、アグリッピナに仕える丁稚となり帝都へ移り住むことになる。帝都では、心ならずもアグリッピナの師匠である魔導師マグダレーネ・フォン・ライゼニッツ卿に気に入られ、偶然から魔導院で学ぶ苦学生ミカや夜陰神に仕える尼僧ツェツィーリアと知り合い、怠惰な主人を世話しつつ、故郷では縁の無かった魔導や礼儀作法、貴族社会などについて学ぶ機会を得、目指すべき「最強のキャラクター」の形も見えてくる。しかし行く先々で思い掛けない事件にも巻き込まれてしまう。
青年期 辺境のLv1ファイター編(6巻~8巻)
数々の事件が縁で思いがけずエリザの後援者を得たエーリヒは、エリザが魔導院の聴講生となった15歳の秋、成人を機にアグリッピナの許を辞し晴れて自由の身となる。そして念願の冒険者となるべくマルギットと共に故郷を発ち、西の辺境都市マルスハイムを拠点に冒険者としての第一歩を踏み出す。マルスハイムでは、新人冒険者への“洗礼”を経て同業の巨鬼ロランスと知り合い、近隣で知られた英雄譚を持つ武僧フィデリオの下で修行を積みつつ、下積みの雑用を日々真面目にこなし、異例の速さで名を上げていく。その名が同業者に広まった頃、“同期”の冒険者でありエーリヒに強いライバル心を抱く剣士ジークフリートと相方の魔法薬草医カーヤと出会い、共に仕事を請けるようになるが、4人が新たに請け負った仕事には思わぬ強敵が待っていた。

青年期 辺境の中堅冒険者(Lv3ファイター)編(9巻~)
英雄譚に歌われるほどの活躍で名が知られるようになったエーリヒは、マルスハイムを拠点に冒険者互助組織「剣友会」を結成し、日々仲間と共に仕事や鍛錬に励んでいた。

主な登場人物

エーリヒ

本作の主人公。ヒト種(メンシュ)の男性。5歳のときに前世を思い出したため、精神は肉体年齢より30歳ほど高い。同時に「TRPGのキャラクターのように自身を任意に成長させられる権能」を与えられたと思い出し、自分自身を「TRPGキャラクター」に見立て最強のキャラクター構築を目指すようになる。成長するにつれ徐々に前世の記憶を忘れつつあるが、時折「最強のキャラクター構築」に役立つ知識を思い出すことがある。また前世で男女交際の経験があるためか、幼少時から幼馴染のマルギットが向ける好意に気づいており、エーリヒ自身も彼女を憎からず想っている。
普段は過保護で世話好きな常識人だが、データマンチな性格から客観的な状況分析に基づき効率的な「自身の」活用を模索するため思考が柔軟で適応力が高く、前世の知識に基づいた発言を周囲に訝しがられる場面も間々ある。
金髪碧眼で、自身に与えられた権能を用い〈母親似〉の特性を取得したため、線が細く女性的な顔立ち。元々妖精に好かれやすい容姿だったが、魔導に開眼し意思疎通が可能になって以降は、様々な妖精から“祝福”されるようになる。この“祝福”の影響で未来永劫、顔には傷が残らず、髭も生えず、背が伸びないことが約束されてしまい、特に身長に関しては戦闘で不利となるため、かなり不満に思っている。成人が近づくにつれ普通の妖精には飽きられたものの、彼の魂に魅入られたウルスラとロロットは彼の魂が変質しない限り共にあることを約束した。
魔法・魔術の基礎ステータスを整えながらも、当初は指導者がいなかったため、効率の悪さから関連する特性やスキルの取得を控えていたが、その「魔導特性の歪さ」から妹エリザと共にアグリッピナに目を付けられた。そしてエリザの学費を捻出するためアグリッピナの丁稚となり、「学費が不要な程度」に魔導の指導を受けられることになったため、「剣術を主軸に戦い、補助的に魔法を用いる前衛」タイプの魔法剣士と言う方向性を固めていく。権能と前世のTRPG経験、思わぬ強敵に遭遇する不運(幸運?)から無茶な戦闘に挑む傾向はあるものの、その「キャラクター構築」は彼の権能を知らないアグリッピナやマルティンにも高く評価されている。
マルティン1世の再即位に伴い宮中伯となったアグリッピナから体裁のため「古参の家臣」として扱われ、彼女を巡る陰謀に巻き込まれ事務や護衛などブラック企業顔負けの職務をそつなくこなした結果、家中の者たちから「アグリッピナの懐刀」と見做されるようになる。念願の冒険者となるべく職を辞すも「アグリッピナが有能な懐刀を手放すはずがない」、同時期にアグリッピナ個人が奇譚蒐集を皇帝承認で始めたことも「奇譚蒐集を名目とした諜報部隊」と勘繰られ、彼の働きを知る者からは「アグリッピナの密命を受け彼女の密偵となった」と思われている。
マルギットと共に西の辺境マルスハイムを拠点に冒険者としての活動を始め、他の同期より早い昇級などでマルスハイムでも目立つ存在となり、徐々に特徴的な“金の髪”が二つ名として広まっていく。本人は剣の腕前を披露した“石塔斬り”の方が好みだが、こちらの異名を知るのは一部の冒険者のみ。活動当初は様々な氏族に勧誘されていたが、書籍版においては漂流者協定団との騒動を経て一部の冒険者にとってアンタッチャブルな存在と化している。
冒険者となって1年経たないうちに、辺境で誰もが知る“災厄”のひとつを除く偉業を成したため、政情不安な中で有能な手駒を欲していたマルスハイム辺境伯に目を付けられる。しかしエーリヒ自身はそれを望んでおらず、無用なしがらみから逃れ、英雄らしい冒険を満喫すべく、同好の士を集めた冒険者組織「剣友会」を立ち上げる。
主な装備 更待 朔(ふけまち さく) エーリヒの前世。現代日本に生きていた男性で、詳しい生没年は不明だが「我慢弱い乙女座のパイロット」「さては○○だなオメー」などと言ったモノローグから、西暦2000年代後半から2010年代前半のサブカルチャー知識を持ち合わせていることが分かる。また令和の元号を知っており、少なくとも2019年4月までは存命だった様子。家族は両親と既婚の姉、姪の存在が語られており、未婚だが男女交際の経験はあるらしい。女性キャタクターのロールプレイの研究と称して一時期ハーレクインにハマっていたなど、乱読家であることが窺える。喫煙者だったと思しき描写もある。大阪出身で国立大学文系学科卒業後、商社で管理職を務める傍ら「趣味を十分に楽しんだ」が、若年性の膵臓癌により30代半ばで没した。 TRPGに関しては「1000点で言語1つ覚えられるセージ技能」「某ドラゴンと迷宮の物語」「モダンホラーとコズミックホラー入り乱れるPCが限りなく無力なシステム」などへの言及がある。TRPGにおいては自身が主役となることに拘っておらず、主役を支える役回りを好んでいたとのこと。またダイスの出目が悪いため、幸運に頼った能力を避け確実性が担保された「固定値」を重視する傾向がある。他にもボードゲームやTCGに関したモノローグもあり、それらのプレイ経験もある様子。 ヘンダーソン・スケール1.0 Ver0.1(デキ婚ルート) IFルートのひとつで、冒険者の鍛錬中にマルギットとの野営でできちゃった結婚し、彼女の家の婿養子として荘で猟師と予備自警団員を兼業するルート。イゾルデと言う母親似の娘がいる。なお作者によると、他のルートでは魔術やコネ等に割り振られるはずの熟練度のほとんどを、このルートでは剣士としてのスペック向上につぎ込んでいるため、純粋な剣士としては最も高スペックな「村の剣聖」でもあるとのこと。 ヘンダーソン・スケール1.0 Ver0.2(妖精狼ルート) IFルートのひとつで、妖精たちから“祝福”を受けすぎた結果、迷い人を助ける妖精“送り狼”となるルート。前世を含め人間だった頃の記憶はほぼ失ったが、面倒見の良い性格は変わっておらず、それが“送り狼”と言う妖精の在り方と合致した様子。彼の剣と革鎧はエリザが受け継ぎ、“妖精狩り”の異名で知られる冒険者となって「兄」を取り戻すべく妖精狼に挑み続けている。 ヘンダーソン・スケール1.0 Ver0.3(漂泊卿ルート) IFルートのひとつで、冒険者になる準備として魔導院の聴講生へと進んだ結果、20代にして教授位を得てエーリヒ・フォン・ダールベルク卿となるルート。通常は複数人で発動する戦略級術式に近い火力を単身で発動する秘匿術式を複数操る払暁派随一の戦闘魔術師にして、幻想種研究の大家として知られる。冒険者への憧れは、「漂泊卿」の異称で呼ばれるほど各地を勝手気ままに放浪する癖として残る。ある没落貴族の息女を直弟子にとっており、彼女を大変可愛がっている。 ヘンダーソン・スケール2.0 Ver0.1 書籍版4上巻に書き下ろされたIFルートで、アグリッピナに10年分の休暇獲得のため身売りされ、ライゼニッツ卿の“客員聴講生”となるルート。かつて“月明かりの君”なる二つ名を持つ戦闘魔術師エーリヒ・フォン・ダールベルク卿として活動していたが、齢70を超えた現在はライゼニッツ卿の宝物庫の番人となっている。 ヘンダーソン・スケール1.0 Ver0.4(吸血種ルート) IFルートのひとつで、マルティン戦の後、本能に負けたツェツィーリアに血を吸われ彼女の血を注がれて、彼女の眷属たる吸血種エーリヒ・フォン・ヴォルフ卿となるルート。ツェツィーリアの即位に従って帝国騎士となり、テレーズィアを手本に開き直って吸血種の特性を活かした戦いを重ね「最強ビルド」を目指した結果、「吸血鬼」と言う吸血種への蔑称が、三重帝国においては彼個人の異名と化している。吸血行為を忌避しないため本来なら主の血が薄まり独立した吸血種になれるが、ツェツィーリアの眷属であり続けるべく彼女に血を捧げ続けている。 ヘンダーソン・スケール2.0 Ver0.2(死霊ルート) IFルートのひとつで、アグリッピナに持ち込まれる縁談の“弾避け”として彼女と強引に結婚させられエーリヒ・デュ・スタール伯爵となり、一男三女を儲けて106歳で逝去した後、アグリッピナたちが開発した「死霊化術式」によって40年後に若き姿の死霊として蘇ったルート。周囲からは仲睦まじい夫婦と見られ慣用句や題材とした演劇まで生まれたほどだが、結婚当初は冒険者への夢が断たれたことで妻を恨んでいた。当てつけに他の女性との間に子供まで儲けたが、その後アグリッピナとの間に最初の娘が生まれた頃から態度を軟化させ、数百年を共に過ごした現在は「主従」から表向きだけであれ「夫婦」と言う対等の立場になった以上の関係の変化はない様子。ちなみに物体の透過には蘇ったその日のうちに慣れ、飲食不要となった体を長時間の仕事や読書に有効活用するなど、異常なまでの適応力には妻からも呆れられている。なお戦闘に関しては「アーチエネミーとしてグランドキャンペーンとかのエネミーにされても見劣りすることはないと思う」程度には強くなった自覚もある。また息子からは「(杖を突くほどの老体になっても)飽きないほど面白く、愉快な生き方をしている人」「(アグリッピナが)放っておけばもっと面白く生きてくれたかも知れない人」と評され母と結婚し立場に縛られたことを惜しまれている。 ヘンダーソン・スケール1.0 Ver0.5 書籍版6巻に書き下ろされたIFルートで、マルギットと共に冒険者として活動する傍ら、本当にアグリッピナの密偵となるルート。主であるアグリッピナとグンダハールが状況に応じて手を組んだり敵対したりするため、彼らの部下であるエーリヒとナケイシャも敵味方が複雑に交錯する間柄となっており、マルギット公認の上でナケイシャとの間に娘を儲けている。 ヘンダーソン・スケール1.0 Ver0.6 書籍版7巻に書き下ろされたIFルートで、マルスハイムで最も悪名高い3つの冒険者氏族を潰した結果、生じた冒険者氏族の力関係の空白を埋めるべく、裏の顔役とも言える「調整役」となるルート。氏族間協定の場として一流の冒険者しか利用できない酒保“金の牙酒房”のオーナーとなっている。 ヘンダーソン・スケール1.0 Ver0.7 書籍版8巻に書き下ろされたIFルートで、マルスハイム辺境伯に活躍が認められて騎士叙勲され、帝国騎士エーリヒ・フォン・ヴォルフ卿となるルート。自らの判断のみで動ける遊撃騎士としてマルスハイムを脅かす土豪達を倒し続け「辺境の盾」の異名で呼ばれるようになっており、辺境伯や周辺の者には疎まれるものの庶民には英雄視されている。アグリッピナの騎士叙勲を蹴ってまで冒険者になりながらマルスハイム辺境伯の叙勲を受けたことで彼女に失望されたことが、かなり堪えたらしく、遊撃騎士となってからはアグリッピナの意向を忠実に守っている。 ヘンダーソン・スケール1.0 Ver0.8 書籍版9上巻に書き下ろされたIFルートで、マルスハイム辺境伯のしがらみから逃れるべく北方に鞍替えし、極地圏や北方半島圏から来た海賊退治をしているうちに北方半島圏の“神”の呪いを受けたルート。応報の女神を旗印に海賊に家族を殺された復讐者たちを率い、海賊たちに一切の容赦をしない様から帝国民からは“海賊吊し”、海賊たちからは“詩なき剣のエイリーク”として知られている。
焦点具“月の指輪”。7歳の春に隊商の老魔導師からもらった指輪型の焦点具。現在主流の焦点具は効率重視のため、携帯性重視の指輪型は珍しい。エーリヒ自身は剣を振るいながら魔導が使える利点から、「完璧に魔法剣士向き」と高く評し常時身に着けている。 長剣“送り狼”。父から旅立ちの門出に譲り受けた長剣。元々は父が傭兵時代に勝ち取った戦利品。魔法的要素はないが、複数の素材で積層構造を作る模様鍛造で作られた逸品。 短剣“妖精のナイフ”。廃館で閉じ込められていた「風の妖精」ロロットを救出したお礼として提示された「お肉しか切れない」(俗に装甲点無視とも云う)カランビットナイフ。 両手剣“渇望の剣”。前の持ち主が次代の持ち主を見出すことができずに死亡した結果、持ち主を求めて自力で魔境を作り出していた魔剣。魔境を制覇したエーリッヒを持ち主と認識している。人格の様なものを有しており、執拗に使ってくれと脳に直接呼びかけてくる(渇望の由来)・持ち主以外が持つことを拒絶する・捨てても戻ってくる等の〇ンデレで〇トーカーな気質。当初は長大な両手剣の形であったが、後にエーリッヒの体格に合わせて縮小することを覚えた。 テルミット焼夷弾。剣術だけでは対応できない強敵に対抗すべく、前世での知識を基に、単純で低燃費かつ対策困難な大魔導相当の高火力攻撃としてエーリヒが開発した魔導術式その一。棒手裏剣状の金属容器に触媒を入れ、標的に刺さった際に魔導術式により反応を起こし発火させる。酸化鉄と魔導で抽出したアルミニウムのテルミット反応により閃光と4000度以上の高熱を発する。 燃料気化爆弾“雛菊の華”。前世での知識を基に、高火力攻撃としてエーリヒが開発した魔導術式その二。外側を布で何重にも覆ったガラクタのような多重容器に触媒が入っており、多重容器を破壊し魔導術式を併用することで触媒の反応を促進し、最後に起動詠唱を唱えて爆発を起こす。 油脂焼夷弾。前世での知識を基に、高火力攻撃としてエーリヒが開発した魔導術式その三。不死者の再生を阻害すべく、粘性の油脂を目標に向けて散布し、酸素なしで燃える魔導の炎で目標を長時間燃焼させる。 刻み煙草。吸引式の魔法薬を、煙草にしたもの。魔法効果を持つ薬草や魔法薬を染み込ませたハーブ薬草などを効能に応じて調合し煙管へ詰めて煙を吸うもので、一人前の魔法使いの必需品とされる。元はアグリッピナが愛用していた品で、丁稚奉公が明ける際に成人祝いとして、煙管や煙草入れの付いた煙草盆ごとアグリッピナから下げ渡された。 カストル、ポリュデウケス。西方混血種(オステンブルート)と呼ばれる軍馬品種の牡馬2頭。元はアグリッピナが巡検の旅に使っていた名無しの兄弟馬で、丁稚として世話を任されたエーリヒが前世の知識から名付けた。アグリッピナの許可を得てエーリヒも遠出などで度々乗っていたため懐かれており、丁稚奉公が明ける際に退職祝いとして、貴族の使う馬としては引退年齢であることと「冒険者としての課題」も兼ねてアグリッピナから下げ渡された。 恩賜の指輪。ウビオルム伯爵家の家紋が刻まれた金無垢の指輪。丁稚奉公が明ける際に感状の代わりに「ウビオルム伯爵」から与えられた品で、アグリッピナに仕えたことを証明する身元保証書のようなもの。エーリヒは今後も彼女に利用される気がしたものの、受取拒否もできず下手に手放すことも出来ない代物のため、普段は見えない形で肌身離さず身に着けている。 空間遷移の箱。内側に術式陣が刻まれたエーリヒお手製の木箱。空間遷移の魔力消費を抑えるため、エーリヒが自分専用に制作した魔導具で、中身を選んで、あるいは箱ごとの空間遷移を実用レベルにする「四次元ポケット」のような代物。ただし制作時点ではエーリヒの術式レベル不足で生物を空間遷移させるには至っていない。
焦点具“月の指輪”。7歳の春に隊商の老魔導師からもらった指輪型の焦点具。現在主流の焦点具は効率重視のため、携帯性重視の指輪型は珍しい。エーリヒ自身は剣を振るいながら魔導が使える利点から、「完璧に魔法剣士向き」と高く評し常時身に着けている。 長剣“送り狼”。父から旅立ちの門出に譲り受けた長剣。元々は父が傭兵時代に勝ち取った戦利品。魔法的要素はないが、複数の素材で積層構造を作る模様鍛造で作られた逸品。 短剣“妖精のナイフ”。廃館で閉じ込められていた「風の妖精」ロロットを救出したお礼として提示された「お肉しか切れない」(俗に装甲点無視とも云う)カランビットナイフ。 両手剣“渇望の剣”。前の持ち主が次代の持ち主を見出すことができずに死亡した結果、持ち主を求めて自力で魔境を作り出していた魔剣。魔境を制覇したエーリッヒを持ち主と認識している。人格の様なものを有しており、執拗に使ってくれと脳に直接呼びかけてくる(渇望の由来)・持ち主以外が持つことを拒絶する・捨てても戻ってくる等の〇ンデレで〇トーカーな気質。当初は長大な両手剣の形であったが、後にエーリッヒの体格に合わせて縮小することを覚えた。 テルミット焼夷弾。剣術だけでは対応できない強敵に対抗すべく、前世での知識を基に、単純で低燃費かつ対策困難な大魔導相当の高火力攻撃としてエーリヒが開発した魔導術式その一。棒手裏剣状の金属容器に触媒を入れ、標的に刺さった際に魔導術式により反応を起こし発火させる。酸化鉄と魔導で抽出したアルミニウムのテルミット反応により閃光と4000度以上の高熱を発する。 燃料気化爆弾“雛菊の華”。前世での知識を基に、高火力攻撃としてエーリヒが開発した魔導術式その二。外側を布で何重にも覆ったガラクタのような多重容器に触媒が入っており、多重容器を破壊し魔導術式を併用することで触媒の反応を促進し、最後に起動詠唱を唱えて爆発を起こす。 油脂焼夷弾。前世での知識を基に、高火力攻撃としてエーリヒが開発した魔導術式その三。不死者の再生を阻害すべく、粘性の油脂を目標に向けて散布し、酸素なしで燃える魔導の炎で目標を長時間燃焼させる。 刻み煙草。吸引式の魔法薬を、煙草にしたもの。魔法効果を持つ薬草や魔法薬を染み込ませたハーブ薬草などを効能に応じて調合し煙管へ詰めて煙を吸うもので、一人前の魔法使いの必需品とされる。元はアグリッピナが愛用していた品で、丁稚奉公が明ける際に成人祝いとして、煙管や煙草入れの付いた煙草盆ごとアグリッピナから下げ渡された。 カストル、ポリュデウケス。西方混血種(オステンブルート)と呼ばれる軍馬品種の牡馬2頭。元はアグリッピナが巡検の旅に使っていた名無しの兄弟馬で、丁稚として世話を任されたエーリヒが前世の知識から名付けた。アグリッピナの許可を得てエーリヒも遠出などで度々乗っていたため懐かれており、丁稚奉公が明ける際に退職祝いとして、貴族の使う馬としては引退年齢であることと「冒険者としての課題」も兼ねてアグリッピナから下げ渡された。 恩賜の指輪。ウビオルム伯爵家の家紋が刻まれた金無垢の指輪。丁稚奉公が明ける際に感状の代わりに「ウビオルム伯爵」から与えられた品で、アグリッピナに仕えたことを証明する身元保証書のようなもの。エーリヒは今後も彼女に利用される気がしたものの、受取拒否もできず下手に手放すことも出来ない代物のため、普段は見えない形で肌身離さず身に着けている。 空間遷移の箱。内側に術式陣が刻まれたエーリヒお手製の木箱。空間遷移の魔力消費を抑えるため、エーリヒが自分専用に制作した魔導具で、中身を選んで、あるいは箱ごとの空間遷移を実用レベルにする「四次元ポケット」のような代物。ただし制作時点ではエーリヒの術式レベル不足で生物を空間遷移させるには至っていない。
マルギット

本作のメインヒロイン。蠅捕蜘蛛種の蜘蛛人(アラクネ)の女性でエーリヒの2つ上の幼馴染み。種族特性による幼い容姿と、それに反する妖艶さを併せ持つ。ヒト種で猟師の父と蜘蛛人で元冒険者の母コラレ、妹の存在が語られている。代官公認の荘園お抱え猟師の家系で、種族特性も相まって彼女自身も優れた猟師にして斥候である。幼少期よりエーリヒを特別視しており、荘内においてはほぼ公認の仲。エーリヒが丁稚として帝都へ発つ際、桜貝で作られた一組のピアスを分け合い、将来を誓い合った。丁稚奉公の明けたエーリヒが帝都から戻ると、かつての誓い通り、エーリヒの背中を守るべく、将来を約束された家業を捨て彼と共に冒険者の道を歩んでいく。拠点となったマルスハイムにて、エーリヒの相方として“音なし”の二つ名で呼ばれるようになる。エーリヒが16歳の春には、めでたく男女の仲となった。
ジーク / ジークフリート

エーリヒがマルスハイム冒険者同業者組合で出会った“同期”の冒険者の少年。マルスハイムにほど近いイルフュート荘の貧乏小作農の三男坊で、本名はディルクだが、平凡な名と人生を嫌い組合へ登録する際に改名した。英雄譚に憧れる剣士志望の少年で、その初々しさや気高さ、少年漫画の熱血主人公のような性格をエーリヒに気に入られ、半ば無理やり戦友となる。エーリヒに強いライバル心を抱くものの、彼の誘いを断り切れず、エーリヒや周囲のサポートもあって波乱万丈ながら英雄への道を歩むことになる。エーリヒの不運に巻き込まれながらも五体満足のまま戦果を挙げ、エーリヒの盟友として“幸運にして不運”なる二つ名で知られるようになっていく。ちなみにエーリヒと結託していないIFルートに置いては“剛運”の二つ名で呼ばれており、エーリヒとは対照的に元々の幸運度がかなり高い様子。家庭環境のため学識が浅く読み書きや計算は苦手で、懐が温まると気が大きくなるなど浅慮な部分もあるものの、娯楽としての英雄譚や家業の手伝いで培った林業などに関してはそれなりに知識が豊富で、エーリヒの忠告や指導を納得して受け入れるなど判断力には優れる。また本人の希望に反して剣より槍への適性が高い。相方のカーヤのことは誰より大切に思っており、彼女のためにやや無茶をする傾向がある。
剣友会の結成後は、ナンバー2として会員に慕われリーダーシップを発揮するようになる。
カーヤ・アスクラビア・ニクス

ジークフリートの幼馴染の少女で、イルフュート荘の地位ある薬草医の家系出身の魔法使い。杖や術式を使う魔術を苦手とする反面、魔法薬の調合にひときわ優れた才能を持つ。良家の一人娘で将来有望な薬草医として荘から期待されながらも、“周囲から望まれる自分”を否定したジークに惹かれ、自分を貫こうとする彼と共にあるべく冒険者の道を選んだ。彼を頑なに本名の愛称の「ディーくん」と呼ぶ。他人への気遣いから非常に聡く、微かな魔力の気配からエーリヒが魔法使いと見抜くほどだが、それ故に周囲へ遠慮しがちで自己主張に乏しい性格。ジークに従うかたちでエーリヒたちと行動を共にすることとなり、エーリヒの入れ知恵もあり苛烈な魔法薬で一行を補助する。ジークと共にエーリヒの仲間と見做され“若草の慈愛”なる二つ名を得る。

エーリヒの家族

ヨハネス

エーリヒの父。ケーニヒスシュトゥール荘においては比較的豊かなものの、ありふれた自作農家の家長。栗色の髪に琥珀の瞳で、体格も良い。エーリヒの良き理解者で、息子の将来を考え密かに様々な手回しをしていたが、エーリヒが冒険者を望むと快く承諾しつつ、簡単ながら冒険者としての基礎となる課題を用意した。
エーリヒには模範的な農夫と思われていたが、実は成人後、荘を出て傭兵を稼業にしていた時期があり、3年ほどで家を継いだ兄夫婦が逝去したため、両親に懇願され荘へ戻った過去を持つ。冒険者を望むエーリヒに理解を示したのも、自身が同様の道を望みながら断念せざるを得なかったため。エーリヒが丁稚として帝都へ発つ際、餞別として秘蔵の長剣“送り狼”を贈った。
ハンナ

エーリヒの母。金髪碧眼で、夫ヨハネスが周囲から揶揄われる程度には美人。ヨハネスと共にエーリヒの良き理解者。
ハインツ

エーリヒの3つ上の長兄。父親似。はっちゃけた性格で長男としてはやや不出来なものの、エーリヒの配慮もあり農家の跡継ぎとして育つ。成人の秋に幼馴染みのミナと結婚するが、英雄譚への憧れは捨てきれていない。
ミナ

ハインツの同い年の妻で、エーリヒたち兄妹とも顔馴染。結婚式当日に「やらかし」たハインツを尻に敷くしっかり者。
ヘルマン、(名前不明の次男)、ニコラ、(名前不明の三男)

ハインツとミナの子供たち。
ミハイル

エーリヒの2つ上の次兄でハンスとは双子。父親似。荘の顔役の次女に婿入りする。
ハンス

エーリヒの2つ上の三兄でミハイルとは双子。父親似。エーリヒの仕送りで私塾に通った結果、代官の祐筆に採用される大出世を遂げる。
エリザ

エーリヒの5つ下の妹。母によく似た顔立ちと金髪だが、瞳の色だけ父に似た琥珀色。病弱なためか小柄で年齢より幼く、末っ子で兄妹唯一の女の子のため家族全員から可愛がられており、最も歳の近いエーリヒに特に懐いている。自身からエーリヒを“横取り”するマルギットをあまり快く思っていない。
実は取り替え子によって一家に生まれた半妖精で、幼い頃から他者には見えない“お友達”とも交流があったが、周囲には全く気づかれていなかった。しかしエリザ7歳、エーリヒ12歳のときに半妖精であることが判明し、危険性を秘めたその能力を制御するため、強制的にアグリッピナの弟子にさせられた。当初は荘や家族から離れることを嫌がっていたが、アグリッピナから「今のままではエーリヒを“お友達”に盗られてしまう」と言い含められ、大事な兄を守るべく魔導師を目指して勉学に励むこととなる。
“妖精としての性質”からエーリヒに対し兄妹以上の好意を抱いているが、自覚はなく、本人はあくまで妹として兄を慕っているつもりである。そのためエーリヒとずっと一緒にいたい、彼に危険な目に遭ってほしくないと思っており、エーリヒが自ら危険に飛び込むことを止められないと悟って以降、著しい成長を遂げていく。なおエーリヒからも「世界一可愛い妹」として兄馬鹿ぶりを発揮され愛されているが、あくまで兄妹愛、家族愛の範疇であり、恋愛対象とは全く見做されていない。
元が何の妖精だったかは明らかにされていないが、香りやにおいに関する魔術に秀でた描写が見られる。IFルートによっては、非定命化したエーリヒに合わせヒト種以上の寿命と若い女性の姿を保つことが語られる。
ホルター

エーリヒが5歳のときに一家が買い入れた農耕馬。

ケーニヒスシュトゥール荘の人々

ランベルト

荘の自警団長で元傭兵。エーリヒに剣士としての素質を見出し手ずから鍛え上げた剣技の師匠に当たる。壮年を迎え傭兵を引退するにあたり、代官から直々に荘の自警団へスカウトされた歴戦の古強者で、現在でもその腕は衰えていない。
スミス

荘で唯一の鍛冶場の主人。壮年の坑道種(ドヴェルク)で、“精神年齢も含めて確実に”エーリヒより年長。エーリヒには長らく釘や包丁専門の職人と思われていたが、かつては近郊の大都市の工房で冒険者や傭兵達を相手に仕事をしていた。現在でも自警団の剣や鎧を手掛けており、兵演棋の駒一揃いの木型を代金代わりにエーリヒの革鎧を仕立てた。その腕前は、帝都で革鎧を修繕した職人からも絶賛された程。

帝都および周辺地域の人々

アグリッピナ・デュ・スタール

長命種(メトシェラ)の女性でライン三重帝国魔導院の正規研究員である魔導師(マギア)。長い銀髪を結い上げ片眼鏡をかけた、薄柳と紺碧の瞳を持つヘテロクロミアの美女で、年齢は登場時点でおよそ150歳。セーヌ王国の伝統ある名家の男爵令嬢で、跡取り娘としてひととおりの教育を受けた生粋の貴族、かつロストテクノロジーに近い魔法を日常的に操る非常に優秀な魔導師だが、その人格は徹底的に自堕落で怠惰で「怠けるためなら手段を問わず労力を惜しまない」一面がある。帝都の工房に引きこもる口実としてエリザを弟子に取り、エリザの学費を捻出するためと言う建前で、その実は便利な小間使いにすべくエーリヒを丁稚に雇う。他人に興味なく子供の扱いも不慣れながら、指導者としても優秀で、弟子のエリザや丁稚のエーリヒに対しては意外な面倒見の良さも見せる。また無類の物語好きであり、人物伝などを読み漁った結果「他者の人生こそ最高の戯曲である」と思い至り、他者が「何かやらかす」のを傍で眺めるのが最高の娯楽だと思っている。そのため期待以上に有能かつ「やらかす」エーリヒのことはかなり気に入っている様子。エーリヒからは残念美人と評され、強力なコネであり魔導について指導してくれた師匠であると同時に、その悪辣さから密かに強敵認定されている。
魔導院においては、問題児の巣窟たる払暁派の魔導師でも前代未聞の問題児で、教授になれる才能と実績を持ちながらも、教授の義務を疎み気ままに研究に没頭したいがため研究員の地位に留まっており、師匠であるライゼニッツ教授の頭痛の種となっている。その師匠との諍いの末、20年ほど前に無期限の巡検の旅に出され、見出したエーリヒとエリザの兄妹を出しにして師匠に帰院と休暇を認めさせた。その後ライゼニッツ教授の策謀により、マルティン1世の再即位に伴い宮中伯に任じられ空位だったウビオルム伯爵位と同領地を与えられた。アグリッピナ自身は不本意ながらも、皇帝や師匠の権威も利用しつつ適度に真面目に宮中伯を務めることが「最も面倒くさくない」との判断から、状況を受け入れ三重帝国の重鎮「アグリッピナ・フォン・ウビオルム伯爵」として活動することになり、丁稚奉公の年季が残り1年となったエーリヒに“貴族の側仕え”としての仕事を任せる。なお彼女自身が三重帝国の政界においては外国から来た新参者であるため、陰謀に巻き込まれることは予想済みであり、エーリヒの実力を認め信頼すると同時に“貴族の側仕え”として彼に任せられる面倒ごとを押し付ける思惑もある。エーリヒが職を辞すのを認めつつもその有能さと使い勝手の良さを惜しんでおり、帰参したくなったらいつでも歓迎するとの言葉を贈った。
マグダレーネ・フォン・ライゼニッツ

元はヒト種であった死霊(レイス)の女性で魔導院の教授を勤める魔導師。200年前より払暁派ライゼニッツ学閥を主宰しており、アグリッピナの師匠でもある。見た目は10代後半から20代前半の、すらりとした長身で、垂れ目に泣きぼくろのおっとりした印象の母性的な美女。率いる学閥は現在では魔導院五大学閥の一角をなすほど、指導力にも政治力にも優れた超一流の人物だが、重度の生命礼賛主義者でもあり、アグリッピナが連れ帰ったエーリヒとエリザの兄妹を一目で気に入る。お気に入りの子に自分好みの贅を尽くした衣装を着せて愛でることを至上の趣味とし、悦に入るだけなので無害ではあるが、エーリヒは耳目を集める衣装の恥ずかしさと高価さに耐えられずにいる。それらを代償に様々な恩を受けているものの、死霊であることに加えその変態ぶりから、エーリヒからは密かに強敵認定されている。その実力は、アグリッピナが「防御の硬い帝都を1人で半壊させられるだろう」と評するほど。
優秀ながら研究員に留まっているアグリッピナを「暇に任せて気ままに研究させていては将来ろくなことにならない」と画策し、マルティンに引き合わせ彼女を教授に昇格させると同時に仕事に忙殺されるよう仕向けたものの、教授昇格試験にてアグリッピナに核爆弾級の研究論文を発表されたことにより、彼女と一蓮托生にならざるを得なくなった。
ミカ

魔導院の聴講生。癖のある黒髪に中性的な声と美貌を持つ少年?。黎明派のハンナヴァルト教授の指導下で造成魔術を学ぶ苦学生で、故郷である北部地方の貧しいインフラを整える技術を学ぶため代官からの推薦を受け魔導院に入学した。偶然からエーリヒと知り合い、歳も近く魔導院では数少ない庶民出身であることからエーリヒと意気投合し親友となる。前世で大卒だったエーリヒにも感心されるほど、頭が良く勉強家かつ努力家で、IFルートでは史上最年少で教授位に就いたことが語られている。
定期的に性別が変化するヒト種の近縁種「中性人(ティーウィスコー)」で、男性体、性別を持たない中性体、女性体の姿を持つ。魔導院に入学したての頃、それを学友達に珍しがられたことがトラウマとなり、学友達とは距離を置き、最初の友人となったエーリヒには打ち明けられずにいた。数ヶ月後、エーリヒの誘いでヴストローへ同行した際に知られるが、中性人であることを受け入れ変わらぬ友情を誓ったエーリヒに“特別な思い”を抱くようになる。
マリウス・フォン・ファイゲ

古き樹人で、魔法で写本を作る“複製師”。その腕前は「作った写本は原本とうり二つ」と高く評され貴族位を与えられたほどだが、かなり偏屈な性格で、帝都での仕事に倦み疲れ、現在は故郷のヴストローで隠居している。その実、庶民的な詩や冒険譚、英雄譚を好むオタク気質の趣味人でありながら、好みに合わない貴族向けの論説など“高貴な”本の写本ばかり依頼される故の偏屈さであり、意気投合したエーリヒには時に気さくに接し時に思慮深さを見せる。
エーリヒを気に入り“ちょっとしたお使い”を依頼するが、それが思わぬ事件へと発展することになる。
セス / ツェツィーリア

夜陰神に仕える年若き吸血種の尼僧。登場時点でヒト種の10代ほどの外見、実年齢は40歳を過ぎたばかり。栗色の髪と赤みを帯びた褐色の瞳を持つ色白の美少女。貴種の娘らしい淑女で兵演棋を嗜み、エーリヒと一局指したいがために、彼が開いた駒売りの露店に足繁く通う。両親の意向で僧院に入れられた箱入り娘で、清楚で大人しそうだが好奇心旺盛で芯が強く負けず嫌いで、一度言い出したら聞かない頑固な面がある。兵演棋の打ち筋は早指しの正統派ゴリ押し型。
本名はコンスタンツェ・ツェツィーリア・ヴァレリア・カトリーヌ・フォン・エールストライヒ、マルティンの娘でエールストライヒ公爵家の姫君。上述の髪と瞳の色はヒト種に擬態できる奇跡によるもので、本来の髪の色は夜空を思わせる黒、瞳の色は濃い鳩血色の紅玉を思わせる赤。父からは彼が付けた「コンスタンツェ」の愛称である「スタンツィ」と呼ばれるが、この名を気に入っておらず、普段はお気に入りの名である「ツェツィーリア」または愛称の「セス」と名乗っている。未成年ながら父に為政者の資質を見いだされ、無理やり帝位に就けられそうになるが、偶然からエーリヒとミカの助力を受けることになる。一庶民に過ぎないエーリヒやミカに対しては、本来であれば会うことも叶わない皇統家に連なる身分を隠すため、大伯母テレーズィアの配慮により名家の子女「ツェツィーリア・ベルンカステル」と名乗ることになる。
マルティン1世 / マルティン・ウェルナー・フォン・エールストライヒ

帝国の三皇統家の一画を担う吸血種エールストライヒ公爵家の現当主。登場時点でヒト種の20代半ばほどの外見、実年齢は400歳弱。白金の髪と銀色の瞳が印象的な絶世の美男。かつて三重帝国皇帝を3選45年務めた“元皇帝”で、非定命である吸血種故に安定した治世を築き、「無血帝」の異名を持つ。
公務を離れれば魔導生命体の研究家として知られ、様々な魔導生物を生み出し使い魔とする優秀な魔導師。中でも“三頭猟犬”は帝城の防備などに広く使われている。魔導院ではその立場上アンタッチャブルであり、現在は特定の閥に属していないが、かつては中天派に属していた。家名に頼らず自らを周囲に認めさせるべく「知恵」を研鑽し続けたため、吸血種としての能力はさほど高くないが、それでも同族のほとんどを圧倒できるだけの魔導を修めた。そのため魔導師として先生もしくは教授と呼ばれるのを好み、見込みある魔導師や聴講生の後援は惜しまない篤志家でもある。エーリヒがとある魔術を試行した場に偶然居合わせ、密かに彼に目を付けていた。
内政でも外交でも調整役たる立場ゆえ「拷問椅子」とも言われる帝位の4選目を避けるべく、娘に公爵家の家督と帝位を継がせようと画策する。その最中に“期待の新人”として目を付けたエーリヒに再会、行方不明の娘を探し出す以上に彼が見せてくれる「未知」を楽しみたいがために彼と激突する。しかし伯母の介入により娘への譲位は叶わず、父の威厳を保つべく再即位する。また同時期、ライゼニッツ卿の画策によりアグリッピナを気に入り、彼女を教授へ推薦すると同時に皇帝補佐官とも言える宮中伯に任じる。
なおエーリヒは、1度目は魔導院の実験区画でスカウト?として、2度目は帝都の地下水道の玄室で仮面の魔導師として、3度目はアグリッピナの叙勲式にて皇帝として間近で拝顔しているが、何処かで見た覚えがある程度の記憶しかなく同一人物とは気づいていない。
テレーズィア・ヒルデガルド・エミーリア・ウルズラ・フォン・エールストライヒ

ツェツィーリアの大伯母(祖母の姉妹)、マルティンの伯母。帝国建国期に生を受け、かつて無理やり甥のマルティンに譲位した“元女帝”で「華奢帝」の異名を持つ。現在は帝国東方の自領地へ隠居し劇作家となっている。顔立ちなどはツェツィーリアに似る細身の美女だが、奔放で押しが強く、吸血種の強みを身体能力方面に伸ばし、それらを活かしたパワープレイを得意とする。立場的にも身体能力的にもエールストライヒ家の上位にある人物で、マルティン曰く「一族の鬼札」。マルティンにとっては魔導師としての戦法が通用せず、身体能力でも立場でも敵う点がない“天敵”でもある。
エーリヒに対しては元女帝の身分を隠すため「フランツィスカ・ベルンカステル」の偽名を名乗り、ツェツィーリアを助けた礼としてエリザの後援を約束する。これによりエーリヒは自らエリザの学費を工面する必要がなくなり、晴れて丁稚の身分から開放されることになった。
アウグスト4世 / アウグスト・ユリウス・ルードヴィヒ・ハインケル・フォン・バーデン=シュトゥットガルド

物語開始時点での三重帝国今上帝。帝国の三皇統家の一画を担うヒト種シュトゥットガルド家の現当主で、開闢帝リヒャルトの末裔。物語登場時点(エーリヒ13歳の冬)で57歳。かつて東方征伐で竜騎士として活躍した生ける英雄であり、「竜騎帝」の異名を持つ。元々は空を飛びたいが故に竜騎士となった人物であり、帝位には興味なかったため、内心では早く退位して妻と共に自由に騎竜で飛び回りたいと願っている。マルティン1世への譲位後は、願い通り夫婦で自由気ままに騎竜で飛び回っている様子。
ダーフィト・マクコンラ・フォン・グラウフロック

帝国の三皇統家の一画を担う人狼種グラウフロック公爵家の現当主。物語登場時点(エーリヒ13歳の冬)で32歳。アウグスト4世とは若い頃から一緒に馬鹿をやった戦友でもあり、アウグスト4世が帝城から脱走するのを手伝ったことで一時、被選帝権を持つ身ながら帝城への出入禁止されると言う謎ムーブを見せたこともある。

ウビオルム伯爵領および周辺地域の人々

グンダハール・ヨーゼフ・ニコラオス・フォン・ドナースマルク

ウビオルム伯爵家の後継として最有力候補であったドナースマルク侯爵家の現当主。市民には篤志家や慈善家として知られる柔和な好漢だが、実は策謀を巡らせることを趣味とする長命種の男性。旧ウビオルム伯爵家が断絶して以降、帝国の要所たる領地と生まれる富を目当てに領主争いに加わり暗躍していた。目前で伯爵位を攫ったアグリッピナに近づき、実権を握ろうと策を巡らせる。三重帝国建国以前から生きる梟雄であり、長命種には珍しく子孫を残すことに旺盛であり、愛妾を幾人も持ち多くの子を成している。
アグリッピナとの直接対決で敗北するも、アグリッピナの思惑により粛清されず侯爵家の存続が許されたため未だ領内での権勢を保っており、表向きは彼女に従っているものの、伯爵位とアグリッピナを諦めておらず色々と策を巡らせている。
ナケイシャ

グンダハール直属の部下である百足人(センチピードニィ)の少女。橙色の髪に褐色の肌、紫水晶を思わせる瞳を持つが、無表情かつ整った顔立ち故に“これと言った特徴のない”印象を受ける美人。かつて故国を追われた際にグンダハールに拾われ重用された百足人一族の末裔で、貴族の側仕えかつ未来の密偵頭として高い教育を受けた若きエリートであり、グンダハールの実娘でもある。グンダハールの従僕としてエーリヒに近づき、密偵として対決するものの敗れ、雪辱を誓う。
ラシッド

グンダハール直属の部下である百足人の老爺で、ナケイシャの母方の祖父。密偵頭として厳しくも優しく孫娘を指導する。
モーリッツ・ヤン・ピット・エアフトシュタット

三重帝国建国期より旧ウビオルム伯爵家に代々仕えてきたエアフトシュタット男爵家の現当主。旧ウビオルム伯爵家が断絶して以降の領主争いに加わらず、領主に相応しい人物が現れるまで時機を待ち続けていた真面目で清廉潔白な家系の人物であり、新たにウビオルム伯に任じられたアグリッピナを正当な領主と認めて忠誠を誓い、腐敗した領内政治の改革に協力する。アグリッピナとグンダハールの“格付け”騒動後は、その功績を認められ子爵へ昇爵。また彼の次男ブルーノがウビオルム伯爵家の家宰に就き、エーリヒの後任となった。

マルスハイムおよび周辺地域の人々
マルスハイム冒険者同業者組合

マクシーネ・ミア・レーマン

組合長。とある貴族の庶子で、父親は明らかにされていないが先代マルスハイム辺境伯の娘、現マルスハイム辺境伯の異母姉と噂される妙齢の女性。アグリッピナの調査によると、その噂は真実である様子。
コラリー、タイス、エーヴ

組合のベテラン受付嬢。恰幅も良いが気も良い世話焼きなおばちゃんたち。

剣友会

エタン

エーリヒに最初に弟子入りした牛躰人の後輩冒険者。剣友会の立ち上げメンバー。牛躰人でも恵まれた体格の持ち主で、小兵のエーリヒに負かされたことで彼を師と慕うようになる。
カーステン

エーリヒに弟子入りした小鬼の後輩冒険者。剣友会の立ち上げメンバー。小兵で夢を諦めかけていたとき、巨躯のエタンをいなしたエーリヒを見て弟子入りを志願した。絵心があり、剣友会の紋章をデザインした。
マチュー

エーリヒに弟子入りした人狼の後輩冒険者。剣友会の立ち上げメンバー。エタンとは似た者同士で、いつもいがみ合うほど仲が良い。
マルタン

エーリヒに弟子入りしたヒト種の後輩冒険者。剣友会の立ち上げメンバー。大柄だが引っ込み思案。近隣の農家の出で、実家を助け恋人との結婚資金を貯めるため冒険者になった。

子猫の転た寝(うたたね)亭

フィデリオ

陽導神に仕えるヒト種の在俗僧(俗世での活動を主体とする僧侶)で、旅人や商人向けの酒保兼宿屋「子猫の転た寝亭」を拠点とする青玉ランクの冒険者。特定の氏族(クラン)には属していないが、ヘンゼルたちと一党を組んでいる。下等竜種である無肢竜を一人で退治して得た“聖者”の二つ名と「絶対に怒らせてはいけない」英雄譚の持ち主。人好きのする穏やかな人格者だが、高い道徳心と義侠心もあって、英雄譚に語られるほど苛烈な一面を持つ。現在は「子猫の転た寝亭」を経営する入り婿亭主でもあり、普段は夕方から店に立っている。
冒険者としては、騎乗槍を徒歩で運用する凄まじい筋力と、篤い信仰に基づく自己支援により、単独で竜種を狩れるほど自己完結した神官戦士。
シャイマー

フィデリオの妻で「子猫の転た寝亭」の看板女将である猫人(ブパティスィアン)の女性。明るく愛想よく世話好きで面倒見が良く、夫とは非常に仲睦まじい。フィデリオも元々はボロボロのところを彼女に拾われた身であり、かつてフィデリオへの逆恨みから不良冒険者に攫われ乱暴されたが、責任を感じたフィデリオに助けられそのまま結婚した“英雄譚の悲劇のヒロイン”でもある。
アドハム

シャイマーの父で「子猫の転た寝亭」の先代亭主である猫人の老爺。娘の件もあって冒険者を快く思っておらず、気難しいが根は優しい。普段は店を娘夫婦に任せているが、人手不足などのときには現在でも代わって店を取り仕切る。元々は行商人の家系で、故あってマルスハイムで「子猫の転た寝亭」を創業し一代で評判を得た。
ヘンゼル

フィデリオと一党を組む冒険者でヒト種の男性。“梵鐘砕き”の二つ名を持つ。見た目は禿頭で強面の偉丈夫だが、中身は気さくで馬好きだが計算高い「競馬場にいる気のいいおっちゃん」と言う印象の人物。マルスハイムに入市する冒険者(志望者)の目利きをしているらしく、入市の列に並ぶエーリヒとマルギットに声をかけ、信用の高い厩や子猫の転た寝亭を紹介した。
作者によると、戦鎚を武器とする純戦士で、防御を固め仲間を守りつつ範囲攻撃で雑魚敵を一掃する「殴れる盾役」。冒険者として自己完結しているフィデリオに一党を組ませた張本人であり、一党のムードメーカーでもあるとのこと。
ロタル

フィデリオと一党を組む冒険者で鼠人種の男性。“風読み”の二つ名を持つ。若いが一流の斥候で、エーリヒも紹介されるまで存在に気づかなかったほど。斥候の役割柄、目立つことを好まないためか、フィデリオの英雄譚でも仲間として語られることは少ない様子。多産な鼠人種の例に漏れず十二人の子持ちだが、全員を私塾に通わせしっかり者の真っ当な大人に育てた苦労人でもある。
ゼーナブ / ザイナブ

フィデリオと一党を組む冒険者で長命種の女性。非帝国語圏の出身のため帝国語はやや片言で、本名は「ザイナブ」だが帝国語話者からは「ゼーナブ」と呼ばれている。薄い褐色の肌と黒髪の異国情緒あふれる美女だが、食い道楽が過ぎフィデリオたちが倒した魔物を「真っ先に食べたい」がために一党に加わった「ゲテモノ食い」の変人でもあり、“寄食”の二つ名を持つ。魔法使いで高貴な雰囲気を漂わせるが、立ち居振る舞いは下町にすっかり馴染んでいる。
作者によると、操る魔導は呪詛系で、単体攻撃に特化した防御無視の高火力で敵の要人をぶち抜くとのこと。また占術ができ、困ったときに「神」へお伺いを立てることができる便利要員でもあるらしい。
(吟遊詩人)

「子猫の転た寝亭」の常連客で、ギターに似た楽器「六弦琴」の名手。フィデリオを讃える吟遊詩で知られ、帝都に招かれ公演したほどの著名人。本人への直撃取材は微に入り細を穿つ執拗な質問と昼夜を問わず休む間を与えない粘り強さで、吟遊詩を盛り上げるためならその場の思い付きで事実を改変することも厭わず、その情熱は名声を熟練度に変換するため取材を受けたエーリヒに音を上げさせたほど。そのためできた人徳者であるフィデリオですら名前を呼ばず「ヘボ詩人」「三文物書き」などとこき下ろしている。

ロランス組(クラン)

ロランス

冒険者氏族「ロランス組」の頭目。ガルガンテュワ部族の尊称“不羈なる”を与えられた巨鬼(オーガ)の女性で、冒険者向けの酒保兼宿屋「黒い大烏賊亭」を拠点とする青玉ランクの冒険者。三重帝国には珍しい二刀流の使い手。かつて同郷の戦士ローレンに敗れて挫折、逃げるように冒険者となりマルスハイムで配下を得て姐御と慕われつつも、自らを“落伍者”と思い燻っていた。しかし配下が連れてきた新米冒険者のエーリヒに敗北したことで心を入れ替え、エーリヒとも懇意となる。エーリヒが「かつてローレンが“つばつけ”した相手」と気づくも時すでに遅く、ローレンの怒りを買うのではと戦々恐々する反面、エーリヒを認めもっと戦ってみたいとも思っている。
エッボ

ロランス組の一員で、琥珀ランクの冒険者であるヒト種の男性。ロランス組の中では古参。頭目ロランスのご機嫌取りも兼ねて、見込んだ新人冒険者を“比較的穏当に”ロランス組に勧誘しており、冒険者になりたてのエーリヒとマルギットをロランスに引き合わせる。
ケヴィン

ロランス組の一員で、琥珀ランクの冒険者である犬鬼の男性。ロランス組の副官格である古参で、経理もこなす番頭格。エッボと共に、エーリヒとマルギットを勧誘しロランスに引き合わせる。

バルドゥル氏族

ナンナ・バルドゥル・スノッリソン

悪評高い冒険者氏族「バルドゥル氏族」の頭目。御年30近い、死人のように骨と皮ばかりに痩せているが目鼻立ちは整った麻薬中毒の女性。元は魔法薬の研究で魔導師を目指す払暁派の聴講生だったが、依存性の強い魔法薬を作ったことで魔導院を追放された。現在はそれらの麻薬でマルスハイムの違法薬物市場を独占し、また麻薬で配下を従える。罪状に比して魔導院の処分が穏当だった点と、顔立ちの良さから、エーリヒはライゼニッツ教授の直弟子だった可能性に思い至っている。
漂流者協定団との騒動後、階級の割に腕が良いことや物理戦闘に長けた配下が少ないこともあってエーリヒを勧誘するが、彼の背後にライゼニッツ教授の存在を匂わされて以降は諦めた様子。代わりにエーリヒに情報網となる組織の立ち上げを提案する。また冒険者としては真っ当な魔法薬の製造販売も行っており、魔法薬が得意な魔法使いの新人冒険者カーヤにも目を付けていたが、こちらもエーリヒの友人と知って諦めている。なおIFルートによってはナンナの死後、カーヤが(恐らくエーリヒの後ろ盾によって)バルドゥル氏族を「真っ当な氏族」に再編して引き継ぐ様子。
エーリヒの方では、元聴講生が一端の貴族を気取っていることと、麻薬組織の元締めと言うことで不快かつ悪印象を持っているものの、彼女の魔法薬や氏族の頭目としての手腕は認めており、適度に距離を置き正当な理由があれば協力しても良い程度の付かず離れずの関係でいたいと思っている。
ウズ

ナンナ配下で幹部格の女魔法使い。冒険者ランクは琥珀。ナンナの特製“睡眠薬”の常用者。魔導院でも珍しい高度な飛行術式の使い手で、エーリヒには「(その気になれば大仰な称号と高い年棒が約束される技術の持ち主なのに)在野で馬鹿やってる」と評された。魔法薬の製造に適性がないこともあって、もっぱら伝言や行商、偵察などいざというときに移動速度が必要な外回りの業務を担当している。

ハイルブロン一家(ファミーリエ)

ステファノ・ハイルブロン

悪評高い冒険者氏族「ハイルブロン一家」の頭目。同族でもとびぬけた巨躯とねじれた左角が特徴の牛躰人。先代である叔父ブルニルデ・ハイルブロンを素手で撲殺し頭目の地位を簒奪したガチの武闘派。しかし血で血を洗う犯罪集団スレスレと評判のハイルブロン一家の「風紀を正し」たハト派の人物で、エーリヒに昭和のヤクザ映画を連想させた。
マンフレート

ハイルブロン一家の食客。正確無比な槍術から“舌抜き”の異名を持つ、馬肢人(ツェンタオア)の冒険者。

漂流者協定団(エグジル・レーテ)

二番(ツヴァイテ)

悪評高い冒険者氏族「漂流者協定団」の評議員の一人。漂流者協定団は人数は多いものの報酬の6割を上納させる悪徳氏族だが、単なる冒険者ではなく、マルスハイムの壁外で暮らす流民や貧民、難民たちのまとめ役でもある。幹部である十三名の評議員は正体を隠す強力な加護のかかった外套を着用し番号で呼び合うため、部外者が正体を知ることは困難。新米ながら目立つ働きをするエーリヒとマルギットに独断でちょっかいを出した末、他の氏族を巻き込んだ大騒動へ発展する。

その他の人々 

ローレン

隊商の護衛を務める巨鬼の女性で、ガルガンテュワ部族の上位尊称“勇猛なる”を与えられた武人。無暗な戦いは好まず「上質な戦い」を求めている。部族から離れ武者修行を兼ねた遊歴の途上で、隊商と共に訪れた秋祭中の荘園で12歳のエーリヒと出会い、その剣技を認めて将来戦うべく彼に“つばつけ”を行った。
ディードリヒ

遊歴中の馬肢人の女性。北方離島圏のとある有力貴族に仕える馬肢人ヒルデブランド部族の戦士で本名はデレクだが、遊歴に際し帝国に入り「馴染みがないし呼びにくいだろう」と言う理由で帝国語の名に改めた。下半身の葦毛と同じ髪色、日に焼けた褐色の肌で、馬の左耳が欠けており、勝ち気そうな美人だが顔立ちや振る舞いは年齢の割に幼く“小生意気なデカい子供”と言う印象を与える。エーリヒが見惚れるほど戦斧や大弓の扱いに秀でた歴戦かつ手練れの戦士だが、格好良さや“一番”へ拘るあまり短絡的で思慮が浅く分別に欠け、命令違反を犯したため部族を追い出された。アグリッピナの元を辞したエーリヒが故郷へ戻る旅路で偶然出会い、護衛の押し売りをして年下のエーリヒに敗れたものの、その「性根を叩き直される」べくエーリヒと共に旅することになる。
ガディ

冒険者である獅子人の男性で、階級は緑青。南方で暴虐を振るった牙長人を倒した英雄で、“大牙折”の二つ名で知られ折った象牙を胸に下げている。勝利を第一とし、守るべきものを守るために戦う誇り高い武人で、投げても魔法の腕輪の方へ戻る戦斧が主な武器。また五人の妻を持ち、彼女たちは雑魚の掃討などで夫をサポートする。なおエーリヒの見立てでは「鍛え直したロランス氏単騎の方が確実に強い」「自分でも全力装備と魔法なしでもなんとかなる」。エーリヒたちと出会ったときは納税の荷駄隊の護衛をしており、とある隊商の護衛となったエーリヒたちと同道することになる。
ヨーナス・バルトリンデン

“悪逆の騎士”の異名を持つ賞金首でヒト種の男性。ヨッツヘイム男爵家に騎士として取り立てられるも、領地へ苛政を布き、それを咎めた男爵と一家や護衛など、計45人を一夜にして殺害。主家の領地を中心に暴力で勢力を拡大し、賞金と功名に釣られた冒険者や傭兵たち、辺境伯が威信を賭け派遣した討伐軍を全て全滅させた「辺境の生ける災害」。エーリヒが初見で「何故あんなクソ悪党にあれだけの武の才能が与えられたのか」と嘆くほど筋力に完全特化した戦士で、主家の鋼製の墓碑を溶かして造られ主家の累代500年分の憎悪が付与された戦槌“祖霊溶かし(ベライディグゥング)”を武器とする。部下たちを恐怖で支配しており、蛇行する谷間の街道の上で隊商を待ち伏せし、ガディと同道したエーリヒたちの行く手を阻む。

妖精・半妖精 

ウルスラ

夜闇の妖精(スヴァルトアールヴ)。エーリヒが初めて対面した妖精で、幼いながらも妖艶な雰囲気を漂わせる。初対面時はエーリヒを連れ去ろうとしたが、その後はエーリヒに協力的な態度を見せる。しかしエーリヒを連れ去ることについては諦めていない様子。黒に近い濃紫色の“妖精の薔薇”を介し、エーリヒの周辺で起きる出来事を察知したり、彼の元に現れることができる。
ロロット / シャルロッテ

風の妖精(シルフィード)。とある屋敷に研究材料として捕われていたところをエーリヒに助けられた。天真爛漫で緊張感に乏しく、舌足らずで暢気な口調が特徴。
ヘルガ

エーリヒが魔物退治に訪れた館に幽閉されていた半妖精。元は霜の妖精(ライフアールヴ)だったが人間に憧れ、ある有力者の一門の若夫婦の娘として誕生した。母が産褥にて死亡したため幼少期には父から溺愛されたが、半妖精と発覚して以降は父に「妻を殺し本物の娘を奪った化け物」として扱われ、本来は存在しない“本物の娘”を取り戻す妄執と狂気の実験により精神を蝕まれた。父は浪費が過ぎたため一門から処分されたが、ヘルガを封印した隠し部屋に気づかれないまま館は放棄され、エーリヒが封を解くまで半世紀以上放置されていた。父からの責め苦により心が壊れていたヘルガはエーリヒを父と誤認し「連れ去ろう」とし、「よくないもの」になりかけるがエーリヒに核を潰され、彼の子守唄を聞きながら看取られて消えた。彼女の“名残”は蒼氷色の宝石となり、エーリヒの月の指輪に装飾され、魔導の発動を助けている。
web版では存在のみが語られただけで幽閉した父共々、既に親族に処分されている。
灰の乙女(グラウ・フラウ)

家事妖精(シルキー)。エーリヒが帝都で住むことになった古民家に憑いていた妖精で、過去に気に入らない住人を幾人も追い出していた様子だが、エーリヒのことは気に入っており、居住を許し彼のために家事をこなしている。家事妖精の性質で住人に姿を見せることや会話することはほぼないため、本来の個体名は不明だが、エーリヒはその容姿から灰の乙女と呼んでいる。

歴史上の人物 

リヒャルト・フォン・バーデン=シュトゥットガルド

500年余り前、ライン三重帝国を建国した初代皇帝で“開闢帝”の異名を持つヒト種の男性。元はライン川流域の一画を所領とするバーデン家の分家であるシュトゥットガルド家の末子であったが、戦乱期であった当時14歳にして主家への反乱を目論み、人材や資金を手に入れ暴君であった主家を滅ぼし、破竹の勢いで周辺領土を制覇して新国家を樹立し、僅か一代で帝国の基礎を固めた。建国から500年余りを経た現在では、半ば神格化されている。エーリヒからは同郷の異世界転生者と推測されている。
ジョゼ1世

“吝嗇帝”の異名を持つ皇帝。彼が改鋳した貨幣は混ぜ物が多く、一般に「ジョゼ銭」と呼ばれ他の貨幣に比べ価値が低い。貨幣に刻まれた横顔は渋いらしい。
コルネリウス2世

“仁恵帝”の異名を持つ皇帝。それ以上に、愛娘の横顔を刻印した貨幣を作らせた“親馬鹿帝”として名を馳せる。
ランペル大僧正

三重帝国成立以前の人物で、夜陰神に仕えた吸血種の僧侶。吸血種が「人間」であるべく彼が唱えた“受くる者の誓約論”は、三重帝国における吸血種文化の礎となり、その功績から吸血種の守護聖人に列聖されている。また現在でも純度の高い銀貨に横顔が刻まれ、吸血種に対する戒めとなっている。
“釘なし”の親方

三重帝国において釘を一切用いない木工技術で後世に名を遺した大工で、ヒト種の男性。僅か22歳で職工同業者組合に親方認定され、木工以外にも手押しポンプなど様々な先進的な“発明”を齎したが早世したとのこと。彼の未実現の“発明”をまとめた構想ノートが弟子に受け継がれ現存するが、その内容は「千年先を見てきたかのよう」だと言う。

世界観
種族

舞台となる異世界には、「人間」として認知されている複数の種族が存在するが、大別して現実世界の人間やその亜種に相当する「人類種」、人類種に他生物の要素を加えた「亜人種」、“魔素”を体内に蓄積する「魔種」に分かれる。その他にも「人間」には含まれない知性体も多く存在する。なお、これらの分類は長命種が始めたため、長命種が基準となっている。

また異種族間の婚姻も珍しくないが、ヒト種と異種族の間に生まれる子供に混血は存在せず、ほとんどの場合母親側の種族特性を持つ。

人類種

ヒト種(メンシュ)
現実世界の人間に相当する人類種。身体能力は他の人類種にも劣るが、適応力や繁殖力に秀でる。この世界での平均寿命は80歳ほど。
三重帝国における成人年齢は15歳。
坑道種(ドヴェルク)
一般的なファンタジーのドワーフに似た人類種。短躯ながら熱に強く頑強。
長命種(メトシェラ)
一般的なファンタジーのエルフに似た人類種。笹の葉形の耳で、寿命を持たず殺されない限り死なず、多重思考能力と優れた魔力、排泄不要の消化器官を持ち、肉体が成熟すると以降は老化しなくなる「人類種の最高峰」。しかし文化的にはエルフのような自然主義でなく、知識欲が旺盛で文明に耽溺する“新しいもの好き”、退屈による精神の摩耗を何より厭い「退屈しのぎ」のためならば悪辣にもなる享楽主義である。その種族特性から繁殖意欲に乏しく人口は少ないものの、貴種として無意識な傲慢さを持つ。
成人年齢は100歳。
樹人
樹の枝葉や根が絡み合って人の形を成したような人類種。一本の樹木に精霊が宿ることで生まれる種で、そのため精霊に近く、樹木や自然に親しみ、総じて高い魔力を持つ。
中性人(ティーウィスコー)
北極圏にほど近い地域に適応すべく独自の進化を遂げたヒト種の近縁種。肉体構造はヒト種と変わらないが、第二次性徴を迎えるまでは性別を持たず、その後は一ヶ月周期で男性から無性、無性から女性、女性から無性、無性から男性と言う変化を繰り返す。ただし性別的な人数バランスが崩れた場合は、無性の月を経て「不足している方」の性別へ変化し、生殖が可能なため、コンスタントに人口増加が可能である。なお女性時に妊娠した場合は、子の乳離れくらいまで性別が固定され、相手の男性も同様に性別が固定される。文化的にはその子を産んだ方が「母」と呼ばれる。
寒冷地域を起源とし三重帝国へ入植したのが比較的近年のため、帝国においては馴染みの薄い種族である。

亜人種

蜘蛛人(アラクネ)
上半身が人間、下半身が蜘蛛の亜人種。下半身の蜘蛛の種類によって細分化しており、小柄な蠅捕蜘蛛種、大柄で細身な女郎蜘蛛種、巨体の大土蜘蛛種や足高蜘蛛種などが存在する。人型の顔についているレンズ眼とは別に、頭部に装飾品のような球体型の複眼が付いており、人類種よりも遥かに広い視野を持つ。
狩猟者や斥候、暗殺者などで広く知られるほど隠密行動に秀で、持久力には乏しいが瞬発力や暗視能力にも優れる。また女性優位の特性を持つ。寿命はヒト種に近く、三重帝国においては成人年齢も同じ15歳だが、肉体的には成人になるまでの成長が早く容姿の老化が遅い傾向にある。しかし老境に至ると一気に老け込むらしい。
人狼(ヴァラヴォルフ)
犬鬼とは異なる狼系の亜人種。平均寿命は50歳ほどで、長寿でも70歳を超えるのは稀である。
百足人(センチピードニィ)
上半身が人間、下半身が百足の亜人種。人型の腕を2対4本持つ他、百足型の長い胴体から多数の脚が生えており、壁や天井にも張り付け足場の悪い場所でも転倒せず行動できる。また、巨体ながらも軽量かつ扁平な胴体から隠密性にも優れる。反面、耐寒性に乏しく、また人型の口蓋の内側に歯ではなく「大顎」と呼ばれる第二の顎が折り畳まれており、硬い甲殻を噛み砕けるほか、下半身の百足の種類によっては毒を持つこともある。口の内側に見える大顎がヒト種にとっては威圧的なため、三重帝国においては口を開かず喋るよう教育する貴族文化がある。
馬肢人(ツェンタオア)
馬の首が人間の腰から上に挿げ変わったような、いわゆるケンタウロスに似た亜人種。人型の頭の頭頂部に、人間の両耳とは別に馬の両耳が付いている。文化的にはケンタウロスのような賢さではなく、人馬一体の肉体と高い身体能力を活かす優れた戦士として知られる。下半身の馬の種類によって細分化しており、戦士の他、移動速度に優れ輸送業や通信業、馬力に秀で農業や建築業などに従事する者も多い。その体格からしゃがんだり地面に近い位置で作業をすることや細かい作業が苦手で、料理や工作、高度な建築などの文化的なことは種族全般で不得手。そのため人間型の人類に身の回りの世話をさせる者もいる。馬と同じく寒さに強く、ショートスリーパーで、立ったままでも横になっても眠ることができ、体重も馬並みのため足の怪我は致命傷となる。人間型の部分の内臓はほとんどが肺と心臓で、胃腸は馬の部分に収納されており、その分食道が細長いため丁寧に咀嚼する必要がある。馬と異なり雑食性ながら体を維持するため大食らいで、馬の半身から上背が高く後方にも相応の広さを要し、道具類や衣服、建築物なども専用のものを必要とするため、この世界の人類の中でも格段に維持費がかかる存在でもある。
神代には“祝福された王国”を脅かし“生きた滅び”とまで呼ばれ、他人種の奴隷を多数従える大帝国まで築いたが、文明の発展に適応できなかったこともあり、現代では一般的な亜人種として社会に溶け込んでいる。一方でかつての古き伝統や風習を現代まで受け継いでおり、神代には戦士として男女の別なく養育されていたため、名付けに際し男女の区別をしておらず、男性名を持つ女性も存在する。他にも決定的な敗北まで髪を伸ばし続ける。馬部分の背は「氏神」と呼ばれる祖霊が乗る神聖な部位とされ、人を載せることは滅多になく、荷物も極力両脇に下げる形を取る。などのように、独自の文化や風習を数多く持つ。
熊体人(カリスティアン)
中央大陸北方の森林帯を起源とする、直立した熊と言った風体の亜人種。熊に劣らぬ巨体、鋭い爪、硬い毛皮、組み合えば亜竜を制することもある筋力を誇る身体的な“最強”候補だが、平時には自然に親しみ詩を愛する穏やかで慈しみ深い種族である。
猫人/猫頭人(ブパティスィアン)
南西大陸を起源とする猫系の亜人種。猫型の頭と人間に似た全身に毛の生えた体型、猫を想起させる身軽でしなやかな身体能力が特徴。なおWeb版では「猫人」となっているが、書籍版では一部の箇所で「猫頭人」と記述されている。
獅子人(ネメアー)
金色の地肌の巨人に獅子の頭が載ったような亜人種。熊体人や牙長人と並ぶ屈強な肉体を持ち、獅子と同様に男性一名に対し複数の女性が妻となり、日常の雑事や雑魚の掃討は女性が、群れの脅威となる難敵には男性が対処する文化を持つ。
牙長人(マンクア)
直立した象のような亜人種。巨鬼にも劣らない3m近い巨体を持ち、ほとんどは温厚で気長で穏やかだが、一度荒ぶると辺り一面を引き潰し平原と化する暴れぶりでも知られる。

魔種

魔力に含まれる“魔素”を蓄積する「魔晶」と呼ばれる器官を生まれながら体内に持つ種族。“魔素”について詳細は解明されていないが、魔種に様々な特性を与える一方、蓄積量が限界を超えると自我や倫理観を失って怪物化し「魔物」と呼ばれるようになる。 ただし“魔素”が溜まった場所に行くなど余程のことがない限り魔物化することは稀で、大抵の者は人類種や亜人種と大差ない平凡な一般市民として一生を過ごす。なお人類種や亜人種は魔晶を持たず“魔素”を蓄積できないため、魔物化することはない。

巨鬼(オーガ)
鬼族の一種で、長い犬歯、鋭く尖った爪、金属を含む肌を持つ巨体の魔種。女性優位の武の種族で、部族ごとに決められた位階があり、闘争を存在意義とする。戦士となるのは女性であり、男性は身体能力に劣り女性へ奉仕することを本能とする。身長は男性であっても2mほど、女性であれば3mほどにもなる。かつては82部族を数え大いに栄えたが、闘争を求めて多くの「復讐者」を生み出した結果、31部族にまで減少した。現在では「復讐者」の代わりに、将来を見込んだ好敵手に対し儀礼的な接吻を交わし、他の同族に手出し無用を広く宣誓する“つばつけ”と呼ばれる文化を持つようになっている。なお他者が“つばつけ”した相手を横取りした場合、血の報復を受けるとされる。
小鬼(ゴブリン)
鬼族の一種で、ヒト種の子供ほどに小柄な体格と、成人男性にも劣らぬ膂力を持ち、更にヒト種に次ぐ繁殖能力を持つ魔種。寿命は短く、平均で40年ほど。ヒト種と並んで一般社会に溶け込んでいる。
犬鬼(ノール)
直立した犬科動物のような魔種。顔つきによって細分化しており、鬣犬(ハイエナ)種、コヴォルド種などが存在する。
豚鬼(オーク)
直立した豚のような魔種。ヒト種と比して病的なほど恰幅が良い体格を持つが、多くの者は顔色良く固太りで力士のような印象を与える。
吸血種(ヴァンピーレ)
ヒト種とほとんど変わらない姿形を持ちながら、ヒト種より遅い成長とヒト種を凌駕する身体能力と魔力、絶命しても復活するほどの再生能力と、特定の方法で殺されない限り蘇る不死性を持つ“魔種の王”。そのため不死者の一種とされることもある。陽光や奇跡、銀を弱点とし、身体を霧状に変えることができ、ヒト種の血を渇望するなど、伝承の吸血鬼に近い特性を持つが、流水を意に介さない、夜陰神の庇護を受けるなど伝承の吸血鬼とは異なる点もある。また同族同士や他の人類種との生殖が可能な他、吸血種が自らの吸血行為によって死した相手に自らの血を与えることで“眷属”たる吸血種を生み出すこともできる。なお眷属は、擁する主人の血を吸血行為により薄めることで、主人から独立した“眷属ではない”吸血種と化す。
この世界においては、神代に陽導神を騙して不死を得たヒト種の末裔であり、その罰として生きたヒト種の血でしか癒されない「渇き」の呪いを受けたとされ、それ故にヒト種を庇護する宿命を課せられている。また三重帝国では人類種と認められるべく可能な限り吸血を忌避する文化が育まれた結果、ヒト種の肌に牙を立てる“堪え性のない輩”に対して「吸血鬼」と言う蔑称が用いられる。

その他

1つの異世界の管理を「業務委託」されている上位存在。研鑽を積むことで“新しい世界”を産む権利が得られるらしい。「人類の堕落を招く」ため世界に大きく干渉することは許されていないようだが、時折人々に「神託」を授け、人々の願いに応じて「奇跡」を行使できる。つまり「奇跡」の発動権は神側にある。
神々の勢力が地域別に存在し、信者である人類を介して他の神群と日々勢力争いを繰り広げている。また複数の神が実在する世界のため、多神教が基本(ただし唯一神を自称する神もいるらしい)で体系だった神話は存在していない様子。
なお、朔をエーリヒに転生させ権能を与えたのは、彼らの更に上位にあり、複数の異世界を管理している存在である(エーリヒは弥勒菩薩?と解釈し未来仏とも呼んでいる)。神々自身は、その上位存在を「クライアント」と認識しており、エーリヒに「元請けと下請けの関係」を想起させた。
陽導神
三重帝国と近隣諸国で勢力を持つ神群に属する神の一柱。世界を遍く照らす太陽の神で、夜陰神の夫神。神群の主神であり、夫婦で時を司る神ともされる。かつては光を司る全き善神であったが、殺し愛の末に闇を司る全き悪神と善悪を分かち合い、現在の陽導神となった。神話でのエピソードから、一般には浮気性で恐妻家のダメとーちゃんキャラとされる。
夜陰神
三重帝国と近隣諸国で勢力を持つ神群に属する神の一柱。慈母の神格、癒やしを司る月の女神で、陽導神の妻神。夫婦で時を司る神ともされる。かつては闇を司る全き悪神であったが、殺し愛の末に光を司る全き善神と善悪を分かち合い、現在の夜陰神となった。神話でのエピソードから、一般には優しく慈愛に溢れる反面、元悪神である故、夫の浮気には容赦ない肝っ玉かーちゃんキャラとされる。
豊穣神
三重帝国と近隣諸国で勢力を持つ神群に属する神の一柱。豊穣と繁殖、生命を司る大地の女神で、風雲神の妻神。農民の信仰を集める。本来は越年生で秋蒔きの植生を持つ麦を、この世界の信仰地域に限りその権能で春蒔きに変えている。
風雲神
三重帝国と近隣諸国で勢力を持つ神群に属する神の一柱。豊穣神の夫神。
銀氷神
三重帝国と近隣諸国で勢力を持つ神群に属する神の一柱。冷気と冬を司る、豊穣神の姉妹神。かつて風雲神を取り合ったため、豊穣神とは犬猿の仲で、現在でも風雲神のことは諦めていないらしい。
酒精神
三重帝国と近隣諸国で勢力を持つ神群に属する神の一柱。祝祭と享楽を司る酒の神。「宿酔いの苦痛も酒の醍醐味」のため、宿酔いを癒やす奇跡は存在しないらしい。
鉄火神
三重帝国と近隣諸国で勢力を持つ神群に属する神の一柱。鍛冶を司る。
試練神
三重帝国と近隣諸国で勢力を持つ神群に属する神の一柱。地上の人々を高みへ導くべく様々な試練を与える性別不詳の神。解決困難な事象が起きると「試練神の導き」、そうした災難に次々と見舞われるのは「試練神に気に入られた」と解釈される。エーリヒからはサディスト疑惑を持たれている。
妖精(アールヴ)
「自我を持つ現象」とも解釈される、肉体を持たない知性体。何某かの現象や要素を司る存在で、通常は「個性」を持たないが、独自の個性を持つに至った高位種も存在する。その意思によって自然法則から逸脱した現象を引き起こすことができ、それらの現象や要素を直接的に司るが故、通常の魔導で彼らを阻むことは難しい。
悪戯好きで子供や金髪碧眼の者を好み、彼女らに誘われるままに付いていくと、明けない薄暮の丘で永遠に踊り続けることとなる。また気に入った者に対して様々な(時に妖精の価値観に拠った独善的な)“祝福”を授けることもある。なお妖精からの祝福を“受けすぎる”と、その者も妖精へと変化する。
下位の精霊が本来の権能を超えた“上位”の能力を使うことも可能だが、無理に使い続けると魔力が尽き自滅することになる。
半妖精(チェンジリング)
妖精の中には、幸福な家庭や子供に憧れて女性の胎に宿って肉体を得る者もおり、そうやって生まれた子供は「取り替え子(チェンジリング)」、種族としては「半妖精」と称される。ただし本人に「生まれる前は妖精だった」と言う自覚はない。しかし半妖精として生きるのは無理があるらしく、成長が遅れ気味で、また虚弱で死にやすく、7年も生きながらえるのは稀である。司る要素に関した魔法に高い適性を持ち、また金髪碧眼の者を好むなど、元々の妖精としての性質を持ち合わせる「肉体を持つ妖精」。
なお世間一般では「お腹の子が妖精と取り替えられた」と信じられている様子だが、真実は先述した通りのため「妖精に連れ去られたお腹の子」は想像による理由付けであり実在しない。
送り狼(シュッツヴォルフ)
夜道で迷い人を助ける、妖精狼。
夜闇の妖精(スヴァルトアールヴ)
黒褐色の肌と月光のような白い髪、鳩血色の瞳にオオミズアオにも似た淡く光る羽を持つ。どんな闇でも見通す能力や、あらゆるものを闇で盲いさせる能力を持つ。時刻(太陽の位置)や月齢によって発揮できる能力の強弱が変わり、新月の真夜中が最も能力を発揮できる。また体の大きさをある程度変えられるらしく、ヒト種の子供と同程度のときもあれば、ヒト種の掌大の「フィギュアサイズ」で現れる場面もある。
風の妖精(シルフィード)
チューブトップのワンピースを纏い背に虫のような羽を生やした、外見は典型的な妖精らしい妖精。風を操る能力や、呼吸する存在を把握する能力を持つ。風や空気のある場所ならば何処にでも存在するが、風の吹かない密閉空間では能力が制限される様子。
霜の妖精(ライフアールヴ)
冬を呼び、冬を強めるだけの妖精。
家事妖精(シルキー)
家に憑き、家人の代わりに家事をこなす妖精。気難しい性格で、家人に姿を見せることはほとんどなく、家人が気に入らなければ悪戯を尽くして追い出そうとする。また、家事を「家人に取られる」と機嫌が悪くなる。
不死者(アンデッド)
この世界において「不死者」と呼ばれる存在は、大きく3種に分けられる。1つ目は長命種や吸血種のような寿命を持たない種族の異名だが、殺す方法は存在するため「不死者」と呼ばれることは稀である。2つ目は何某かの理由で「“死”を失った」存在であり、知性を持つ幽霊や死霊などがこれに当たる。3つ目は“操られた”、あるいは“乗っ取られた”遺体であり、動死体などのような自然の摂理に反する存在である。
死霊(レイス)
生きた存在が死の間際に、持ちうる力を全て振り絞り「その存在をこの世に強く焼き付ける」ことで発生する、とされる存在。姿は半透明になるが生前と変わらず、他の物体に触れることも可能で、生者は死霊の触感や体温も感じることができる。一方で冷気を発する魔法能力を持ち、生物だけでなく魔法障壁まで凍らせる様は正しく「人の形をした死」と言える。また生命に憧れを持つとされる。
三重帝国においては“故人”として扱われ生前の財産や権利等は失うが、死後に手に入れた財産や権利等は保証されるとのこと。
竜種
一般的なファンタジー世界のドラゴン同様の、古代より存在する強大な非人間型生物。
騎竜
亜竜の一種で、知能が高く群れを成す性質から、人間に飼い馴らされており、軍用馬と同様に軍用生物として運用されている。その生態や能力によって細かな種に区分されており、高山種は亜音速で飛びながら炎を吐き、平原種に飛行能力はないが翼の羽ばたきで地形を変えるほどの風圧を生み出す。
無肢竜(ワーム)
亜竜の一種で、脚や翼がなく、原始的で知能も低く、鉱脈を食い地中で生きる、蛇やミミズにも似た巨大な下等生物。ヤスリのような甲鱗とヤツメウナギにも似た鋭い歯が特徴で、成体であれば胴は直径3メートル、体長は数十メートルにも及び、その巨体と脅威から区分上は竜の一種として扱われているが、知性ある上位の竜は同種と認めていない。

魔法と魔術と奇跡

この世界において魔法(マギ)と魔術(ツァオバークンスト)は明確に異なる。魔法は物理法則をねじ曲げたり上書きしたりするもの、魔術は物理法則を励起するものであり、具体的には「本来燃えない物体や状況で物を燃やす」のが魔法、「マッチやライターのような着火具の代わりに魔力を用いて着火だけする」のが魔術である。また両者を合わせて「魔導」と呼ぶ。

この世界ではあらゆる生物が魔力を内包しており、通常は体内の魔力量が一定量に達すれば魔導に“開眼”し、魔力感覚から独学で制御術を身につける。他にも、他者から魔力を流し込まれたり、魔力の濃い場所へ踏み込むなどの切っ掛けで、魔導に開眼する場合もある。魔導に開眼した者は、月の対となる魔力的な黒い月「隠(なばり)の月」が夜空に見えるようになる。ただし実際に魔法や魔術を行使するには、体内の魔力を体外に放出する必要があり、そのための器官を生まれ持つ種族と持たない種族がある。器官を持たない種族は、魔力を体外に放出するために「焦点具(スターター)」と呼ばれる道具を用いる。ヒト種は通常焦点具を必要とし、長命種に焦点具は不要である。焦点具は一般に杖の形をしているが、杖と比較すると低出力な指輪型なども存在する。魔法や魔術を行使するには、応じた術式を頭の中で練り上げ、焦点具から魔力を出力するのが基本で、補助として口語による呪文や動作、魔法陣などを用いることもある。また独学では術式が不安定で無駄ができやすく、指導者の下で理論を学び身につけることで術式の効率を上げることができる。

魔法や魔術は対処法に乏しいため、魔法や魔術を使う者は対人戦において“初見殺し”や“分からん殺し”、すなわち「前情報なしには対処不可能」であることを重視する傾向がある。逆に言えば「手の内がバレれば、いずれ何らかの対処法が見つかる」ため、手の内をバラすのを極力避け、魔法・魔術を使っていると分からないように使う、と言える。

ちなみに神々によって齎される「奇跡」は、本来の物理法則を神々が一時的に局地的に異なる物理法則へ書き換え「最初からそうであったかのように」起きる一種の自然現象である。そのため、本来の物理法則では起こり得ない事象が起きても魔導のような歪みの痕跡や反動は現れず、魔導では実現困難な事象でも神々に認可されれば容易に実現可能である。例えば切断された四肢を繋いだ場合も、「魔導」であれば継ぎ目が残り機能回復まで訓練が必要など問題も多いが、「奇跡」であれば最初から切断されなかったような状態へ戻り切断の痕跡はほぼ残らず(魔導による切断であれば、その術式の残滓が読み取れる程度である)、機能にも問題は全くない。ただし、どの程度の奇跡が認可されるかは神々の得意分野や術者の信仰心に負うところが大きく、本来の物理法則では困難な事象ほど神々からの寵愛が必要となる。また、魔導では実現困難な事象も容易に実現できるという意味で、特定の専門分野の魔導師にとって嫉妬や興味の対象にもなっている。

地理等

ライン三重帝国
建国から500年を数える、中央大陸西部北方に位置する君主制国家。3つの皇統家と7つの選帝侯家による互選で皇帝を選出する、安定した統治により市民層が比較的豊かな国。3つの皇統家が全て異なる種族のためか、種族を問わず受け入れる国風があり、また長子相続が一般的で、農民でも家の後継者や優秀な子女を代官の私塾へ通わせる風潮がある。また建国に関わる人物が温浴を奨励した歴史から、風呂好きとして知られる国民性を持つ。なお三重帝国における一般的な風呂は、蒸し風呂である。公用語である「帝国語」はドイツ語に酷似し、また家名(苗字)を持てるのは貴種やそれに近い功労者に限られる。
行政システムは比較的近代的で、有力貴族が「領主」として治める「領邦」の下に配下の貴族が治める「行政管区」があり、更に細分化された地域や街を「代官」である下級貴族や騎士が治めている。代官は複数の荘園を治めるため、各荘園には領民のまとめ役である「名主」が信任され、必要に応じて代官の業務代行や補佐を執り行う。 ベアーリン 三重帝国の北方に位置する帝都。人口は6万人ほど。皇帝の居城や魔導院と言った中枢機能を備えるが、連邦に近い成立経緯を持ち各地に領地を持つ貴族たちが集う性質上、国の内外を問わず政治的交渉の場に特化した都市であり、産業は商業と金融に偏っている。 ヴストロー 帝都の北西に位置する中小規模の地方都市。帝都より早馬で2日ほどの距離にあり、三重帝国の最北方地域と帝都を結ぶ「入り口」となっている。文化的には最北方地域に属し、食事や服装、言葉なども北方寄りである。 ブランケンブルク 帝都の南に位置する、大きな湖と隣接した人口数千人ほどの都市。40~50人程度の隊商が帝都より10日ほどで到着する距離にあり、湖で採れる新鮮な魚を使った揚げ物が名物。 リプツィ行政管区 三重帝国の東方に位置する行政管区。 リプツィ リプツィ行政管区の州都で、三皇統家の一画エールストライヒ家の本拠。帝都ベアーリンから南方へ直線距離140kmに位置する。しかし帝都との間に南剣連峰を挟んでおり、これを打貫する交通網が存在しないため、早馬でも数日、徒歩であれば2~3週間はかかる旅程となる。 ウビオルム行政管区 三重帝国の西方に位置する行政管区で、二つの管区を擁するウビオルム伯爵領の一つ。 ケルニア ウビオルム伯爵領の州都。戸籍上の人口は4万人ほどだが、交易や日雇い等の一時滞在者を加えた実人口は6万人ほどにもなる。 リプラー ウビオルム伯爵領の東端に位置する産業都市。人口は1万2千人ほど。鉄工同業者組合の発祥地であり伯爵領における金属加工の中心地でもある。三重の市壁に囲まれ、その内側は金属加工設備の煙突が林立している。 デューレン行政管区 三重帝国の西方に位置する行政管区で、二つの管区を擁するウビオルム伯爵領の一つ。 ラウジッツ行政管区 ヴィゼンブルク 鉱山労働者の拠点都市で、戸籍上の人口は3千人ほどだが、一時労働者を加えた実人口は1万5千人ほど。北西に南剣連峰が位置し、その南の低山帯に銀鉱山を中心とする各種鉱山が開かれており、鉄工業も盛んだが、森林資源を大量に消費する鋳造所は存在しないらしい。エーリヒが立ち寄った時点での領主は武芸好きらしく、定期的に領主主催の闘技大会が開かれている様子。 マルスハイム行政管区 三重帝国の西方に位置する行政管区。西方辺境域とも呼ばれる三重帝国の最辺境地で、地の果て(エンデエルデ)の異名を持つ。三重帝国建国時より西方諸国との領土紛争の舞台となっていたため、西方の衛星諸国家群と隣接する軍事的要所でもあり、皇統家バーデン=シュトゥットガルド家の縁戚であるマルス=バーデン家がマルスハイム辺境伯として治めている。帝都から離れていることで法規制や整備が行き届かず、衛星諸国や異国との国交が盛ん故、潜在的に紛争の種や治安の悪さを抱えた「冒険者の飯の種が腐るほど転がっている」地域。新しいことを始め一旗揚げるに適した地域とも言われる。 マルスハイム マルスハイム行政管区の州都。領土紛争に際して軍事拠点として建てられた城館を中心に発展し、都市北方にマウザー川が流れる城郭都市。城館は広い平原の真っただ中にある不自然な丘陵の上に建っており、伝承によれば何度も築城と土豪からの妨害が繰り返された挙句、当時の辺境伯が家が傾くほどの資産を注いで必要な資材や人材を準備し、僅か一夜で丘を作り砦を築いたとされる。その後の防衛力は凄まじく、五万の敵軍勢を僅か八千の手勢で跳ね返したと言う英雄譚まである。そうした紛争の歴史から血腥いエピソードには事欠かないが、必要最低限の修復や整備もされているため、特に変わったところのない“がっかり名所”も多いらしい。 マルスハイム冒険者同業者組合 その名の通り、マルスハイムに設立された冒険者の組合。現在の組合長は、先代マルスハイム伯の庶子であり、現マルスハイム伯の異母姉であるマクシーネ・ミア・レーマン。 組合会館の中には広いホールに8つの窓口と様々な高さの記帳台、幾組かのローテーブルやベンチ、依頼が貼られた色分けされた衝立などが設置されており、役所や銀行のような雰囲気を醸し出している。また会館の奥には、掲示板に出せない依頼や余人に聞かせられない高額報酬等の話をするための応接間も備えられている。 アードリアン恩賜広場 マルスハイム冒険者同業者組合の前に広がる、噴水と花壇が設置されたこじんまりした広場。同広場は冒険者同士の待ち合わせなどに使われているが、組合の目前であるため、死闘は厳禁とされる。 アルトハイム マルスハイムの東に位置する人口8千人ほどの大都市。現マルスハイムが建てられる以前の旧マルスハイムであり、州都が移転する際に都市名を改めた。現在では地理的にも政治的にも重要性を失っており、中央との中継点として惰性で残っているだけと言う。 イルフュート荘 マルスハイムからそう遠くない田舎荘。農業の他、土地を切り拓くための林業も行われている。十七代続く名家で周辺の荘も管轄する薬草医のイクス家、代官公認の狩人がいるなど、そこそこの規模はある様子。 三重帝国魔導院 三重帝国の建国に際し設立された国立の魔導研究機関で、帝国唯一の公的に魔導を扱う組織。あらゆる魔導の“理論”を蒐集・管理する組織であり、国が認めた優秀な魔導の研究者が集い、国の要請に応じて公務を執行することもあるなど、半ば官僚に近い立場にある。そのため単純に魔力量が多いだけの人物や、感覚的に魔導を使う市井の「魔法使い」とは一線を画す。また、そうした研究者や実践者を育成する教育機関としての側面も持つ。魔導院に入学するには多大な費用がかかり、魔導師の弟子になる場合でも最低で農民の年収の3倍程度の年額、伝手がなければその2倍ほどの学費が必要となる。 機能中枢を担う本館は帝城に併設されており、真っ黒な南の出城で「鴉の巣(クレーエスシャンツェ)」の通称を持つ。また付近の市街地には“魔導区画”と呼ばれる魔導に関わる者たちの住居や工房、私塾などが集められた専用区画が存在する。 魔導院に所属する者は「聴講生」「研究員」「教授」の位階に区分され、いずれも非正規の「客員」と「正規」の所属者に分けられる。聴講生は出身地の私塾などで基礎教育を受けた結果、地域の有力者などから推薦されて魔導院への入学を認められた「魔導院と言う学校の学生」であり、すなわち帝国が認めた公的な魔導の学び手で、師匠以外の講師からも教えを受けられる。魔導師の弟子は師匠(となる魔導師)に才能を見出され、年齢や基礎教養の有無を問わず師匠から教えを受けるようになった者であり、すなわち師匠の裁量による私的な魔導の学び手で、魔導院の承認を受ける必要があるものの「聴講生でなくても構わない」、と言う違いがある。そのため基礎教養を持たなかった「魔導師の弟子」が十分な基礎教育を受けた結果「聴講生」になることもある。聴講生から研究員、研究員から教授への昇格には(主に師匠である)教授から推薦を受け研究論文を提出する必要があるが、降格も普通にあるらしい。正規の研究員以上になると国から研究予算が付き、院内に工房が与えられ、公的な魔法・魔術の道の先導者として「魔導師(マギア)」を名乗ることが許されるが、定期的な講義や討論会への参加や論文の提出などが義務づけられる。研究内容は禁忌に触れない限り自由で、副業等の制限もなく、また後進の指導もある程度は目こぼしされるなど、魔導に関してはある程度の権限を持つ。教授になると、加えて聴講生や研究員への講義・教育指導を行う義務を負い、魔導院を運営するための連絡会に加わり、名誉貴族位を与えられ魔導官僚として国政にも携わる立場となる。国風から理論の実践を重視する傾向があり、また自身の優秀さを他者に認めさせたい者が集められ創設されたため学閥競争が非常に激しい。また魔導師そのものが“初見殺し”を由とする性質から、自身の研究に関しても可能な限り「核心」を隠そうとする傾向がある。 院内は魔導の研究姿勢や秘匿や普及に関する主義の違いから払暁派、黎明派、中天派、落日派、東雲派、烈日派、極夜派と大きく7つの学派に分かれており、その下に更に、教授をトップとし(元)生徒や(元)弟子達による学閥が存在する。その中でも最初の5つに属する有力な五大学閥による勢力争いが日々繰り広げられている。 院内には、魔導師同士の互助を目的として、魔導師が他の魔導師や聴講生に依頼を発注するための「御用板」が設置されている。依頼の内容は様々で、論文の精査や添削、単なる買い物の荷物持ち、新たな魔法の実験や実践の補助、素材の採取や探索への同行、果ては晩餐会の賑やかしと言ったものまである。依頼者によっては自らの閥に招く基準にする教授もおり、院内における人間関係の構築に大きく寄与している様子。 また地下深くに危険な魔導実験を行う専用の「実験室」が埋設されている。機密度や魔導規模に応じて様々なタイプが用意されており、エーリヒが利用した共用の実験室は警察や軍隊の射撃練習場を思わせる部屋だったが、他にも地平線が見えるほど広い部屋などもある様子。
ハイデルベルグ行政管区
三重帝国の南方に位置する行政管区。冷涼な気候で、ブドウとオリーブの栽培が盛ん。
ケーニヒスシュトゥール荘
ハイデルベルグ行政管区の西部に位置するケーニヒスシュトゥール城塞の管轄下にある荘園のひとつ。管轄する代官は帝国騎士テューリンゲン卿。
インネンシュタット
ケーニヒスシュトゥール荘の西方に位置する、川沿いの大都市。都市国家時代から1000年以上の歴史を誇り「古都」とも称される城郭都市で、同荘の者が必要に応じて仕事に出向くこともあり、同荘からは最も近い「都会」である様子。

セーヌ王国
三重帝国の西方に位置する隣国。三重帝国の建国期には既に数百年の歴史を持ち治世の安定期を迎えつつあった、古く伝統ある国家。
北方離島圏
中央大陸北西部より北方に位置する巨大な島。合議制に近い王制が布かれている封建制国家だが、政情は極めて不安定で内戦により頻繁に国王が入れ替わるほか、ときに異民族が王位を簒奪することもある様子。帝国語(ドイツ語)とは異なる「離島語」(恐らく英語)を使う。また独自の魔導刻印を持ち、物品に魔導刻印を刻み祈禱師たちが祈りを捧げることで、生半可な魔導では太刀打ちできない絶大な効果を発揮する。
神皇の国
南方大陸にある、上古の時代から続く独立国家。度重なる戦争と継承を巡る内紛、それらを原因とする文明の停滞と人口減少に伴う守護神群の力の衰退で国力が落ちており、定期的な河川の氾濫が齎す豊穣で食糧が豊富なため辛うじて国家の体裁を保っている様子。三重帝国とは南内海を介して接しているため、制海権や近隣の都市国家の領邦主権を巡って度々紛争が起きており、300年前に帝国が勝利した際は賠償として神殿の装飾や黄金神像まで召し上げたらしい。
ピレニア連合評議国
三重帝国の西方、セーヌ王国より更に西に位置する緑西海の沿岸国。他の大陸との交易が盛んらしく、異国情緒と西方文化が混じり合った独特の陶器が名産品である様子。

文化等

基本的には産業革命以前のヨーロッパにも似た文化を持つが、ドイツの行政管区システムや製紙法や入浴習慣、手押しポンプなどが存在し、知識層には大地が「天体」であることや万有引力の法則などが知られ、古代ローマから19世紀頃までのファッションが混在しているため、エーリヒは「自身と同様の転生者がぼちぼち存在したのではなかろうか」と推測している。

通貨
三重帝国においては金属製の硬貨が一般に流通しており、1ドラクマ(金貨)=100リブラ(銀貨)=10000アス(銅貨)と言う換金レートになっている。ただしこの世界の通貨は本位制度でなく、各時代の為政者が様々な硬貨を発行しているため、硬貨はその質に応じた実質価値で計られる。例えば、作中に登場する「ジョゼ1世の在位5年記念金貨」は金貨の中でも特に混ぜ物が多いため、ほぼ最安に見られており、その価値は50リブラ(通常は金貨1枚で100リブラなのでほぼ半額)程度とされている。
生命礼賛主義者
ロリコンあるいはショタコンのような、小児性愛者の迂遠な表現。とある聖職者が、ヒト種基準で「幼い」容姿を持つ人種に対する偏愛を「若さ溢れる瑞々しい生命力を礼賛する純粋な気持ち」と表現した故事に由来するとされる。
兵演棋
三重帝国と周辺諸国で人気のボードゲーム。12×12マスのボード上で駒を取り合う将棋やチェスにも似たゲームだが、固定の2種の駒以外は様々な特性を持つ駒から任意のものを選び配置できると言うデッキ構築の要素を持つ。駒は板に略号を記しただけの簡易なものから、歴史上の人物をモチーフにしたフィギュア状のものまでバラエティに富み、単品の駒そのものが商品価値を持つほど。
組絵細工
三重帝国では安価で一般的なパズル。四角形と三角形の板7種を組み合わせお題の形状を作るもの。

冒険者同業者組合

この世界において同業の者が集う同業者組合(ギルド)は様々あり、冒険者同業者組合もそうしたひとつである。同業者組合そのものは基本的に大都市単位で職業ごとに組合が結成されており、職種によっては近隣の荘園に組合員が出向し常在している。例えば、鍛冶屋は日常生活に不可欠な包丁や農具や釘などを鍛造するため、何処の荘園にも存在するが、その荘園に同業者組合はなく、彼らの所属は近隣の大都市の同業者組合である。 相互扶助のため同職の組合同士は都市の垣根や国境を越えた繋がりを持っており、ある都市の同業者組合に属する者は別の都市の同職の組合においても便宜が図られる。

その起源は職業により様々だが、冒険者同業者組合の場合は神代、英雄的な力量を持つ者たちが人類を脅かす強敵を討つべく、国や人種の垣根を越えて手を組み旅したことを起源とする。そのため冒険者同業者組合に所属する全ての冒険者には、自由な国家間移動が認められている。 しかし現在では、国家が統率の取れた軍隊を常備できるほど文化文明が発達したため、冒険者が「人類を脅かす強敵を討つ」と言うお題目そのものは形骸化している。冒険譚に謳われるような輝かしい英雄に実際になれる者はごく一部で、ほとんどの冒険者は領主や代官などから雑事を押し付けられる何でも屋と言うのが実態であり、いわば日雇いの派遣労働者である。その日暮らしの食い詰め者も多いため冒険者同士のトラブルも日常茶飯事であり、その日の飲み代のためだけに強盗殺人が起きることすら珍しくない。

所属する冒険者は実力や実績に応じてランク分けされており、下位から煤黒、紅玉、琥珀、黄玉、緑青、青玉、瑠璃、紫檀の色で表される。なお、この色分けに関してエーリヒは見覚えがあるものの、単なる偶然の一致か同様の転生者の遊び心だろうと思っている。 このランクは所属する同業者組合が認定するものであり、組合に登録し、組合が斡旋した依頼をこなして実績を積むことで昇格する。依頼にもランクがあり、通常は自身の冒険者ランクに応じた依頼の中から選ぶ形になる。煤黒ランクの依頼は日常の雑事に近いものだが、ランクが上がれば隊商の護衛など如何にも冒険者と言った依頼も受けられるようになり、上位ランクの冒険者になれば組合から直接依頼を打診されることもある。また、上位ランクの冒険者から勧誘されれば、本来は請け負えないランクの依頼への参加も認められる。 所属する冒険者には登録証が発行されるが、登録時の審査などは特になく、特権等も特にない。昇格に従って書類を追加提出する必要があるらしく、琥珀ランク以上へ昇格する際には身分証明書が必要となり、組合の登録証も身分証明書として機能する他、依頼を受けて市外へ出た場合は入市税も免除されるなどの特権が付与される。それらの情報からエーリヒは、冒険者ランクは能力だけでなく信用も含めた格付けを行うものと推測し、依頼数だけでなく成功率や依頼者からの評価、冒険者自身の品格も昇格の重要な要素と見ている。

氏族

多くの冒険者は同業者組合への所属とは別に、必要に応じて私的なグループを作り、協力し合って仕事を行う。魔法を使える者が限られるためグループメンバーは流動的で、やがて意気投合した者同士で固定メンバーを組み活動する者たちや、単なる同好会や互助会レベルのグループも自然と形成される。 ある程度の規模を持ち組織的にまとまったグループは、特定の酒保を拠点とし、また多くの場合は上納金を修める(ため、他のグループと掛け持ちするのは難しい)など独自の掟を定めている。この組織的にまとまったグループは、マルスハイムにおいては「氏族(クラン)」と呼ばれているが、他の地方にも呼び名が異なる同様のグループは存在している。

また魔法使いは専門職にして技術職であるため、その存在自体が珍しく、引く手あまたで安定した職を見つけることが容易いこともあり、日雇い労働者である冒険者の魔法使いは一般人と比較しても希少な存在である。仲間に魔法使いがいるだけで一定の信用を得られるため、場合によっては拉致同然の勧誘すら行われる。

エーリヒが授かった権能

本項では更待 朔がエーリヒに転生する際に“未来仏”から授かった権能について解説する。

この世界において、知性体が持つ様々な能力は数値的な「パラメータ」として示される。具体的には「基礎ステータス」である〈膂力〉や〈耐久力〉など、上達しない「特性」である〈神童〉や〈生粋の貴族〉など、後天的に習得し上達する「技能/スキル」である〈木工彫刻〉〈聞き耳〉などである。しかし本来これらは全て「隠しパラメータ」であり、この世界の知性体は自身のパラメータを識ることはできない。また、これらを「成長」させるには通常、何某かの行動や学習を行う必要があるが、これは行動や学習によって「熟練度」(ゲームで一般に「経験値」と呼ばれるポイント)を獲得し、行動や学習の内容に応じたステータスやスキルに熟練度が自動で割り振られ、それらが一定値まで蓄積すると「レベルアップ」するシステムになっている。

エーリヒの場合、自分自身のものに限られるが「自身を構成する全てのパラメータ」を見る能力と、行動や学習によって得た熟練度が「自動で割り振られず」蓄積され、「彼自身の意思で任意のときに任意のパラメータに割り振ることができる」能力を与えられている。これらの権能に、エーリヒはTRPGのキャラクター構築システムとの相似性を見出している。 具体的には「雑草を抜き」続けた場合、通常であれば雑草を抜くために必要な基礎ステータスや技能が自動で上がり続け、その他のパラメータに影響することはない。だがエーリヒの場合、雑草を抜き続けても関連するパラメータに熟練度が割り振られることなく蓄積され続けるだけである。この「雑草を抜き続けて蓄積された熟練度」をエーリヒは任意のパラメータに割り振ることができ、例えば剣技に関するスキルに割り振ることで「雑草を抜き続けることで剣術が上達」でき、例えば歌唱に関するスキルに割り振ることで「雑草を抜き続けることで歌が上手く」なれる。僅かな光で暗闇を見通せるようになる〈猫の目〉特性を後天的に取得すれば「雑草を抜き続けることで夜目が利くようになる」ことまで可能である。更にスキルに関しては「他者から教わる」ことで消費する熟練度に軽減ボーナスが適用される上、同時に「教わる」ことにより熟練度を獲得できると言う特性がある。ただし関連する他のパラメータに熟練度が割り振られないため、無駄のない効率的な熟練度の割り振りが可能な反面、歪で不自然な成長を遂げることになる。 また一度割り振った熟練度を「割り振りなおす」ことはできず、やり直しがきかないため、無計画な熟練度の割り振りは中途半端な器用貧乏キャラになる危険を孕んでいる。エーリヒは前世で経験したTRPGから、自身がそう言った中途半端なキャラになる可能性を十分に認識しており、一時の衝動に駆られることもあるが、基本的にはある程度の計画性を持って慎重に熟練度を割り振り、この世界における「最強ビルド」を目指している。 この権能は原則として、エーリヒが権能に意識を向けることで「見えるようになる」が、パラメータのロックが解除されるなどの重要な変化が起きた場合、意識せずとも「視界の隅に通知がポップアップされる」描写があるなど、コンシューマゲームにも似たインターフェイスを持っている。また、各パラメータを上昇させるのに必要な熟練度は「二桁違う」等具体的な数値で示されているらしき描写があるが、それらの数値は読者には提示されない。

これらのパラメータは視覚的に「円柱」として表現され、基礎ステータスを示す円柱を中心に、そこから派生する特性やスキルを示す円柱が周囲に林立する形となっている。これらのパラメータは十数年かけても全てを確認できないほど多彩であるため、検索機能が付いている。また簡易的な説明文も付記されており、未取得であってもある程度の内容を知ることはできる。パラメータの中には「現時点では取得できない」ようロックがかけられたものもあり、ロック解除にはパラメータごとに決められた前提条件が必要となる。異種族の特性や〈生粋の貴族〉のようにヒト種で農民生まれのエーリヒには完全にロック解除・取得不可能なものや、特定のパラメータ上昇により解除されるもの、ある種の「決意を固め」たり「考え方が変わっ」たりすることで解除されるもの、他者からの干渉によって解除されるもの、など前提条件は様々である。また、特性の中には取得できても「効果を発揮する期間」や「効果を得られる条件」が限定されているものもある。 ただし、これらのパラメータが実際の行動にどの程度の影響を与えているのかを示す具体的な数式は不明であり、エーリヒはパラメータの説明文などから各パラメータの組み合わせによって高い相乗効果が期待できる「コンボゲー」の趣を見出している。

基礎ステータスは、〈肉体〉カテゴリに属する〈膂力〉〈耐久力〉〈免疫力〉〈持久力〉〈瞬発力〉〈器用〉〈思考力〉〈記憶力〉〈魔力貯蔵量〉〈瞬間魔力量〉の計10個。うち〈思考力〉は思考の速さと合理性、〈魔力貯蔵量〉は魔力を貯め込める「タンク」の最大容量、〈瞬間魔力量〉は魔力を出力する「蛇口」の大きさを意味する。また〈魔力貯蔵量〉と〈瞬間魔力量〉は、魔力資質に開眼するとステータス表示にも「開眼」と追記される。 〈肉体〉カテゴリの周辺には〈精神〉〈教養〉〈体術〉〈感覚〉〈社交〉などの基礎カテゴリが配置され、更にその周辺に無数の職業カテゴリが配置されている。特性や技能は原則として、これらのカテゴリの下位に位置している。 なお、これらのパラメータに(エーリヒのように不自然に)熟練度を割り振り能力を成長させても、本人の人格や意思への影響はない。

各パラメータには「評価値」(いわゆる「レベル」)によってどの程度の能力かが示される。評価値は種族の平均値を基準に算出され、スケールIからスケールIXまでの9段階で示される。ただしそれらの評価値はあくまで能力が種族全体でどの位置にあるかの相対的な目安であり、能力そのものは割り振られた熟練度に基づいてシームレスに変化する。パラメータによってスケール毎に数値でない名称が決められており、肉体的な基礎ステータスの評価値はスケールIから順に〈虚弱〉〈貧弱〉〈貧小〉〈平均〉〈佳良〉〈精良〉〈優等〉〈最良〉〈寵児〉、肉体を使うスキルは同じく〈手習〉〈初心〉〈基礎〉〈熟練〉〈熟達〉〈円熟〉〈妙技〉〈達人〉〈神域〉、となっている。

既刊一覧
小説
  • Schuld(著)、ランサネ(イラスト)、オーバーラップ〈オーバーラップ文庫〉、既刊9巻(2023年4月25日現在)
  • 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す1 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』 2020年4月25日発売、ISBN 978-4-86554-638-5
  • 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す2 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』 2020年8月25日発売、ISBN 978-4-86554-718-4
  • 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す3 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』 2021年1月25日発売、ISBN 978-4-86554-822-8
  • 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す4 上 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』 2021年6月25日発売、ISBN 978-4-86554-934-8
  • 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す4 下 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』 2021年9月25日発売、ISBN 978-4-8240-0000-2
  • 特装版(OVERLAP STORE先行予約限定 アクリルブロック付き)
  • 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す5 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』 2022年2月25日発売、ISBN 978-4-8240-0108-5
  • 特装版(OVERLAP STORE先行予約限定 アクリルブロック付き)
  • 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す6 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』 2022年7月25日発売、ISBN 978-4-8240-0239-6
  • 特装版(OVERLAP STORE先行予約限定 ダイス&ダイストレイ付き)
  • 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す7 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』 2022年11月25日発売、ISBN 978-4-8240-0335-5
  • 特装版(OVERLAP STORE先行予約限定 ダイス&アクリルトークン付き)
  • 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す8 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』 2023年4月25日発売、ISBN 978-4-8240-0467-3
  • 特装版(OVERLAP STORE先行予約限定 10面ダイス&アクリルトークン&ダイスポーチ付き)
  • 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す1 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』 2020年4月25日発売、ISBN 978-4-86554-638-5
  • 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す2 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』 2020年8月25日発売、ISBN 978-4-86554-718-4
  • 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す3 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』 2021年1月25日発売、ISBN 978-4-86554-822-8
  • 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す4 上 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』 2021年6月25日発売、ISBN 978-4-86554-934-8
  • 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す4 下 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』 2021年9月25日発売、ISBN 978-4-8240-0000-2
  • 特装版(OVERLAP STORE先行予約限定 アクリルブロック付き)
  • 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す5 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』 2022年2月25日発売、ISBN 978-4-8240-0108-5
  • 特装版(OVERLAP STORE先行予約限定 アクリルブロック付き)
  • 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す6 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』 2022年7月25日発売、ISBN 978-4-8240-0239-6
  • 特装版(OVERLAP STORE先行予約限定 ダイス&ダイストレイ付き)
  • 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す7 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』 2022年11月25日発売、ISBN 978-4-8240-0335-5
  • 特装版(OVERLAP STORE先行予約限定 ダイス&アクリルトークン付き)
  • 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す8 〜ヘンダーソン氏の福音を〜』 2023年4月25日発売、ISBN 978-4-8240-0467-3
  • 特装版(OVERLAP STORE先行予約限定 10面ダイス&アクリルトークン&ダイスポーチ付き)
  • 特装版(OVERLAP STORE先行予約限定 アクリルブロック付き)
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  • 特装版(OVERLAP STORE先行予約限定 ダイス&ダイストレイ付き)
  • 特装版(OVERLAP STORE先行予約限定 ダイス&アクリルトークン付き)
  • 特装版(OVERLAP STORE先行予約限定 10面ダイス&アクリルトークン&ダイスポーチ付き)
漫画
  • 内田テモ(漫画)、Schuld(原作)、ランサネ(キャラクター原案)『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す ヘンダーソン氏の福音を』KADOKAWA〈電撃コミックスNEXT〉、既刊1巻(2023年4月27日現在)
  • 2023年4月27日発売、ISBN 978-4-04-914925-8