WORLD WAR Z
以下はWikipediaより引用
要約
『WORLD WAR Z』(World War Z: An Oral History of the Zombie War,ワールド・ウォー・Z)は、2006年に発売されたマックス・ブルックス(英語版)によるアメリカ合衆国の終末ホラー小説である。
ゾンビとの戦いを経験した人々にインタビューして書かれたオーラル・ヒストリーという設定になっており、登場人物は軍人、政治家から宇宙飛行士、主婦までさまざまである。ゾンビの発生源である中国をはじめ、アメリカ、ロシア、日本、ドイツなど世界中が舞台として登場する。
ゾンビとの戦いだけではなく、防衛に不向きなヨルダン川西岸を放棄したイスラエルで宗教右派と政府間の内戦が勃発したり、パキスタンとイランが難民問題から核戦争に発展するなど、人間同士の争いも描かれている。
2013年に『ワールド・ウォーZ』として映画化されたが、本作品とは設定を共有していないまったくの別作品となっている。
構想
ブルックスは「『WORLD WAR Z』は『ゾンビサバイバルガイド(英語版)』(ブルックスが今作の前に執筆した作品。ゾンビが存在する世界で書かれたゾンビ対策マニュアルという設定の本)の「法則」に従って設定し、作中にこのガイドが存在するかもしれない」と説明しており、実際に作中人物の会話のなかで登場している。
『ゾンビサバイバルガイド』に登場するゾンビは不治のウイルス「ソラヌム」に汚染されたアンデッド人間であり、本作に登場するゾンビとほとんど同じ設定である。
ブルックスは執筆にあたり、様々な参考資料を読み、各分野の専門家の友人に相談した。また、銃の設定にはアメリカ陸軍のものを引用した。
2006年10月のインタビューでブルックスは、本作はスタッズ・ターケル(英語版)の小説『よい戦争(英語版)』やジョージ・A・ロメロの映画の影響を受けていると述べた。本書の最後に書かれている謝辞においてこの2人と『第3次世界大戦』の著者ジョン・ハケット将軍の3人が着想を得る源になったとある。
本作は前述通りゾンビ戦争終結後のインタビューという体裁を取っており、作中時点ではゾンビ災害自体は既に収束している。物語は感染初期から拡大、国家の崩壊、人類の反撃までの各フェーズごとに世界中で奮闘していた人々の回想によって物語が進行し、作中世界で詳細が不明な案件(ゾンビウィルスの正確な起源、アルファチームの活躍など)は登場人物たちも知らず、よって本作でも明かされていない。加えて本作は世界中の人間が数年以上に渡って奮闘したことで徐々に絶望的状況が覆っていく、そして世界情勢に関与せず生き延びる事に必死だっただけの者や私利私欲のために動いていた者なども数多く登場する群像劇であり、英雄的な個人の活躍によって状況が好転する物語ではない。そのため映画版では、主人公がゾンビ災害に襲われる世界を飛び回って各地の協力を得てワクチンを開発するという大胆な改変が行われた。
本作品に登場するゾンビ
本作品に登場するゾンビは、ウイルス性の未知の病気に感染して凶暴な姿へ変貌した人間の死者である。感染者の肌は灰色へ、体液は黒い膿のようなものへとそれぞれ変化し、知能は完全に失われている。脳を破壊されない限りは首だけになっても血管運動によって動き続け、冬に凍り付いても春には雪解けとともに活動を再開する、さらには全身が炭化しても動き続けるなど非常に頑丈であるが、動きは鈍く走ることはできない。後述の体液のために深海底を歩くことも可能で、着底していた094型原子力潜水艦に群がり、乗員を驚愕させている。
空気感染はせず、感染者に噛まれることによって感染する。感染してから発症するまでの時間は個人差があるものの、遅い場合は2〜3日かかるため、感染者が難民に紛れ込んだり治療法を求めて先進国に密入国すること、さらには臓器移植のために闇取引されていた臓器の中に感染者のものが混入していたことが、全世界へゾンビが広まる原因となった。人間は感染者を見分けることはできないが、イヌは嗅覚で感染者を見分けることができる。人間以外の動物がゾンビ化することはないが、ゾンビの肉は有毒であり、動物が口にすると死に至る。
体液の粘性がタールのように高く変化しているため、爆発によって肉体がバラバラになったり突発性神経外傷を起こすことはなく、肉体が砲弾片で切り裂かれてバラバラになったり炎上しながらでも突進してくるため、MLRSや榴弾砲、航空兵器による砲爆撃はほとんど意味をなさず、有効な方法は遠距離からアサルトライフルによって頭部を打ち抜くか、近距離戦で頭部を破壊するしかない。APFSDSの直撃も貫通して穴を開かせるのみで、全く効果がない。
作中での呼称はゾンビ、ザック、グール、G、食屍鬼、グンタイアリ(日本での呼称)など。また、ゾンビ化の症状は実態が明らかになる前には「アフリカ狂犬病」と呼ばれていた。
なお、映画版では『28日後...』や『ドーン・オブ・ザ・デッド』に登場するような「走るゾンビ」であるなど、設定が変更されている。詳細はワールド・ウォーZ#あらすじを参照。
登場人物
アメリカ
アーサー・シンクレア・ジュニア
トッド・ワイオ二
クリスティーナ・エリオポリス
ロイ・エリオット
中華人民共和国
クワン・ジンシユー
南アフリカ共和国
ポール・レデカー
冷酷で風変わりな人物で、人間の感情は人間にとって無駄なものであるという信条を持っている。大学時代に歴史的・社会的な難問を人とは違った方向から解釈して常識はずれな解決策を論文で発表していたことがきっかけとなり当時のアパルトヘイト政権からスカウトされ、白人政権とアフリカ原住民の最終戦争計画「オレンジ84」を立案した。そのため南アフリカでは「人種差別主義者」や「極悪人中の極悪人」と呼ばれ忌み嫌われているが、レデカー自身は人種差別は人間の感情から生まれるものであるとして支持していなかった。
ゾンビ戦争が始まると、この戦争で勝つ方法を考えられる唯一の人物として政府に招集され「レデカー・プラン」を立案する。プランはそのあまりにも非人道的な内容から政府要人から大反発を受けるが、ただ一人南アフリカ民主制の父(幼名と風貌の描写でネルソン・マンデラと暗示されている)はこの計画を承認、レデカーを抱擁して感謝の言葉さえ口にした。しかし、実は鋭敏すぎる感性を持ち、憎悪や野蛮に満ちあふれた世界で自分の正気を守るために感情を押し殺して生きてきたレデカーは、それがトリガーとなり今まで押さえ込んでいた感情が爆発、精神が崩壊してしまうのだった。
ドイツ
ロシア
インド
ブラジル
オーストラリア
パレスチナ
イラン
日本
近藤辰巳(コンドウ・タツミ)
朝永維持朗(トモナガ・イジロウ)
日本編の登場人物の一人。1945年8月9日に長崎県の金比羅山で被爆し、その際に原爆の閃光を直視したため失明している。「被爆者」かつ「盲目」であることから二重の差別を受け、家族に迷惑をかけられないとの思いから療養院を去り、物乞いしながら放浪生活を送っていた中、札幌で中国からの引揚者の支援センター「赤風」で庭師として働く「大田秀樹」と出会う。アイヌ人であり同じく差別を受け、息子を満州で失った大田に快く受け入れられた朝永はようやく自分の居場所を得ることとなった。
ゾンビ戦争勃発後、朝永は障害者の自分が周りの人間の迷惑になったり、ゾンビになって同胞の日本人を襲うのはあってはならないと考え、再び一人で旅に出る。しかし、死に場所として選んだ日高山脈の国立公園で起きたある出来事をきっかけに、大田より朝永にとってのイクパスイだと言われた愛用の園芸用シャベルを手にゾンビと戦うことを決意する。
用語
ゾンビ戦争
アルファチーム
ファランクス
大いなるパニック
自発的隔離政策
メルカバ戦車
局地戦
ヨンカーズの戦い
レデカー・プラン
野良
LaMOE(レイモー)
クイズリング
USSサラトガ
095型攻撃型原子力潜水艦
歩兵用標準塹壕構築具
盾の会(Tatenokai)
映画化
2007年、ブラッド・ピットの製作会社であるプランBエンターテインメントが映画化権を獲得し、マシュー・マイケル・カーナハン脚本、マーク・フォースター監督、ブラッド・ピット主演で製作された。
アメリカではパラマウント映画が配給を担当し、2013年6月21日に公開された。日本では東宝東和が配給を担当し、同年8月10日に公開された。
なお、映画版は原作とは全く異なるストーリーである。
書誌情報
- WORLD WAR Z(浜野アキオ・訳)
- 単行本(2010年4月、文藝春秋)ISBN 978-4163291406
- 文庫本(2013年3月、文春文庫、上下巻)上:ISBN 978-4167812164、下:ISBN 978-4167812171
- 単行本(2010年4月、文藝春秋)ISBN 978-4163291406
- 文庫本(2013年3月、文春文庫、上下巻)上:ISBN 978-4167812164、下:ISBN 978-4167812171