The Book (小説)
以下はWikipediaより引用
要約
『The Book』(ザ・ブック、Jojo's Bizarre Adventure 4th Another Day)は、2007年11月26日に集英社から発売された乙一による荒木飛呂彦の漫画作品『ジョジョの奇妙な冒険 Part4 ダイヤモンドは砕けない』の後日談を扱ったノベライズ作品。
概要・制作背景
第四部連載中の1994年に、ジャンプ ジェイ ブックスから第三部のノベライズ作品『ジョジョの奇妙な冒険』が刊行されており、デビュー前の乙一は、週刊連載を追う傍らでノベライズ版も読んでいた。乙一は、1996年にジャンプ小説大賞を受賞してデビューする。続いて2001年には第五部のノベライズ作品『ジョジョの奇妙な冒険II ゴールデンハート/ゴールデンリング』が刊行されることが決まる。
そんな折に、乙一が集英社の編集部に訪れた際に「第四部は小説にしないんですか? もしも書く人がいなかったら、書かせていただけませんか?」と尋ね、そのことがきっかけで企画がスタートすることになる。
まず、2002年に乙一は『読むジャンプ』(集英社)に、第一稿である『ジョジョの奇妙な冒険 テュルプ博士の解剖学講義』の冒頭部分を発表する。しかし、加筆・改稿を繰り返すうちに内容が二転三転し当初の『テュルプ博士』とは大幅に内容が異なるものになっていく(このため『読むジャンプ』に掲載された荒木飛呂彦の挿絵は本作では使用されず、新たに描き起こされることとなった)。
乙一が満足できる作品を作り上げるために何度も何度も書き直した結果、破棄した原稿用紙は2000枚以上、5年の歳月を要し本作は完成した。その間、乙一はサボらないために自ら集英社の編集部へと通勤し、原稿を書いていた。本作品は荒木にも絶賛されている。
語り手は蓮見琢馬、双葉千帆、飛来明里、広瀬康一などバラバラである。康一のパートにて、作中人物である康一では語り得ない、メタフィクショナルな言及がある。「Part4の連載時に読者の間で話題になった、幼少時の仗助を救った学生服の少年とは?」という謎について、これは終盤の展開への前振りでもある。
章またぎページには、荒木飛呂彦によるイラストと、レクイエムの歌詞が書かれている。刊行時期が影響して、Part7時の絵柄でPart4のキャラクターが描かれている。
最初に刊行された四六判ハードカバー版の装丁は、ダークブラウンの表紙やページの厚みなど、作中に登場する蓮見琢馬のスタンドと酷似した造形となっている。ノベルス版もカバーを外すとブラウンの表紙をしている。帯のキャッチコピーは「ジョジョの奇妙な冒険20周年乙一×JOJO」「本の存在により、仗助は死ぬ」。
2011年の『VS JOJO』複数のノベライズ企画の先駆けとなったともいえる作品であり、紹介宣伝が一緒にされることが多い。
あらすじ
舞台はM県S市杜王町(もりおうちょう)。「弓と矢」と吉良吉影をめぐる戦いが終結してから半年後の2000年初頭。
冬休みの終わる3日前、ぶどうヶ丘学園高等部1年の広瀬康一と漫画家・岸辺露伴はコンビニの前で血まみれの猫と遭遇する。猫の飼い主を捜してたどり着いた先には家の中で車に轢かれた女性の奇妙な死体。露伴はスタンドで猫の記憶を読み取り、「腕に赤い爪痕のある男子学生」という手がかりをつかむ。
双葉千帆は図書館で、奇妙な少年、蓮見琢馬と出会う。数年前に自分を危機から救ってくれた恩人ではないかと質問するが、彼は否定する。千帆は彼に「鉄塔男のような生活が本当に可能なのでしょうか」と質問すると、琢馬は「かつて杜王町には、ビルの隙間に挟まったまま生きていた女性がいたのだから、鉄塔から出ずに生活する者がいるくらいいいだろう」と回答する。千帆はまた「室内で車に轢かれた女性」の怪死事件を持ちかける。琢馬の持つ本が、千帆には見えない。
康一から話を聞いた東方仗助は、腕に爪痕のある男子生徒を探し、琢馬にも服を脱いで腕を見せるように問い詰める。琢馬は「もし人類史上究極の小説があったとしたら、その小説で人が殺せるかもしれない」「小説家は感情移入で人を殺す」と語る。そこに虹村億泰が腕に爪痕のある者は少し探しただけで何人もいると報告してきたことで、仗助の琢馬への取り調べはうやむやになる。疑いをかけられた琢馬は、邪魔な仗助を始末すべく正体を隠してスタンド攻撃を仕掛けるが、仗助を狙った攻撃が朋子を誤爆してしまう。母親を巻き添えに傷つけられたことで、仗助は本腰を入れて犯人探しに乗り出す。
登場人物
原作からの登場人物
東方 仗助(ひがしかた じょうすけ)
広瀬 康一(ひろせ こういち)
虹村 億泰(にじむら おくやす)
岸辺 露伴(きしべ ろはん)
山岸 由花子(やまぎし ゆかこ)
トニオ・トラサルディー
小説版オリジナルの登場人物
蓮見 琢馬(はすみ たくま)
ぶどうヶ丘高校の2年生、17歳。右耳だけにイヤリングをつけ、胸ポケットに万年筆を差している。赤ん坊のときに保護された身元不明の子供で、中学を卒業するまでは施設で暮らしていた。名前は、保護された乳児院の住所「蓮見」地区と、右肩にあった「馬のような形の痣」から命名された。
あらゆることを見聞きしたそのままに記憶する、常人離れした記憶力を持っている。どんな些細なことでも忘れることができない。特に幼少時は苦しめられ、爪や鋏で自殺や自傷を図った。スタンドを具現化したことがきっかけとなり苦しみは表面上は沈静化したが、傷跡は体中に残っており、隠すために絶対に学生服を脱がず、体育の授業も全て欠席している。後輩の双葉千帆と友人付き合いをしており、ドーナツを名前で呼ばず「あれ」と呼ぶ。
大神照彦と飛来明里の息子で、ビルの隙間に閉じ込められていた明里が出産した。物心ついて成長してから母の素性と最期を知り、父に復讐することを誓う。復讐計画の一環として双葉千帆に接近する。また織笠花恵の存在が復讐実行の妨げとなるおそれがあったために、スタンドを用いて彼女を殺害する。織笠の怪死事件を調査していた仗助も排除しようとしたが、仗助を狙った攻撃が朋子を誤爆してしまったことで、完全に敵とみなされる。
目的通りに大神照彦への復讐を果たしたことで、ようやくこれから自分の人生を始めることができると、生まれ育った杜王町を離れようとする。だがその矢先に、億泰に追いつかれて戦闘となる。スタンド戦の経験の差から圧倒され満身創痍の状態にまで追い詰められるものの、自身のスタンドの特性を活かした奇襲で億泰を倒す。
仗助との戦闘では、パワー面では圧倒的に不利ながら、「自分の記憶の中から、仗助の恩人である学生服の青年を探してやろうか」と持ち掛けて心理戦をしかける。だが覚悟を決めてふっきれた仗助に上回られ、負傷しながらも至近距離からのスピード勝負を挑むも、力及ばず敗れ去る。決着後に図書館の屋根から落ちそうになり、仗助に救いの手を伸ばされるも拒否し、そのまま墜落死を選ぶ。
ナイフを隠し持っており、いざという場合には投擲して攻撃に用いる。琢馬は細身で非力であるが、自身のスタンドで技術を復習することで、百発百中の腕前となっている。またスタンド使いにはスタンドが見えることを逆利用して、The Bookを広げた裏側に隠すなどの応用も行う。
The Book(ザ・ブック)
琢馬の記憶を文章に変換して記録する本型のスタンド。その記述を他人(スタンド使いかどうかは問わない)に見せることで、相手にもその記憶を擬似的に体験させることができる。この「感情移入」の効果は自身にも適用されるため、危険なページは「禁止区域」として普段は目に触れないようにしている。射程は30メートル程で、ページを破いて見せても効果は発揮される。ただし2m(本体からではなくスタンドから)の距離まで近づかなければ効果は現れず、視界が悪い、または盲目であったりして記述が読めない者に対しては効果が無い。古い記憶ほどページをめくる必要があるため攻撃が遅れるという欠点も持つ。なお、作中の挿絵には本を擬人化したような人型のスタンドとしても描かれている。
琢馬は自身の能力にずっと名前をつけていなかったが、虹村億泰の「ザ・ハンド」と交戦したことをきっかけに「The Book」と命名した。
双葉 千帆(ふたば ちほ)
飛来 明里(ひらい あかり)
織笠 花恵(おりかさ はなえ)
用語
茨の館(杜王町立図書館)
広大な敷地をもち、庭には池や噴水、奇妙な形のモニュメントなどがある。内装も古い洋風であり、玄関ロビーは吹き抜けで螺旋階段がある。古代遺跡のような重厚な内装の一階は文学のコーナーと閲覧スペース、二階には理工学や哲学などの本があり、屋根裏部屋のような造りの三階には高価な希少本や骨董品などが保管されている。
うめき声をあげる「奇妙な本」(正体は本にされた宮本輝之助)があるとの噂が立っているが、真相を確かめようとした千帆は結局見つけられなかった。
鉄塔
児童養護施設
ビルの隙間
飛来明里はここに落とされ、閉じ込められてしまった。
廃屋
5年前まではここに娘を亡くした老夫婦(琢馬の祖父母にあたる)が住んでいたが他界、琢馬と直接会うことはなかった。
作中で登場した実在の書籍及び著者
- 『聖書』(The Book)
- 『ガリバー旅行記』(ジョナサン・スウィフト)
- 『ジャックと豆の木』
- 『幸せの青い鳥』(モーリス・メーテルリンク)
- 『はてしない物語』(ミヒャエル・エンデ)
- 『失われた時を求めて』(マルセル・プルースト)
- 『十五少年漂流記』(ジュール・ヴェルヌ)
- 『千夜一夜物語』
- 海野十三
書籍情報
- ハードカバー ISBN 978-4-087-80476-8 2007年11月26日発売
- 新書 ISBN 978-4-08-703255-0 2011年12月19日発売 (ジャンプ ジェイ ブックス)
- 文庫 ISBN 978-4-08-745012-5 2012年11月20日発売(集英社文庫)